ここは裏の世界なのかもしれない。二人も同じ事を言っていたら信じてしまう。後で藤松に裏の世界について詳しく聞こう。
ここは裏の世界なのかもしれない。二人も同じ事を言っていたら信じてしまう。後で藤松に裏の世界について詳しく聞こう。
本当にここは裏の世界なんですね
そうね。そうだ鮫野木くんはここに来てK・S記念病院に行ってないかしら
K・S記念病院は緋物市の中心にある病院だ。緋物市が出来たと同時に建てられたそうで外見は古く見える。緋物市に住んでいたら誰もが知っている病院だ。
いや、廃墟……家から出て遠くに行ってないので
そう、あそこに行けばここが私達の居た世界と別なのが良く分かるわ。まあ、病院に行かなくてもわかることだけど
K・S記念病院に行けばここが裏の世界かどうかわかるのか。けど、行くのなら藤松と凪沙と合流してからだ。
何かあるんですか?
行けばわかるわ
そうですか……
詳細は教えずに紗良は答えた。目で見た方が早いのだろう。
鮫野木は公園に戻ってからK・S記念病院に向かうことにした。
あの、近くの公園に友達が居るんです。迎えに行ってもいいですか
そう、あなた達以外にも居るのね。行きましょう
紗良のお陰で公園に戻るきっかけが出来た。早速、俺は公園に向かう。その後を雪音と紗良が付いて行った。
公園に向かう際、後ろに居る雪音が紗良に話しかけた。
あの六十部先輩、ちょっといいですか?
何か
その、話を聞いてて親友と来てますよね。何処に居るんですか
素朴な疑問に紗良はサラリと答えた。
ああ、それなら問題はないわ。何処かで元気にしてるわよ
ええ……いいんですか
いいのよ。信じてるから
信じてる……ですか。わかります
紗良の言葉に何処か雪音の心に刺さっていた。心当たりがある背中を見つめ歩いていると見つめていた人が振り向いた。咄嗟に雪音は目線を合わせないようにそらす。
後ろを振り返った鮫野木は紗良に話しかける。
あーの、別れたことは変わりないですよね。探さなくてもいいんですか
探さなくてもいずれ出会えるわ
えーと、信じてるからですか?
そうなるわね
信じられる存在なのに紗良は興味のない表情を浮かべていた。本当に信じているなら、もう少し心配していてもいいのだが平然としていた。紗良なりの信頼のしかただろう。
そうこうしている内に公園に辿り着いた。早く謝りたい俺は一人、公園に入っていった。しかし、いくら探しても藤松の姿も凪沙の姿も見えなかった。
あれ? 二人とも何処に行ったんだ
トイレ……か?
公園に居るはずの藤松と凪沙が居なくなっていた。まるで最初から公園には人が居なかったように静かだった。
俺は急に不安を感じた。アニメで似たシーンがあった。それは主人公と別れた人が怪物に襲われて居なくなってしまい、戻って来た主人公が消えた人の遺品を見つけるシーンだ。
おいおい、それはアニメだろ
そんなことはないと思い俺は二人の名前を叫んだ。
おーい。藤松、凪沙。出てこいよ
俺が悪かった。だから意地悪しないで出てくれよ
アニメと同じように返事が返ってくることはなかった。返事がないと不安が大きくなる。現実なら何処かに隠れて脅かそうとしているとかだ。
けれど、ここは裏の世界かもしれない。何が起きてもおかしくない。考えすぎかもしれないが今までに起こったことで可能性を捨てきれない。
俺は何度も二人の名前を叫び続けた。
異変に気づいた雪音は鮫野木に近づこうとした時、紗良が呼び止める。
雪音さん。行くのなら一つ教えてあげて
なんですか?
大声を出しているからアレが近くに来てしまったわ
紗良は視線を遠くに向ける。
木の陰に人の形をした影が五、六体ウヨウヨと漂っていた。人の形をした影は少しずつ鮫野木に近づいている。
……
……
……
鮫野木は必死に叫んでいて人の形をした影に気づいていないようだ。
なんでそんなに冷静なんですか!
雪音は急いで鮫野木の所に向かって走った。