天井の写真を見て疑問に思った。この場所で投稿者Yは何を撮っていたのだろう。テレビの前にビデオカメラは設置されていた。至近距離でテレビを撮影する意味はない。だとしたらリビングを撮影していたのかもしれない。

 淳はテレビを背に向けるとリビングが見える。ここからならリビングを背景に撮影が出来たに違いない。

鮫野木淳

投稿者Yはこれを撮影していたんだな

藤松紅

あぁ、リビングが映るし投稿者Yの動画らしいな

鮫野木淳

投稿者Yの動画を観たのか

藤松紅

ああ、こういうアングルが多かったぜ。固定カメラを使って本人が廃墟を語っていたよ

 どうやら紅は投稿者Yの動画を観ていたようだ。

藤松紅

ちなみに投稿者Yの元になったのはよしヲっていう動画投稿者な。元カメラマンらしい

鮫野木淳

そうかい……

 紅はスマホをしまうと思い出したようにテレビを触り出した。紅はテレビの電源を入れようとしている。

 こんな古いテレビが点く訳がないだろ。

鮫野木淳

何してるんだ

 電源スイッチを何度か押している紅に淳は質問をした。

藤松紅

そりゃ……砂嵐の音がしたんだ。電源が点くはずだろ

鮫野木淳

えっ、そうか

 確かに投稿者Yの動画に砂嵐が乗っているのだから電源が入っても可笑しくない。紅の意見は正しいけれど何か可笑しい気がする。

 結局テレビは反応しなかった。紅は諦めてテレビを眺めていた。そんな紅に新吾が呟いた。

凪沙新吾

あのさ、ここって電気通っているの?

藤松紅

あ、そうか。でも、何で砂嵐がしたんだ。可笑しいだろ

 紅は和室にある証明のスイッチを入れた。しかし、電気は点かない。やはり廃墟に電気は通っていないようだ。

藤松紅

ブレーカーが落ちているかもしれない

鮫野木淳

おい、紅

 そう言って紅はブレーカー廊下に向かおうとした。淳は止めようとしたが聞く耳を持たず走ってブレーカーを見に行った。電気が通っていないか確かめに行ったのだろう。

 しばらくして紅は戻ってきた。紅は浮かない顔をしていた。

藤松紅

ブレーカーは問題なかった……

 やはり廃墟に電気は通ってなかったか。良く考えればわかっていたはずだ。こんなところに生活に必要な電気が通っているはずがないのだ。恐らく水道もだろう。

藤松紅

じゃあ、何で動画に砂嵐を……拾ったんだ

 頭を抱え紅は考え込んでいた。電気のない場所でテレビが点いていた理由。思い付く可能性を浮かべたが納得の行く答えが出ない。

 紅の話しかけにくい様子に淳と新吾は待つしかなかった。そんな時だった扉が開く音が聞こえた。

 三人は音がした方向を見る。どうやら誰かが廃墟に入ってきたようだ。玄関からここに向かって駆け足で向かっているのが足音でわかった。

凪沙新吾

どうしよう。鮫野木くん

鮫野木淳

どうするって言われても

 新吾は心配していた。しかし、どうにもならないだろう。逃げたり隠れたりする時間はなさそうだ。

 学校に廃墟に居ることがばれて先生が来たのか廃墟を管理している人が怪しいんで確認しに来たかも知らない。

 三人は何も出来ずリビングの扉が開いた。

鮫野木淳

ユキちゃん……どうしてここに

小斗雪音

――っ

 扉を開けたのは小斗雪音だった。雪音は淳を睨みつけ近づいた。淳の目の前まで来るといきなりビンタをした。

 ビンタされた淳は衝撃でよろけた。

鮫野木淳

ごめん……ユキちゃん……俺

小斗雪音

謝るならどうしてここにいるの?

 雪音の質問に淳は何も答えず目を逸らしていた。

 いきなりの事に驚いた紅は淳と雪音の間に割って入った。二人の間に何があったかわからないがこの状況は止めないといけない気がした。

藤松紅

小斗、落ち着け話せばわかる

小斗雪音

ごめん、藤松くん。二人の問題なの

鮫野木淳

……俺が悪いんだ。藤松

藤松紅

鮫野木……

 この件については俺が悪いユキちゃんが怒るのも仕方のない。なんせ約束を破ったからだ。危ないところに行かないと二人で約束したはずなのに俺は廃墟に来てしまった。

 冷たい廃墟に気まずい空気が流れる。そんな時、空気を読まず電源が点かないはずのテレビが砂嵐と共に点いた。

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