銃声が鳴り響けば音がした方を向いてしまうのは、その方向に危険がある事を確認するためだろう。

 それが、混乱していても慌てていても、そして、戦う前だとしても気になるはずだ。協力者も音がした方向に顔を向けた。

 銃声を聞いてパニックになって出口を目指している人が見えた。冷静になって銃声を危険と感じ取ったのだ。我先に逃げようとして出口付近が騒がしくなっていく、沖田は肩の力を抜いて協力者と五十嵐に話しかける。

沖田アシン

なあ、二人とも、パニーチェの異能力を解除した意味を知りたいかい?

沖田アシン

異能力は自分で解除するか解除されられるかだ。俺の異能力、空間管理も自分の意思で操る。ただ、俺が死んだらどうだ?

 異能力者なら答は知っていた。ただ、口に出せない。出してしまったら認めることになる。

沖田アシン

死んだんだよ! パニーチェはねぇ

沖田アシン

榎がやったんだ。流石、元殺し屋たね。仕事が早い

気づけばパニーチェの姿をしていた人々が元に戻っていた。それはパニーチェの異能力、他人に他の姿を投影させる投影術が解除されたからだ。

 沖田の言う通り異能力は自分で解除しない限り解除できない。ただ、気絶すると異能力は強制的に解除される。すなわち、死ぬとどうなるか考えなくてもわかる。

 立ち止まっている三人をかき分けて多くの人々が出口を目指して走っていた。五十嵐の肩にいくつか当たる。当たるたびに後ろへと押されて一歩ずつ下がっていく。

協力者

おい、どうした? 伊達メガネ

五十嵐 冬夜

…………

 協力者は逃げる人をかき分けて五十嵐に近づいた。協力者が捕まえると、五十嵐はまるで魂が欠けているようだった。

 気持ちはわかる。仲間が死ねば俺だって悲しい、寧ろ泣きたいぐらいだ。パニーチェは変人だが明るく扱いに困るが良い子だった。

 お前が女好きで仲間思いなのは俺が良く知っている。だから、余計に苦しいんだよな。

協力者

……ここから離れるぞ、冬夜

五十嵐 冬夜

助けないと……いけないだろ。まだ、わからないじゃないか?

協力者

逃げるんだよ。頭を使え

 足が崩れそうだ。全く歩けそうではない。俺はパニーチェを助けないといけないのに足がうまく動かせない。蒼衣さんにも助けるって約束したんだ。それなのにこいつは逃げようとしている。

五十嵐 冬夜

待てよ、死んだって決まった――

協力者

――死んだんだ。パニーチェは!

協力者

銃声を聞いただろ。アレは群馬さんの使っている銃の音だった。それが証拠なんだ

五十嵐 冬夜

おい、どうしてそんな事を言うんだ! どうしてそんな事を知っているんだ? まさかお前が裏切り者か

 五十嵐は胸ぐらを掴み怒鳴った。いくら協力者を見つめても何も言わず黙ったままだった。

五十嵐 冬夜

どうして何も言わないんだ

群馬榎

代わりに答えてやろうか、兄ちゃん

群馬榎

今は確か協力者って呼ばれているんだっけか古暮(コグレ)

協力者

――群馬さん

 エスカレーターから降りてくる男は協力者の事を古暮(コグレ)と呼び、協力者はその男を群馬さんと呼んだ。信じがたいが二人は知り合いらしい。どのような関係だったか知らないが仲は良くなさそうだ。

 群馬の手には銃が握られていた。

五十嵐 冬夜

お前がパニーチェを撃ったのか

群馬榎

まあ、仕事だからな

 群馬の言葉に冷たさを感じさせる。エスカレーターを歩いて降りると銃口を協力者に向けた。

群馬榎

なぁ、古暮よ。俺が付けた名前はもう使わないのか?

協力者

その名前は門の教団から抜けた時に捨てたよ

群馬榎

ん……そうか

 少し寂しそうな素振りを見せて人差し指に力を入れると銃口の中が光った。光るのと同時に静電気みたいな音がした。

群馬榎

スパークショット

 引き金を引くと閃光が発した。遅れて銃声が体に響いた。

美野 一四日

……協力者さん

 物陰に隠れて協力者が打たれるの瞬間を美野は息を殺して見ていた。仲間を助けられない罪悪感と仲間が死んだ絶望感に心が押し潰れそうだ。

メビウス・ザ・ループ(17)

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