私が深い眠りから覚めると、心地よい朝日が窓から指し込んでいた。とても穏やかに晴れた朝。
 小説の世界の朝は現実世界とは比べものにならないくらいに澄んだ空気が流れている、とても朝らしい朝だった。
 私の隣のベッドには見慣れない女性も寝ている。だけど、人相でわかった。
 この子は私が書いている小説のレムの性欲のはけ口にされてしまっている女の子だった。
 綺麗な茶色のロングヘアーが乱れて咲いている。長いまつ毛。繊細な眉毛。唇は瑞々しい桃色の唇。
 だけど、その子の頬には涙の跡があった。理由はわかった。多分、私が深い眠りへ入っている時、この子は昨夜、レムに抱かれたんだと思う。
 この世界には時計はないのかなあ…と思って何気なく白い壁を見ると、壁掛け時計があった。今の時間は朝の7時30分。
 何だかお腹が空いた私は、背筋を伸ばしてベッドから起き上がった。

 そうしたら、その子も朝日の光で眠りから覚めた様子だった。眩しそうに朝日を浴びている。
 薄めの白い毛布を取ると彼女も起き上がって、そして不思議そうに顔をかしげた。
 そっか。向こうは私のことを知らないんだもん。私はこの世界の作者だから知っているだけで。

リリア

あの?あなたは?

翔子

おはようございます。初めてお会いしますよね。私、翔子っていいます。実は昨日、突然この世界に来ちゃった異世界の人間です

リリア

まあ、異世界から?初めまして。私はリリアです

翔子

よろしく、リリアさん

リリア

リリアでいいですよ。翔子さん

翔子

私も”ちゃん”付けでいいです。それじゃあ

リリア

翔子ちゃん…ですか。可愛い呼び名ですね

翔子

リリアはこの屋敷で何をしているんですか?

リリア

私はここで下働きさせてもらっています。主にレム様の雑用係ですけど

翔子

雑用係って例えばどんなお仕事?

リリア

主に、本を借りて来たり、アイテムの買いだしとか、色々な雑用です

翔子

そう言えば、私は何をするのかな?

アドニス

失礼いたします。アドニスですが…

 部屋を3回ノックする人がいた。私達は急いで服を着替えて、アドニスさんの話を聞く必要があった。
 この小説の世界の服は現代社会と大して変わらない。今はこちらの季節も夏だから、私は少し露出が多めの服に着替えた。
 我ながら恥ずかしいもので、こういう露出が多めの服は少し苦手だった。どことなくカウボーイみたいな感じの服装で、半袖シャツに革製のズボン。革製の靴だった。
 リリアも露出が多めの服で、どことなく見た目は”商人”みたいな感じだ。長い茶髪を後ろでまとめて結ってある。

翔子

おはようございます~!アドニスさん

リリア

おはようございます。アドニス

アドニス

翔子さんにリリアさん、おはようございます。お二人ともレム様がお呼びになっています。彼の執務室へ来てください

リリア

わかりました

翔子

執務室ってどこですか?

リリア

この階段を上ってすぐの部屋ですよ

リリア

行きましょうか?翔子ちゃん

翔子

うん

 二人でレムがいる部屋に向かった。彼の執務室は無断の立ち入りは禁止にされているが、リリアと私は別らしい。
 リリアがドアを3回、上品な感じでノックした。すると、部屋の中の奥から彼の声が聴こえた。

レム

入っていいよ。二人とも

翔子

失礼します

リリア

失礼いたします

 その部屋にはレムが茶色の木製のデスクの前に椅子に座って仕事をしている姿があった。
 彼の仕事は、この世界で起こっている”ある出来事”を調べている研究者と私は書いた。実際、目の前のこの人の仕事も同じだ。
 レムは穏やかな表情になると、まずは私にこう説明してくれた。

レム

翔子さん。君にはしばらくの間、私の屋敷で下働きをしてもらうことになった。いいかな?

翔子

はい。私も一日中、何にもすることがないというのも何だか申し訳ないので…

レム

そうか。後、君を見込んでだが、実はある武器を開発中でね、実験台になってもらえないかな?この銃なんだけど

 彼は一つの拳銃をデスクの上に置いた。
 彼がこの銃の説明をしてくれた。

レム

これは、”魔装銃”という名前で、”魔晶石”という魔力が宿った石を動力源とする銃だ。弾は無限に入っている。”魔晶石”は無限に魔力を宿す鉱石でね。それを独自の技術で弾にすることが出来た。なので君にはこの銃のデータ収集をお願いしたい

 
 握って見ると凄く軽い銃だった。手入れも簡単で、定期的に”魔晶石”を取り換えればいいらしい。
 この”小説の世界”ではモンスターも出る設定だから、素手で行動するのは危険なのはわかった。

レム

後は”はじめてのおつかい”として君にあるアイテムを持ってきてほしい

翔子

何でしょうか?

レム

”ヴァトラスバリウス”という古い本を、今、レムレースの街のどこかにいる本屋から借りて来てもらいたい。その為のお金を渡しておく

 そうしてこの世界の通貨であるコインを貰った。100ギルダコインを5枚、500ギルダ分を借りた。

レム

それじゃあ…今日中にその本を借りて、夕方までには持ってきてくれ。いいかな?

翔子

はい。わかりました

レム

リリアは別の用事があるから、翔子さんは早速、レムレースへ向かってくれ。街には見張りがいるけど、そこの奥の森には立ち入らないようにね

翔子

では、行ってきます

 私は武器に”魔装銃”と500ギルダを持って、屋敷の一階に下りた。一階には沢山のメイドさんたちが働いている。
 それぞれが個性的な着こなしをして、屋敷の雑務に追われている様子だった。
 そうして、私はレムレースへと降り立つ。
 あまりの首都の大きさに私は目を茫然とさせてしまった。そこは思っていた以上に綺麗で、そして割と近代的な首都だったから。
 それに首都の人々も凄い賑やかで活気がある。まるでゲームの中の世界の街だ。
 しばらくの間、おつかいを忘れて、散策を始めた。こんな場所、そうそうお目にかかれない。しっかりと記憶に焼き付けないと。
 そうやって、私がレムレースで”はじめてのおつかい”をしている頃…。

 
 リリアはまたしても、レムに真昼間から、身体を貪られていた。

リリア

あっ…あはあっ!レム様…!あっ!あっ!

レム

後ろから責められる気分はどうかな…?リリア…?

 ベッドの上、リリアは全裸にされて、後ろから彼を受け入れ、淫らに喘いでいる。
 ベッドの端の格子に両手を握って、四つん這いで彼を受け入れているリリア。深く入っているのか、彼女は涙目で抗議の声を上げている。
 

リリア

深い…深すぎます…!レム様…!ああっ…腰を…そんなに…腰を回さないで…!お願い…

レム

フフ…。気持ちいいんだろう…?それが…

 彼が巧みに淫らに腰を揺らして、花びらからは彼女の欲望が素直に滴っている。ベッドのシーツが汚れていく。
 リリアが艶やかに喘いでいる。茶色の瞳が情欲に濡れて、望んでもいないのに、勝手に自分で更なる催促をしてしまう。

リリア

もっと…もっと、奥まで……貫いてぇ…!

レム

ほら。君は初めて会った時からそうだ。勝手に自分から”快楽”を欲しがっている。とんだ、淫乱女神だな

リリア

あっ!あっ!いいっ…!こういうの…こういうの…好きなの…!

レム

今頃、あの子はレムレースの散策中だな…。だが、君の雑務はこのセックスだからね…

レム

雑務として、これ程気持ちいいものはないだろう?

 どんどん彼らは白熱していく。真昼間の執務室の奥の、ベッドルームで彼らは毎日のように身体を貪っている。
 彼が少し喘いで、一回目の絶頂に上がる。欲望の蜜が望む花びらに注がれ、白い愛液が溢れるように流れて落ちていく…。
 そっとそれが抜かれた。だが、これで終わるほど、彼女の雑務は簡単なものではない。
 今度は彼女が、彼を悦ばす番だった。欲望でまだいきり立っているそれを自らの口に含んで、貪るように舐めるリリア。
 恍惚とした表情で、それを楽しむレム。リリアの口戯は熟練の技で、まるで貪るように全身を使って愛撫している。
 それが、たまらなくエロチックだ。健康的なピンク色の舌が、裏筋から先まで舐めると、今度は奥までほおばって吸いこむ。
 昼間の太陽が差し込む部屋で、ひと時の逢瀬を楽しむリリアとレム。
 四つん這いで奉仕をする彼女の蕾からは欲望の蜜が滴る。彼女は我慢できない様子で、右手でそこを自分の手で愛撫を始めた。
 唇はまだ分身に纏わりついている。瞳を閉じて熱烈な奉仕をする、リリア。
 彼はその熱を帯びた奉仕で二回目の絶頂へ導かれる。
 リリアの美しい顔に、己の愛をかけてしまった。白濁液まみれになるリリア。
 しばらくの間、彼らの肉体を貪り合う音が聴こえた。

 一通りの行為を終えた二人。リリアは放心としている。身体中に男の愛液にまみれて、全裸で横になっている。
 レムは何事もなかったように衣服を着始める…。そして、こう呟いた。

レム

君は私だけの女なんだ…。私のことだけを想っていればいい

リリア

今に…あの翔子ちゃんともセックスを交わすのでしょう?

レム

察しがいいな?……今夜誘おうかと思っている。彼女も君と同じ匂いを感じるよ…

リリア

……

 
 ベッドの上で全裸でうつ伏せで倒れているリリア。その心は、揺れている。

 何故だろう……?今夜は別の女性を抱くと言われた時、悲しく思ったのはなぜ…?
 いつも、毎晩、凌辱されるように身体を貪られて、嫌気がさしていたのに、どうしてこう思うんだろう?

 その頃、レムレースの街を散策している私は、活気あるこの街の人に、本屋がどこにあるのか教えてもらいながら街を歩いていた。
 この街では”お金”を得るための手段として、闘いでモンスターから得る方法の他に、この街の近くにある森で採取できる物を一定の数集めるとアイテム屋さんで換金してくれるらしい。
 その森には様々なハーブやキノコが自生しており、街の人々は潤沢な森の恵みをそうやって生活の中に取り入れているのだという。
 だけど、その森は凶悪な魔物がいるので、立ち入りは制限されている。
 私も立ち入りを禁止されていた。
 まあ、でも”はじめてのおつかい”は森の中のものではないので、関係ないけど。
 そうして、本屋らしき人物をやっと見つけ出した。
 背後にいっぱい、本を抱えた行商人の人だった。

本屋さん

いらっしゃい!こちらは本屋だよ。お客さん、何の本を探しているのですかい?

翔子

”ヴァトラスバリウス”って本、ありますか?

本屋さん

あるよ!レム様が取り寄せた本だね。値段は400ギルダだよ。借りるかい?

翔子

お願いします

 私は行商人の男の人に100ギルダコインを4枚渡して、代わりにその”ヴァトラスバリウス”を受け取った。
 随分と古い本だ。何の本だろう?伝説について書かれている本かな?
 こうして、”はじめてのおつかい”を無事こなした私は、レムの屋敷に戻ることにした。もう太陽の光が西に傾きつつある。
 随分と時間がかかってしまった様子だった。

翔子

今頃、リリアさんはどうしているのかな~?

 共に屋敷で下働きしているというリリアが気になった私は、心配させてはいけないと思ったので、屋敷に帰った。
 屋敷に帰る頃には夕方になっていた。
 私は急いで、レムがいる執務室へと向かった。
 ドアを3回ノックした。すると、あの声が聴こえた。

レム

入り給え

 私はその執務室に入ると、デスクの前に座った彼が待っていてくれていた。

レム

見つけられたかな?例の本は?

翔子

これで、よろしいでしょうか?

 私はその古い本を彼に手渡した。彼は大きく頷いて、そして笑顔になって礼を言ってくれた。

レム

そうそう。この本だよ。ずっと、探していたんだ

レム

……翔子さん。今夜……誰にも知られないように、ここに来てもらえないかな?

翔子

誰にも…ですか?

レム

ああ…。もう一つの…”依頼”したい仕事があるから

翔子

わかりました…

 何だろう…?でも、私にはその内容が少しわかった。

 今夜……多分、私はこの目の前の男性に…抱かれるということが……。

1-4 はじめてのおつかい 

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