――昔々とある国のとある地方に、人々が霊峰と崇める山がありました。
しかし山の半分は幽世に繋がっており、魑魅魍魎の怪物たちが棲む山の影を避けて、人々は日の当たる山の麓に村を築きました。
霊峰を崇める人々の信仰心により山の東は精霊で賑わい、妖怪たちに似て悪戯はすれど、やがて人々の生活に豊かさをもたらすと、やがて人々は精霊も崇めるようになりました。
その中で特に信仰を集めたのは、山にある沼の蛇神様でした。
人間の生活に欠かせない水を山から分け、時に雨を降らせる蛇神様の澄む沼は『蛇神沼』と呼ばれ、唯一、人が供物を捧げに山に踏み入れるのがこの沼でした。
――誰が盗み見たのか。
――蛇神様は女神だったという。