廃墟に鳴るはずのないノイズが四人を釘付けにした。テレビに映る黒い画面にまるで激しい雪が降っているようだ。
廃墟に鳴るはずのないノイズが四人を釘付けにした。テレビに映る黒い画面にまるで激しい雪が降っているようだ。
誰もがテレビに注目していた。背中に寒気を感じた淳はあえて確認をした。
なぁ、ここに電気は通ってないよな
俺が見に行っただろ
藤松は踊らいた様子で答えた。
そうだよ。通ってないよな。これだから廃墟は嫌なんだ。何が起きるかわからない場所なんだよ。だから行かないと約束したんだ。
奇妙な現象に声も出ない。ただテレビを見つめていた。そんな時、再び女の子の声が俺だけに聞こえた。今回ははっきりと言葉になっていた。
その声に驚くこともなく俺は何かに導かれるようにテレビに近づいて行く。
淳くん、待って
様子の可笑しい淳に雪音は手を伸ばして止める。俺は振り返って伝える。
聞こえたんだよ。誰かがこの街は偽りに包まれているって
それってどういう意味なの?
わからないけど……
確かに理由はわからないけど俺は向かわないといけないと思っていた。砂嵐に気を取られていたせいか。
俺はテレビを確認した。相変わらずテレビは気味の悪いぐらい砂嵐を写していた。変わりのしない画面は少し不気味だった
もう帰ろうよ。テレビが点いたのは何か偶然だよ
そんな不気味な雰囲気に耐えられないかったのか凪沙は弱々しかった。
凪沙……
そうだな、帰ろう。もともとここに来てはいけないんだ。もう良いだろ
もう帰ったほうが良い。何事もなく帰ろう。後でユキちゃんに謝らないといけないし。
帰ろうと決心して俺は廃墟から出ようとした。その後を凪沙と雪音が続いた。
その様子を見て藤松が声をかける。
持ってくれ鮫野――
途中で藤松の声が途絶えたと同時にテレビの方から凪沙の悲鳴がした。
おい。どうした……
淳くん……アレ
振り返るとテレビから無数の影のような手が藤松を拘束していた。口を押さえつけているせいで声が出せないようだ。
次の瞬間、影のような手が藤松をテレビに引きずり込んだ。藤松は何度も抵抗したが水面のようなになっているテレビの画面に消えていった。
まるで漫画みたいな光景に声も出ない。
藤松くん
凪沙は震えながらテレビから離れようと後ずさりしていた。その凪沙を狙うように影のような手が数十本テレビから伸びる。
た、助けて――
助けを求めようと声を上げたが藤松と同じようにテレビの中に消えた。
二人がテレビの中に引き込まれた光景を傍観することしか出来なかった。そんな俺と雪音に落ち着く隙を与えないかのように影のような手がテレビから伸びてきた。
どうしてこんな事に
何、ぼーとしてないで逃げるよ
落ち込んでいる俺の手を引いて逃げようとする雪音の足を影のような手は鷲掴みテレビの中に引きずり込もとした。
ユキちゃん
淳くんは逃げて!
無数の影のような手が次々と雪音を掴んでテレビの中に引きずり込んだ。
おい、やめろ!
雪音を助けようと手を伸ばしたが俺の手は届かなかった。無残にも一人になってしまった俺に影のような手が伸びる。
これは俺が廃墟に来た罰なのかな。紅も新吾もユキちゃんもあの手にテレビの中に引き込まれた。
俺もそっちに行くよ。みんな……。
俺は何も抵抗せずテレビの中に引き込まれた。
そしてテレビが消えた。廃墟に静かな時間が流れる。そこに元々、人が居なかったように。
廃墟の外に二人の大人の姿があった。一人は背が低く子供と勘違いされそうな見た目をした白衣を着た女性だった。もう一人は男性だった。男性と女性の身長差はまるで親子に見える。
人があれほど行くなって念を押したのに
高校生の好奇心は時に抑えられないですから、先輩のせいじゃないですよ
男性は廃墟に入った生徒に怒りを覚える鬼灯を抑える。鬼灯が怒ると怖い事を知っているからだった。
鬼灯はため息をつき男性と共に廃墟に向かっていった。
廃墟の中は……。
完
次回
裏の世界
つづく