数えで十七の少年……高天野原鼓(たかまのはらのつづみ)が草原を歩き、その隣を鳥らしき生物……火炎(かえん)が飛んでいる。
鼓の格好はかなりの軽装で、特に重ねていない着物に長い髪は束ねていた。
見るからにこの大陸では【旅少年】と呼ばれる旅の少年だ。
しかし先程の喋り声は火炎の方である。
とはいえこの状況は特に妙では無い。
この大陸は一見動物のようにも見えるが特殊な技を持って戦う怪獣(モンスター)が数多く生息しているからだ。他にも妖精、精霊、妖怪、怪物、物怪等、数え切れない不可思議生物が生息している。
怪獣の中には人語を解し、話す事が出来る物も居る。
又怪獣達等の不可思議生物を操れる召喚師と呼ばれる人間と契約を交わす事で人々を助けたりもする。
しかし逆に野生の怪獣は人々に攻撃をしてくる事が多い。
鼓の隣を飛ぶ火炎も怪獣の一種だ。
ただ鼓は祓屋家系の生まれで召喚師の端くれではあるが、火炎は彼と契約をしている訳では無い。
元々は鼓の家を守る怪獣……通称家守守護獣(やもりしゅごじゅう)であった火炎だが鼓の両親が亡くなる前に彼を守るよう頼まれたのが彼と一緒に居る理由だ。
鼓は『何でも屋』と称しながら大陸を旅する修行中の身。そんな若輩者に従う不可思議生物もそう居ないのである。