昨夜、レムレースの盟主レムに抱かれた翔子は、そうして更なる淫欲に目覚めてしまう。
 まるで、”強姦”のようなセックスだったのだが、レムによるセックスのフルコースを堪能してしまった翔子は、自ら、”性の雑用係”になっていく。
 それからというもの、彼女の花びらは更に過敏に、自らの欲望の蜜で濡れるようになり、中はひくひく痙攣して”主”を欲しがっている。
 翔子が”性の雑用係”として自らの身体を差し出すようになり、盟主の性への欲望は暴走するように高まってしまう。
 毎夜の如く、繰り広げられる、”性の饗宴”。
 ある時はリリアが…ある時は翔子が、自らの身体を差し出し、盟主の欲望を満たしていった。
 そして、二人の女性も共に、内側で抑制されていた”淫欲”を満たす為に、彼に抱かれる。

 それに対して、大変なのはアドニスだった。
 毎夜のごとき、淫らな宴が始まるたびに刺激されてしまう、自らの性への欲望。
 彼はその度、自らの分身を慰めて、それを密かに発散させていた。それに対して”罪悪感”と盟主への”羨望”が彼の心に渦巻いている。
 表ではにこやかに二人の女性に接しているが、それも、そろそろ限界だ。
 裏側では、この二人の女性…リリアと翔子を、犯してみたいと思うようになってしまった。

 盟主に抱かれない夜が来ると、翔子は気が狂う程の、まるで麻薬の禁断症状みたいな”淫らな欲望”が噴き出してくるのを感じる。
 その夜は、自らの身体を、火照った身体を必死になって慰めている。
 その夜、アドニスもほぼ隣の部屋で繰り広げられる、リリアとレムの性の戯れに触発されてしまい、彼もまた自分の欲望を発散した後だった。
 何気なく2階に下りてきたら、そこに、翔子の喘ぐ声が聴こえてしまったのだ。
 激しく喘ぐ翔子。服を全て脱ぎ去り、全裸になって、指でふくらみと花びらを弄って、汗と淫らな蜜だらけになっていく。
 指だけでは満足できなくなると、いわゆる”大人のおもちゃ”を使って、花びらへ突っ込んで、そして火照る身体を慰めていった…。
 その喘ぎ声をアドニスは聴いてしまった。思わず彼は思った。

 この部屋で、翔子の淫欲を自分が満たしてあげたい。
 そして、自分の欲望を満たしてやりたい、とも。
 ドアノブに自然と手が伸びる。だが…鍵がかかっていた。
 それは当然だ。誰も、自分が自慰に耽っている姿なんて、恥ずかしくて見せられない。
 例え自分が性への欲望を持って、そこに異性がいたとしても。
 翔子が抱いて欲しいと思う男性は、あくまで、レムだった。
 彼に抱かれたいのだ。誰でもいいなら、今頃、彼女はとっくにアドニスを誘って一夜を共にしているだろう。
 だが、翔子が来て1週間となるが、彼女はまだアドニスを誘ってはいないのだった。
 そう。彼女が書いた小説の世界である、この世界。盟主・レムは翔子の理想の男性像だったのだから。
 それを見事に再現されてしまっている、本物の盟主・レムに抱かれることこそ、彼女の本望だった。

 だが、翔子はリリアに対して”怒り”や”嫉妬”の感情は抱いていない。
 リリアもリリアなりに、今までこの小説の世界で、散々レムに抱かれて”性欲のはけ口”にされていたのだ。
 彼女が嫌がろうとも無理矢理抱いていた盟主。
 だが、翔子が不意に訪れたことで、それが少し負担が減ってきたのは、リリアにとっては幸運だった。

 だが、リリアの感情も複雑だ。

 今まで、自分一人がこの男性を、極端に言えば独占していた。それを急に、いきなり現れた女にも、己の役割を果たすようになっていった。
 それが、レムに抱かれない夜が来ると、泉のように噴き出してくるのだ。
 リリアの感情を言葉で表現するとこうだろう…。

リリア

何で、今まで嫌だと感じていた行為が、他の女とするようになって、それを寂しいと思うのだろう?あの人に抱かれるのは嫌だったのに、抱かれない夜が来ると、何でこんなに悲しいの?

 これが、リリアの心の内側の言葉だ。
 それは、翔子にも言える言葉でもある。だから、同じ想いを抱くからこそ、翔子はリリアを憎んだり、嫉妬したり、することはない。
 だが、どうすればいいの?この火照った身体のまま寝るなんて、耐えられない。
 誰でもいい。誰か…私を抱いて欲しい。
 でも、誰に抱かれるの?
 悶々とした気持ちの中で時が無情に過ぎていくのは救いだろうか?朝が来れば、この淫欲からは逃れられる。
 太陽が姿を現している時間はまだ、彼女の…翔子の”性の雑用係”の時間外だから。

 そうして、朝が来た…。

 さすがに、盟主レムは、レムレースの盟主らしく、昼間に”性の雑用係”を呼ぶのは稀なことだった。
 昼間は、研究者としての彼が存在している。様々な古い文献を読み、とある事情により世界から切り離されたこの街の調査をしている。
 調査の為に街の外に出て、周辺に地理調査をすることがある彼は、護衛としてアドニスを連れているのだ。
 盟主レムには妻はいない。彼自身が過去に言った言葉で、こう自分を評価していたという。

 ”私に妻を持つ資格などない。毎夜の如く、身体を求める夫を持つ妻の気持ちを考えてみれば当然だろう?私のするセックスは”愛の交換”でもなく”ストレス発散”だからね”
 だから……自分に妻を持つ資格はないのだ…と自嘲的な笑みを浮かべて話したという。
 彼自身も悩んでいたという。自分の性への欲望が人一倍、大きいことに。
 だけど、そこにリリアが現れた。リリアも実は性への欲望が人一倍大きい女性だった。
 お互いに同じような悩みを持った者同士。そんな感じで、彼女と夜を共にするようになって、自分は昼間だけならまっとうに過ごすことが出来る人間になれた。
 盟主という地位であるからこそ、レムレースの街に性風俗の店はあったとしても、自分が堂々とそこに姿を見せる訳にもいかなかった。
 そんな時、リリアが言い方は悪いが、都合がいい人間としてこの街に姿を現してくれた。

 リリアは実は”混沌の女神”と呼ばれる女性で、この世界を構成する力のひとつ、”混沌”を制御する女神として存在している女性である。
 レムレースの盟主は、その彼女を保護する義務がある。
 なので、彼は”保護”すると同時に”夜伽”として彼女に”性の雑用係”をしてもらっているという背景がある。

 今日は珍しく街の外での調査。
 彼は護衛にアドニスを連れ、他数名の優れた兵士と共にある遺跡を訪れている。
 朽ち果てた遺跡。それがいつの時代に、どのような理由で存在していたのかを調査する仕事だった。
 盟主レムは剣の達人であり魔法の達人でもある。レムレース周辺に存在する魔物程度なら、造作もなく始末出来るが、盟主の身に何か起きては大変だからと兵士たちも心配している。
 彼は自分の身を案じる彼らに感謝の証として護衛任務を与えて、そして兵士たちの戦闘の練度を上げさせている。
 もし、自分がこの街を出て外界への旅が始まった時に、彼らだけでもこの首都を守ってもらわなければならないから、その為に備えをしておく。
 そう思って、兵士たちの訓練をさせているので、この遺跡の調査は積極的にこなしている。

アドニス

それにしても、一体、この遺跡は何でしょうか?

レム

古い文献にも載っていない謎の遺跡…か

アドニス

リリア様と関係がある場所でしょうか?

レム

それは無きにしも非ずの話だな。実際、”混沌の女神”の研究はそんなには進んでいないのが現状だ

アドニス

折を見てリリア様に一度、この場所に来てもらいます?

レム

そうしてみた方が話が早いかな。君もそれなりに調査を進めてきているからわかってきたじゃないか?

アドニス

ええ。姫を守る”騎士”としては、それなりに知識も必要ですからね

レム

いい心がけだ。”騎士”の力は腕っぷしだけではない。知識の力も必要だ。力と知恵を持ち合わせていないと真の”騎士”とは言えないからな

レム

とりあえず、遺跡周辺の調査をもう少しして、夕暮れまでには帰ろう

アドニス

はい

 その頃、リリアと翔子は盟主の屋敷で、彼に頼まれた雑務をこなしている。
 翔子は2階の書庫の本棚の整理、リリアはレムに頼まれたアイテムの買いだしに向かっている。
 盟主の屋敷の2階の一部は、古い文献が沢山ある書庫である。
 そこは確かに古い図書館のような独特の、埃と塵の匂いで満たされた空間だが、静かで心が和む空間でもあった。
 騒がしい空間を嫌う翔子には、この書庫は丁度いい静けさだ。自分の鋭敏な五感は日常生活を送るには少し鋭いので心理的ストレスは実際に結構感じる。
 他の人が何でもなさそうに過ごしている映画館でさえ、彼女の嗅覚は発達しているので、嫌な匂いを嗅ぐと気持ちが悪くなる程。
 街の空気でも、”この街はいい匂い”とか”この街は自分には合わない”とか匂いで判断している。
 聴覚に関してもその鋭さは検査でも出ている。普通の人より耳がいい分、騒がしい場所、甲高い声…特に子供の泣き声や子供みたいな文句を吐く情けない大人の女の声は許せない。
 そういう人にはこの書庫の静けさは貴重な場所だ。自分の鋭敏な五感を休めるという意味でも、自分のペースで本の整理は向いている。
 元々、本が好きな彼女にはこの書庫の本には興味津々だ。どんな本があるのか、どのようなものなのか、読んでみたいとも思う。
 ほぼほぼ本の整理を終わらせた翔子。
 彼女は、リリアが戻っているかも知れないと思い、書庫から立ち去った。
 リリアがレムレースの街から戻ってきていた。どうやらアイテムの買いだしは出来たらしい。

翔子

リリアさん、お帰りなさい。何のアイテムの買いだしだったんですか?

リリア

今日のアイテム、今夜、もしかしたら使うつもりなのかな…?レム様

翔子

リリア

今日、初めて調合屋さんに入ったんだけど、実は”媚薬”の調合がされていたわ

翔子

調合屋?

リリア

二つのアイテムをもう一つの別のアイテムに作り変える技術を調合って言うんだけど、その専門店に行ってきたんですよ。レム様に指示されたアイテムを調合師のところに持ってきたんだけど、”お客さん、これ危険な薬だけど大丈夫かい?”って聞いてきて

リリア

そうしたら、このレシピは”媚薬”のレシピって説明してくれたの

翔子

それ、飲んだらどうなるの?”媚薬”って要は性の薬だよね?

リリア

飲んだら、セックス無しではいられなくなっちゃうと思う。それこそ、一晩中どころか一日中……セックスだけをしていたい…ってそういう薬…

翔子

今夜は私だよね…。”性の雑用係”

リリア

うん。昨夜は私だったから…

リリア

翔子ちゃん。とりあえず、気をつけて…

 そうして、夕食の時間が過ぎて、夜の9時を回った頃、私はあの人に呼び出された。

レム

翔子。今夜、私の部屋に来てくれ。いいな…?

翔子

は、はい…

レム

暴力は振るわないよ。最初の夜は、少しふざけてしまったけどね…。それに…君も昨夜は辛かったのだろう?満足させてあげるから来てくれ

 彼は微笑を浮かべて、そしてこの上ない優しい表情になって、頷いた。
 そうして、私は夜の10時を待って、ベッドで休んだ。
 夜の10時。相変わらず彼の屋敷は品が感じられる。床は気がついたけど大理石の床だった。滑らかな石の床で水をこぼすと滑りそうな感じを受けた。
 ドアを3回ノックした。すると彼がドアを開いて、私を部屋に招き入れてくれた。

 薄暗いレムのベッドルーム。青白い部屋の中、二人で見つめ合う。そして私の淫らな欲望を満たしてくれるこの人に私は唇を重ねた。

翔子

んっ…んっ…!はあっ…はあっ…レムのキス…大好き…!

レム

今夜は激しいな…翔子

 すると、彼が私の口の中に舌で何かを飲ませた。何だろう?妙な味がする…どことなく苦い…?
 彼が更に深いキスをする。両方の手が容赦なく服を脱がしている。無理矢理、何かを飲まされた私は…異常な性欲が泉のように湧いて出てくるのを感じる。望む花びらがいつもよりも濡れて感度が上がっているみたい…。

翔子

何を…呑ませたのですか?!

レム

ふふ…今夜は絶対寝かせないよ…翔子。一晩中、私としたい君の為に飲ませてあげたのさ。”媚薬”を。目が潤んできているよ。欲しくてたまらないのだろう?私の舌も、あれも…。
 彼がそこで私の花びらを熱く見つめた。もうそこは濡れに濡れて、この人の舌を欲しがっている。狂暴な舌が乱暴に襲いかかった。

翔子

ああーーっ

レム

綺麗に濡れて、私を誘っているんだね。何時間でも舐めてあげるから、貪りなさい…。気が狂う程のこの快楽を

翔子

あっ…はあっ…はあっ…はあっ…レム…!

レム

君のここは、全然枯れることを知らない泉みたいだな…。私の為にあつらえた身体みたいだ。ほら…ここは?

翔子

そ、そんなに細かく…!ああっ、あああっ

レム

私から逃げられなくしてあげる。永遠に私の為に抱かれてくれ。頭の感覚が麻痺する位にね。望んでいたのだろう?セックスに溢れた生活を。いつでもどこでも、私が満足するまで抱いてあげる。君の淫らな欲望を満たしてやる

 花びらが勝手に濡れていく……彼の舌で、淫らな愛液が、欲望が、勝手に出てくる…!
 もう私は彼を押し付けてしまっていた。自分が望んでいる花びらに口を、顔を、固定してしまっている。
 頭の感覚が麻痺してくる。何が”気持ち良くて”、何が”嫌なのか”がわからない。ただ感触として狂暴な舌が執拗に私を責めている。
 すると、今度は鈍く貫かれる感覚が来た。深く、深く、彼の分身が刺さっている。かき回している。強烈な感触が直接、脳に刻まれるように、届いている…!
 彼が腰を巧みに振り出して、私の中で踊っている。深く貫いたかと思うと、上の壁を擦る。まるでかき回すように円を描いて花びらを味見しているみたい…。

 もう、ダメ。もう、イク。だけど、それを彼は許さない。

レム

ダメだ。イッちゃダメだよ?もっと、私を楽しませてくれ

 でも、そんな彼の素敵な声も、もう私の耳には届いていない。
 全ての意識と五感が、媚薬によって絡め取られて、何もかもが溶けていく。
 もうどんなセックスをしているのかも、わからない…。

 気が付いたら…全身を彼の愛液でまみれて、私の花びらからも、それが溢れて漏れて、ベッドのシーツを汚している。
 口からは私は彼を咥えていたのか、彼の愛液の味が生々しく残っている。
 傍らには彼が私の上で気絶するように疲れて眠っている姿があった…。乱れた銀髪が胸の上に休んで、寝顔を見ると長いまつ毛に覆われた端正な目も閉じて、休んでいた。
 彼は全裸で寝ている。細身の身体からは汗の匂いといつの間に染み込んでいた香水の匂いが絡み合って不思議な匂いになっていた。
 だけど……私の左手を彼の左手がそっと握り締められているのを今更気がついた…。

 私は…”性の雑用係”…?
 ううん。違う…雑用じゃない…。
 不倫相手?それも違う……。独身の盟主だ…。
 私は何ですか…?君は…私の…恋人かな。

1-6 性の雑用係…それは違う

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