2020年3月27日

清掃アルバイト中、○○号室にて。

メガネの忘れ物をフロントに届けた後、

もう一度清掃に戻ると
DVDプレイヤーラックの隙間から
白いボロボロの白い紙袋があるのを発見。


中身を確認すると帯に赤ペンで１００と書かれた一万円の札束一本。

5000円札一枚を束代わりにした
1000円の同じ厚さの束が3セット
入っていた。

かなり無機質な違和感を醸している。

一分少々、
パクるかどうか長考して、
“偽札かも”
と思った瞬間に冷や汗が出てきて
一階の受付のダッシュ。

白い紙袋を手渡す自分。

そこにいたフロントスタッフ
含めた4名は目を丸くした。

紙袋を託して自分は清掃に戻る。

そう唱え、
自分の正しさを信じながらも
ずっと心は揺れていた。

もし持ち主が来ないとすれば
自分は千載一遇のチャンスを
逃してしまったのではないか。

副業であるこの清掃バイトの年収は
4万前後×１２で５０万弱。

あのお金が全部で130万だとして、
ざっと二年半分のお金。

もし130万あったら奨学金返して
余った金で吉原の一番
高いソープ嬢イケるな。

あるいは実家の
ゴミ屋敷掃除できるな。

海外旅行にもいけたな。

比較的明るいけどうつ病で
自宅待機中の妹と山分けすればetc...

沢山の選択肢が浮かんできた。

結局、
持ち主が来なかったら
この会社は全部130万を
猫ババするんだろうなと思った。

11時の休憩でもう一度
フロントに戻ると、

本部の人が銀行員のように
お金を数えたり、

モニタチェックして持ち主を
探しているらしかった。

第一発見者の自分の存在など
意に介さず黙々と数えている。

どうやら自分の勤務時間内に
持ち主は現れなかったらしい。

結果論だが、
めちゃくちゃ損した気分になった。

人生最大といっていい
チャンスを不意にした気持ちにもなった。

掃除中ずっと

と考え続けた。

休憩ごとに小分けにして
持ち出して…

とかある一か所に隠したりして…
とかとか。

悔いと実際ビビった自分を
慰める気持ちが行ったり来たりする。

おっさんの自慰処理後のティッシュを
ゴミ箱に詰めながらみじめな
気持ちでいた。

清掃バイト終了後、このエピソードを意の一番に妹に話した。すると、苦笑いして

と言っていた。

きっと自分がお人好し過ぎる
とでも言いたかったのだろう。

でも本音は130万獲ってきてくれれば…
と思ったに違いない。

仮眠して、夜の本業へ。

寝坊遅刻したアルバイト君に
このエピソードを話してみる。

何とか笑い話に変えたかった。

アルバイト君は受け取らないという
自分の選択に賛同してくれた。

嬉しいはずなのに何か
よりみじめな気持ちになった。

どうにか自分の気持ちを130万への
未練を断ち切る方法はないか、

考えないようにしないと
言い聞かせるほど
気になってしまうもの。

そうずっと仕事しながら
悶々としているとある疑問に辿り着く。

そう脳裏を過ぎった瞬間に
長らく死んでいた物書きとしての
シナプスがバチバチと音を上げた。

東東京の最もキナ臭いエリア
台東区で起きたこれは
もはやサスペンス
もっと知りたいと思う好奇心。

アルバイトくんにもう一度聞き直す。

その答えが一気の俺の
ミステリーサスペンスを加速させた。

アルバイト君は自信ありそうだか
なさそうだかフワッと答えた。

だが、それが良い。

そのグレーゾーンがより想像力を
掻き立てる。

次回、
銀行員の友達に
LINEで聞いてみる
の巻。