高校生になって初めての授業を受ける。習ったことのない事を知るのは新鮮な経験だった。この頃には緊張は解けていた。そんな事より自己紹介の時の事を後悔していた。

 もう少し上手く出来たはずなのにどうして出来なかったんだろう。緊張してたのは言い訳だよな。話したい事もあったけど覚えてないや、なんて言おうとしたんだろう。

 全ては後の祭りだった。考えても仕方ない。そう自分に言い聞かせ授業に集中した。

 昼休みになりそれぞれ弁当を食べたりお喋りをしたり過ごしていた。僕は弁当を食べ終わり弁当箱を片付けようとしていた。

鮫野木淳

いやー楽しみだな。魔装少女リンカ

 そんな時、覚えのある単語が聞こえた。それは最近アニメ化が決定した魔装少女リンカと言うライトノベルだ。僕も読んだことがある面白い作品だった。

鮫野木淳

はぁー早くアニメ放送しないかな。絶対、覇権アニメになるからユキちゃんも観てよ

小斗雪音

はいはい、わかったから

凪沙新吾

…………

 声のする方を向くと遠くの咳で一人の男子生徒が嬉しそうに魔装少女リンカについて語っていた。それを聞く女子生徒は聞き流すように弁当を食べていた。

鮫野木淳

来年の今頃に放送されるんだ。楽しみだぜ

藤松紅

確か監督が――

 もう一人、魔装少女リンカを知っている男子生徒が語っていた。けれど、ここからでは良く聞こえなかった。

 二人の男子生徒は楽しそうに話している。きっと魔装少女リンカについてだ。

 僕も話したい。けれど……どうやって話しかければいいんだっけ……どう話しかけよう。

 ――駄目だ。考えていたら、さっきみたいに後悔しちゃう。

 凪沙は悩みをやめて勇気を出して三人の所に向かった。

凪沙新吾

僕も……魔装少女リンカ好きだよ

鮫野木淳

おお、同士よ! 知っているか。ところで同士、魔装少女リンカで誰が好きだ?

鮫野木淳

俺はやっぱり、主人公のリンカだな。可愛いし可愛いからな!!

 席を立ち、身を乗り出して僕に近づくいた。同じ趣味を持つ者に出会えて嬉しいようだ。近づかれた分、僕は体をそらした。

凪沙新吾

……えっ、そうだね。僕も好きだよ。リンカちゃん

鮫野木淳

そうか、いいよな。やっぱり元気な所がいいよな。こっちまで元気になるぜ。なぁ、同士

凪沙新吾

う、うん。そうだね

 この人は本当に魔装少女リンカの事が好きなんだな。見てて伝わってくるよ。

 若干、魔装少女リンカ好きの男子生徒に引き気味だった。その事を察してか女子生徒が首ネックを掴み引き剥がした。

小斗雪音

もう、同士じゃなくて凪沙新吾くんでしょう。ごめんね、こんなので

凪沙新吾

うんうん、気にしてないよ。えっと……

 以外だ。僕は名前を覚えていないのに彼女は覚えてくれたのか。

小斗雪音

あ、私は小斗雪音です。こっちの失礼なやつは鮫野木淳くん

鮫野木淳

失礼とは何だ

 不服そうに鮫野木は椅子に座って反論した。

 その様子を見ていた男子生徒があざ笑うと僕に話しかけた。

藤松紅

ハハ、俺はさっきコイツと仲良くなった藤松紅だ。コイツよりまともだからよろしくな

凪沙新吾

うん、よろしくね

 藤松は僕に握手を求めた。直ぐに握手をした。なんだが気恥ずかしくなり頬を染める。

鮫野木淳

お前達、酷くないか

藤松紅

そんな事ないぜ

小斗雪音

淳くんが悪いんです

鮫野木淳

なにーー

 僕はこの感じが好きだ。なんだか気が楽になる。緊張もしないし、気持ちがいい。そんな気がした。この人達なら上手くやっていけそうだ。

凪沙新吾

フフッよろしくね

 悩み事が吹き飛んだようだった。

 僕は初めて笑顔を見せた。

鮫野木淳

おう、よろしくな

 この日を境にみんなと仲良くなった。好きなアニメや漫画の話や趣味についても語った。コスプレが趣味だと知った時はみんな驚いていた。どうやら僕がコスプレをする姿が浮かないそうで以外と言われた。

 今まで仲が良すぎたのかな。初めて喧嘩をして戸惑っている。どうにかして仲直りさせないといけないな。

藤松紅

……おい、凪沙。聞こえているか?

凪沙新吾

あ、ごめん。どうしたの?

 知らない内に藤松は僕に話しかけていた。思い出に集中して藤松に気づいてなかった。

 どうやら考え事が固まったらしくいつも通りの表情に戻っていた。

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