昼下がり宛もなく鮫野木と雪音は歩いていた。住宅地に入ったようで家が並んでいる。ただ、不思議なのは人の気配がなかった。思い過ごしかもしれないと思い歩き続けた。
昼下がり宛もなく鮫野木と雪音は歩いていた。住宅地に入ったようで家が並んでいる。ただ、不思議なのは人の気配がなかった。思い過ごしかもしれないと思い歩き続けた。
…………
…………
どうして俺は藤松に当たってしまったのだろう。俺が行かないと反対すれば廃墟に行かなかったかもしれない。そうだ藤松だけが悪いんじゃないんだよな。
そう知っていて……俺は……。くそ、考えてても駄目だ。さっさと誤った方がいい。
公園で争った事を後悔しても意味がなかった。落ち込んでいるより早く誤って今起きている状況を解決する事が大事だった。
しかし、急に恥ずかしくなった。公園に戻らないと行けないのに戻る勇気が出なかった。自分から出ていったせいで気まずいのである。
戻らないと思っているのに足が公園から遠のいて行く。
どうしたことか……まだ五分も経ってないぞ
十分したら公園に帰ると言った手前、まだ戻る訳にいかなかった。会話もなく適当に歩いていると曲がり角から少女が曲がってきた。
あっ
久しぶりに他人と出会った。思い過ごしだろうか少女と合うまでに人にあっていない。しかし昼間とは言え外に人と出会わないの何処かおかしかった
美人だな。同じ学校の制服を着てる。リボンが赤いから三年生か。
緋物学園の制服を着た女性が近づいていた。背中まで伸びた黒髪がなびいて綺麗だった。
あなた達は……もしかして
あ、はい
美人に話しかけられた経験がない俺は緊張してしまった。どんな事を聞かれるか俺は身構える。
少女は表情を変えず真面目に質問をする。
この世界の人かしら?
えっ、この世界の人!?
それはどういう意味ですか?
耳を疑った。何か聞き間違えたのか、まるで少女と俺の住む世界が違うみたいな質問をした。身構えた分、拍子抜けだった。
鮫野木の様子を見た少女は少し嬉しそうに微笑んだ。余り表情を変えない少女の笑顔にうっとりしそうだった。
違うの、ならいいわ。あなた達もこの世界に来てしまったのね
美人かと思ったら電波でしたか、先輩とは言えちょっとがっかりだな。
――いや、待てよ。もしかして先輩も俺達と同じように影に襲われてここに居るのか。だからこの世界の人なのか。
ちょっとした可能性に俺はしがみつく。
あの、先輩は何処から来ましたか?
……緋山(あけやま)にある廃墟よ。その様子だとあなた達も廃墟から来たのね
やっぱり先輩も俺達と同じようにここに迷い込んだのか。しかし、あの山の名前って緋山なんだ。知らなかったな。
影のようなものにテレビの中に引きずり込まれたのね
先輩も影に襲われてテレビの中に引きずり込まれたのか、藤松が言うに裏の世界らしいが未だに信じ難い。仮にここが裏の世界だとしたら帰れるのか。
俺達も先輩と同じです。気が付いたらこんな所に、先輩はここが何処だか知ってますか
まず、先輩って言うのやめてもらうかしら。ちゃんとした名前があるの
六十部紗良(ろくじゅうぶさら)よ。よろしく
不快な表情を見せたかと思いきや穏やかな表情を見せる。
あ、鮫野木淳です
始めまして小斗雪音です
挨拶をしたからか安心感が湧いてきた。同じ高校の先輩もあってより安心しているのかもしれない。
紗良は真面目な空気で語りかける。
ところで鮫野木くん、質問の答なんだけれどここは私達が居た世界と別の世界と認識しているわ
親友が言うに裏の世界と読んでいたわね
――裏の世界ですか
背筋に寒気が走った。まさか紗良の口から裏の世界が出てくるとは思いもしなかった。紗良が言うには親友が知っているようだった。