グルグルと落ち着きなく、小さく歩きながら話す葉栗と、その動きから一切目をそらさずに聞いている大宮が出会い、5分程経っていた。

残念だが、あいつらはここにはいないぜ。

なんだよ。
さっきの攻撃ではぐれたってわけか。

たまたま一緒に行動してただけさ。
全員揃っていた方が都合良かったか?

まぁな。
お前と戦うのも悪くない。

葉栗はそういって笑みを浮かべた。

ただ、あの2人をどうにかしろと命令があったからな。
俺は、男の方を倒すことにしてんだよ。

俺はってことは、天野の方は倉間が狙ってんのか?

ああ。
あいつだけじゃないと思うぜ。
今頃……、くっくっく。

どこか人を小馬鹿にするように話す葉栗は、大宮に何かを予感させるように笑いだす。

そろそろ降参した方がいいですよ。
これ以上続けても意味がないです。

この人、強い……。

大宮たちから1km程離れたところで、美咲は倉間八雲の前で膝をつき、立ち上がることすら困難な状況となっていた。

こんなところでは、終われない。

しかし、歯をぐっと噛みしめ、静かに息を吸い込み少しずつ立ち上がろうとする。

さすがに、これ以上時間を取られたくないので、次が最後です。

倉間は、美咲に手のひらを向ける。

泡玉浮揚(あわだまふよう)。

向けられた手のひらから光のシャボン玉のようなものがユラユラと出現した。

そして、それは美咲へとゆっくり向かっていく。

まただわ。
こんなにゆっくりなのに、どうして私の動きが追い付けないの。

美咲はシャボン玉に当たらないように、光の翼を広げて空中へ飛び上がる。

巻羽!!

光の羽から放たれた沢山の羽が渦をなし、シャボン玉を破裂させていく。

はぁ。
さっきと変わらないですね。

倉間がため息をつくと、美咲は翼を出したまま地面に落下した。

その数十秒後、地面に触れた感触から何かに気づく。

まさか……。

ようやく気付いたみたいですね。
あなたの光術と私の光術は相性が悪いようです。

美咲は、自身の背中にある翼に触れると、推測していたことが正しかったと分かった。

割ったシャボン玉は、空中に散布されているのね。

それが風に乗って私の翼や羽に……。

その通りです。
よく観察されてますね。
すごいです。

穏やかに感想を述べると、少しだけ表情が明るくなった。

でも、だからといってこの技をどうにもできないことに変わりはないです。

たしかに彼女の言う通り。
私の光術は相性も悪いし、付着した泡を無効化するために、何度も翼を具現化させる力も残ってない。

でも、もう防げませんよね?

倉間は、もう一度シャボン玉を出した。

それは、先程と同じように美咲へと向かっていく。

何か打つ手は?

辺りを見回し、何か切り抜ける情報がないかを探る。

その時だった。

2人の戦いを見ていた何者かが、光の扇を出し、さっと一振りした。

扇吹雪(おうぎふぶき)!!

第3章--認証試練編--(86話)-第三試練⑦-

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