紗良に付いて行くとK・S記念病院に辿り着いた。すっかり夕日が落ちて暗くなり始めている。辿り着くまでに人と出会わなかった。可笑しい事だがすっかりこの世界にも慣れてきた。これ以上驚くことはないだろう。
紗良に付いて行くとK・S記念病院に辿り着いた。すっかり夕日が落ちて暗くなり始めている。辿り着くまでに人と出会わなかった。可笑しい事だがすっかりこの世界にも慣れてきた。これ以上驚くことはないだろう。
特に変わった所はないな。俺が良く知っている病院だぜ。どうしてここに連れてきたんだろう?
K・S記念病院の見た目は元の世界と裏の世界で変わりは無いように見える。
ここに何かあるんですか?
入れば分かるわ
軽く俺の質問に答え病院に入ろうとした。病院に近づくにつれ違和感があった。病院に入るとその違和感に気づいた。
病院なのに人が居ない何だが不気味だね
雪音の言う通り人が居ない病院は物音すらせず静かすぎ不気味であった。裏の世界には淳達以外に人が居ない事を告げられているようだ。
病院の奥に進むと紗良は近くにあった椅子に座る。
疲れてないの座ったら?
そうですね
それぞれ適当に椅子に座った。気づけば裏の世界に来てから歩きっぱなしで足が痛たかった。座って疲れている事に気づいた。
ふう
今までの緊張感と疲れで参っていた。休むことで色々と落ち着いてきた。しばらく経って俺は足を伸ばし紗良に話しかけた。
えーと、六十部先輩その、あの時は怒ってすみません。態度も悪かったです
あの時? ああ、気にしてないわ。それより私の事は紗良で良いわよ
でも、先輩ですよ
緋物学園ではネクタイの色で学年を表していた。赤色のネクタイをしている紗良は三年生だ。青色は二年生で緑色は一年生だ。鮫野木と雪音は青いネクタイをしているので紗良は一年先輩であった。
病院に来る前に失礼な態度をとっていていまさらだが一年上の紗良に申し訳なかった。
先輩と言ってもたった一年でしょう。鮫野木くん
そうなんですけどね……
俺は先輩である事を気にしているが紗良は全く気にしていないようだ。俺は落ち着かないまま話を続けた。
えーとですね。聞きたいことがあるんですけどいいですか?
ええ、私が答えられる範囲なら
そうですね。六十部先輩が――
――紗良よ。鮫野木くん
話をさえぎってまで訂正することだろうか? もしかして顔では分からないが怒っているのか。
俺は恐る恐る質問をした。
あの……六十部先輩では駄目ですか?
まぁ、構わないわ
ウフフ……
動きは小さいが心の底で笑っている。紗良の行動に頭が痛くなりそうだ。
六十部先輩が楽しそうでなりよりです……
頭を抱え黙っていると俺に雪音は助け舟を出した。
六十部先輩に質問があるんだよね。何を聞こうとしたの?
おお、そうだ
あの、六十部先輩は俺達より早くこの世界に来ていますよね。つまり廃墟に来ている
俺達は遊び半分と言われても仕方のない理由で廃墟に入りましたが六十部先輩と親友はどんな理由で来たんですか?
紗良は時間を置いて答えた。
そうね。私はある人から依頼を受けて廃墟に調査しに行ったの一人でね。
そうそう親友の久賀秋斗って言うのだけど勝手に付いて来て、しまいに影に襲われた時に別れてしまったわ。今頃、何処で何をしているのかしら
そうだったんですか
心配している様子はなかった。前に心配はしてない事を言っていたが本音のようだ。それだけ信じているが態度に出さないのは紗良の性格かもしれない。
どうしたの? 他に聞きたいことはないのかしら
いえ、ある。ありますよ
六十部先輩の知っている裏の世界の事を全て教えて下さい
全てね。いいわ、けれど期待しないでね
はい
期待しないでと言われたが期待してしまう。裏の世界について何でも良いから知りたいからだ。裏の世界の事を一つも知らない俺にとって紗良の情報は貴重だった。少しでも知る必要がある。
できればここから帰るヒントになればいい。それだけで希望は持てる。