ボクは、生まれてすぐに捨てられた。
理由はわからない。
今思えば、
有角人であることが関係あるかもしれないけど、
所詮は憶測。
これ以上は踏み込めない。
そんなボクを拾い上げて育ててくれたのは、
数ある勇者村のうちの一つ、
それはそれは小さい村だった。
ボクを育んでくれたその村は、
ボクを祝福してくれた。
だからボクは、勇者になるしかなかった。
そして、だからこそ、
イサムに出会ったボクは絶望した。
ボクは勇者になれないんだって。
でも……。
イサムと行動を伴にするうちに、
ボクはイサムに心を奪われていた。
ああ、神様。彼こそが勇者です。
だから、ボクはもう……。
勇者じゃなくてもいいですよね?
そんなボクに課せられたのは、
もっと酷い運命だった。
不遇の勇者
ーー3年前。
アインスタークと対峙した際に
埋め込まれた『魔王の駒』。
それがボクの体に馴染むのには
1年ほどの時間を要した。
その間、ボクはとあるスラムに身を寄せていた。
そこは隣人が関与しあわない。
その時のボクにとっては
心地よい環境だった。
有角人のボクと無角人のボク。
不安定な魔力のゆらぎで、
ボクの自我は行ったり来たりを繰り返していた。
今までの自分を真っ向から否定する苦しみと、
新しい自分が切り開く世界への羨望に
ボクは苦悩した。
いつしかボクは、彼に助けを求めていた。
イサム……。助けて……。
キミの声が聞きたい……。
キミのあたたかさに触れたい……。
そんな折、ボクの耳に届いたのは、
イサムがアルザレアの王女と結婚した、
という話だった。
嫉妬の炎に包まれたボク。
……イサム……。
ボクは……イサムを……。
ボクだけのものにしたい……!
ボクの自我は、有角人としてのギーズを選んだ。
そして、支配と強欲の魔王である
アインスタークの力を受け入れたんだ。
イサムをボクだけのものにするために。
……う……うう。
……元のギーズに戻らないぞ!?
どういうことかしら?
彼の者にとって、
あの姿が元の姿、ということです。
ですが、彼の者に渡した『魔王の駒』は、私の元へと戻りました。
彼の者は、有角人ギーズ・ヴェインなのです。
なるほど、あの姿が本当のギーズさんなんですね。
そして、倒された魔王が助からない事も、世の必定です。
!!!
……。
そうか……。
……わかりました。
ありがとう、アインスターク。
これにて、
余は主命を解かれました。
『魔王の駒』とともにあるべき場所へと帰ります。
しかし……。
事の首謀は他にいるということを、ゆめゆめお忘れなきよう……。
『魔王の駒』……。
神から授かったと言ってたけど……いったい……。
……うぅ……負け……た。
そうね……。
あなたの負けね、ギーズさん。
シーラ……。
結局ボクは……全部キミに負けてしまった。
召喚士としても……魔王と勇者としても……。
恋敵としても……
……。
……きっと、ボクがイサムに気持ちを打ち明けても、イサムには断られていたんだろうなぁ……。
……。
……ううん、それは違うと思う。
……え。
もし……。
もし順番が逆だったら……。
勇くんは、
あなたを選んでいたかも知れない。
そ……そんなハズは……。
だって、勇くんは、決して拒まないもの。
!!!
ああ、違ぇねぇな。
我らはお互い牽制しあって
手を出し損ねたとも言うな。
あ……。
やっぱり二人共、要チェックね。
私のカン、あってたのかも。
……い
……いまさら、そんな事言うなよ―――!
それに、ボクはもうイサムのことなんか……
……ウソ……。
ウソ……なもんか!
誰にも優しくて……、偏見なく受け入れて……、強くて……、みんなに好かれるイサムなんか……。
イサムなんか、これっぽっちも……!
……。
誰しもが勇くんに惹かれるのは仕方ないわ。
あなたも触れてしまったのでしょう?
勇くんの優しさに。
うっ……。
そ……そんな事……。
そう言ってたじゃない。
ほーんと、勇にはかなわないよね。
まさか、こんな僕の心まで
救っちゃうんだから。
あの時のあなたの言葉にウソはなかったわ。
……。
うぅッ……。
ギーズさんの体の末端が、
灰のように解けていきます。
……おしゃべりも……もう限界……か……。
疲れたでしょう、ギーズさん……。
もう休んでいいのよ。
……辛かったんだな、お前も。
……いろいろ分かってやれなくて済まなかったな……、ギーズよ。
やめろ、変な同情は……。惨めになる。
……我は……誇り高き……有角人……。
……最後まで……それは変わらぬ。
……だ…が。
シー……ラ……
なに?
イサムを……不幸にしたら……
許さ……ない……からな……
……安心して。
……それは
……絶対にさせないから。
レヴスの長い夜が明けました。
つづく
【勇者勇の装備】
レベル :24
めいせい :312
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :銀の額当て
たて :なし
どうぐ :野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×2
霊薬草×5
淡水ザメの煮凝り
淡水ザメの骨
淡水ザメの牙
黒王の羽
いつもの額当て
王の冠
カジノコイン×2560
緋糸手句の防寒具
なかま :[泉守]ダイ
[もふもふ]もふもふ
[魔導エンジニア]ラムディッシュ
とくぎ :ファイアブレス
トキシックブレス
釣り
カン
介抱
じょうたい:モテモテ
【シーラの装備】
レベル :36
めいせい :240
ぶき :いつもの本
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの飾り
たて :なし
どうぐ :やくそう×94
イーサ薬×9
おみやげ×99
ガラスの破片
なかま :戦士ポメラ
大魔導ソルフェージュ
[コボルト]ライル
とくぎ :しょうかん
値切り
冷やかし
虫の知らせ
ディゾネの思い出
寒さに耐える
好奇心
ギーズの想い
じょうたい:真パーティーリーダー
クロニフィカント