実習初日……緊張するなぁ


 自然に囲まれた中に建ったビルの手前。私は緊張から思わず深呼吸をした。
 何度も見た資料や数秒前に確認した時計をつい繰り返して見てしまう。

 今日から私はこの『sorelleプロダクション』で実習をする。
 『大神芸能総合学院』の『アイドルプロデュースコース専攻』では入学した時からずっと噂が絶えない実習だ。
 事前訪問もしていたから間違えている筈は無いんだけど、早く来過ぎてしまった気がする。

流石に三十分前なんて……迷惑だよね


 そう思いながらも他に何が出来る訳でも無い。

十五分前……その位になったら入らせて貰おうか。それならきっと問題無い筈……


 そう思って何度も時計を確認してしまうけれど……そんなすぐに分針は動かない。

うう……何か緊張し過ぎてちょっと気持ち悪くなって来た


 そんな自分を奮い立たせようと首を振ったり身体を動かしたりしてみるも、変化があったようには思えない。

ああ……早く時間になって……


 思わず頭を抱えたくなった時……。

 突然目の前の自動ドアが開いた。

???

実習生さん、だよな。すまん遅くなって


 思わず飛び上がりそうになったのを堪え、慌てて声の主を見つめる。
 『sorelleプロダクション』社長、大神色羽(おおかみしきは)社長さんだった。事前訪問の時も丁寧に対応して貰った記憶がある。
 その事を思い出したお陰か……いや、大神さんのお陰かも知れない。
 落ち着いて応答する事が出来た。

いえ、私こそ早く来すぎてしまって……すみません。本日から宜しくお願い致します

色羽

こっちこそ。あ、そんな硬くならなくて大丈夫だから。取って食う訳じゃねーんだし。
そりゃ実習だし緊張して当たり前だけど……リラックスリラックス


 そう言いながら微笑まれてしまった。
 余りに綺麗な笑顔に……少しドキドキする。

はい、有難うございます


 釣られて微笑むと……大神さんも嬉しそうな笑顔を浮かべた。

色羽

そんじゃ事務所の奴等と顔合わせな。案内するよ

有難うございます。お願いします

色羽

ああ、こっちこそ宜しく。
癖のある奴等だから大変かもだけど……


 大神さんは苦笑混じりにそう応じ、いそいそと歩き出す。

色羽

そんじゃ行くか。付いて来てくれるか?

はい!


 私は元気に頷き、後を追った。大神さんのお陰で緊張なんて吹き飛んでいた。

どんな方達が所属しているんだろう?


 アイドルと直接会えるなんて貴重な機会、そうそう無い。
 その貴重な機会を楽しむ余裕が……少しだけ出てきていたのだった。

【共通プロローグ1】『sorelleプロダクション』の人々1

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