女性とは言え鍛え抜かれた沖田に腕を掴まれた。溝の前で止まった腕を沖田は一ミリも動かそうとさせない。

 離す気がないのだろう。腕に力が入って痛い。こうなったら至近距離で沖田と戦う事になる。一番、最悪な状況だ。

沖田アシン

なんで俺がこんなことろで一人でいると思う?

沖田アシン

それは俺がお前達を足止めするためさ

 協力者に問を求めて沖田は答えを聞かず答えを言った。

 沖田の口調から余裕があることが手を取るようにわかる。それほど格闘に自身があるのだろう。

協力者

沖田さんがわざわざ足止めなんて、どうしてもバラしたくない計画があるんですね

 沖田はニヤッと笑みを浮かべ協力者を体ごと引き付けて耳元で囁いた。

沖田アシン

お前所のネズミが教えてくれたんだよ。お前達がここに来るってね

協力者

――それは

 ネズミ、つまりスパイの事だ。俺と五十嵐が愛和百貨店に向かっていることを教えた。二日前の会議の時も、それ以前もか。

 いずれにせよ、Anotherの中に裏切り者が居ることがわかってしまった。

 自然と腕の力が抜けて協力者は沖田にもたれかかってしまった。沖田はもたれかかった協力者を抱きかかえる。

沖田アシン

お前も薄々感づいているだろ。境界の管理人いやAnotherにスパイがいることをな

協力者

…………

 沖田にもたれかかっている協力者は言葉が出なかった。そんな時、五十嵐がひたいにシワを寄せて沖田に近づいていた。

五十嵐 冬夜

そいつを離してもらおうか

沖田アシン

おや、お兄さん。俺と戦う気かい? 止めたほうがいい、お兄さんじゃ俺には勝てない

五十嵐 冬夜

戦う気はないさ。俺は女性に暴力は振るわない主義なんでね

五十嵐 冬夜

ついでに俺の名前はお兄さんじゃない。五十嵐冬夜(イガラシ トウヤ)です。以後お見知りおきを

 沖田に対して軽く会釈をした。

五十嵐 冬夜

チェンジ

 五十嵐は会釈を済ますと異能力を使おうと試すが異能力は発動しなかった。やはり愛和百貨店の中では五十嵐の異能力は発動できないようだ。

 異能力で引き剥がそうとしたんだが、お嬢さんの空間管理のせいで封じられていたか。聞いた以上にお嬢さんの空間管理の異能力は強力だ。

 さて、どうしたことか。あいつは何故か動かないし、異能力も使えない。

 残った手段が見つから……ねぇ。

五十嵐 冬夜

羨ましいな協力者、美人に抱かれて……俺が変わりたいくらいだ

五十嵐 冬夜

いつまで甘えてるんじゃねぇよ

協力者

何言ってるんだ。伊達メガネ

 協力者は自分の力で立ち、五十嵐を見た。

 五十嵐を見る目はやる気に満ちている。協力者は掴まれた腕に力を入れて振りほどく、沖田は慌てて腕を掴みに行くが協力者は距離を取って離れた。

 沖田は逃がしたことにため息をもらす。

沖田アシン

流石に君を馬鹿にしていた。いや、俺の油断のせいか

沖田アシン

油断大敵と言うやつだ。反省しないとな

 やれやれと言わんばかりに沖田は拳を構えた。拳を構えると今までの態度と変わり格闘家らしかなった。

 ようやく真剣に戦う気になった。それが空気を通して伝わってくる。

五十嵐 冬夜

おい、協力者、お前のせいで本気出したじゃないか

協力者

そうみたいだな。お前も覚悟を決めろ

五十嵐 冬夜

ああ、今日だけは主義を捨てて女子と戦うよ

 協力者と五十嵐も素人ながら拳を構えた。勝てる可能性が低いとわかっていても立ち向かないといけなかった。

 にらみ合いの緊張感の中、いつ戦いが起こってもおかしくもない。そんま時だった。戦いの意思を遮るように遠くから鈍い銃声が聞こえた。

メビウス・ザ・ループ(16)

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