千里が居なくなって十三日、千里は行方不明だ。警察も全力で探しているらしいが、見つからないでいる。

 彼女は何処に消えたのだろう。

 どんなに考えても答は出ない。

 十二月も終わりに近づいて冬休みも近い中、千里ハルは姿を消してしまった。まるで最初からこの世に居なかったようにだ。

 いくら待てど帰ってこない現実といずれ帰ってくる理想が同時に存在している。日が立つほどに押し潰しそうな不安は徐々に小さくなっているが、けして消えたわけではない。

今日も心成し千里ハルを想っていた。

 どうしようもない想いを募らせ遠くを見つめていた。広い黒板に年寄りが長々と何かを話しながら文字を刻んでいる。

古賀ダイチ

――おい

古賀ダイチ

おい……おいってば

 注意深く誰かに話しかけられて一瞬だけ心臓が止まった。俺はふと声をかけた相手に返事をする。

星塚セキ

――なっ、古賀か驚かせるなよ

古賀ダイチ

あのな、授業中にボーとしてると怒られるぞ

 古賀ダイチの言う通り昨日もセキは授業に集中できず怒られていた。

 古賀ダイチに言われ気づいたがいつの間にか授業は終わっていた。続々と教室から生徒達は出ていっている。

星塚セキ

またやっていたのか

 千里ハルが居なくなってからセキは魂が何処かへ行ってしまったのかと思われるぐらい落ち込んでいた。

 余りにもショックが多かったのか千里ハルが居なくなった始めの数日、大学に通えなかった。

 少し落ち着いて大学の授業を受けても上の空すぎて学ぶ意味がなかった。流石に日も経って、こうして授業を受けているがたまに今日みたいになる。

古賀ダイチ

ああ、授業に出るようになったのはいいが肝心の授業を聞いてないのは意味がないだろ

星塚セキ

わるい

 セキの覇気のない返事に嫌気を差したダイチは内側で止めていた意思をぶつける。

古賀ダイチ

こんな事は言いたくないんだが、たった二ヶ月しか付き合ってないのに考えすぎなんじゃないか

星塚セキ

中高男子校じゃないお前にはわからないよ。初めて出来た彼女が行方不明なんだ

星塚セキ

心配で何が悪い

 友人から出た言葉に驚きを隠せない。セキは慌てた様子で首にかけた十字架のネックレスを握った。

 俺はただ、ハルの事が心配なだけだ。それなのにこいつは心配ではないのか、お前はハルの友達じゃないのか?

 セキの表情を見てダイチは落ち着かせるように両手を肩に置いた。

古賀ダイチ

心配なのはわかる

古賀ダイチ

まずはお前は冷静になれ、お前より家族の方が心配しているんだ

古賀ダイチ

千里ハルとの関係の深さは家族の方が深い、されどお前は二ヶ月だろ浅すぎるんだ

 そうだ。俺とハルが付き合い始めたのは二ヶ月前の十月だ。短い時間かもしれないが俺にとって最初の恋愛なんだ。

 確かに家族の方が俺より長く過ごしているし心配している。親からしてみれば胸が引き裂かれるほど心配なはずだ。

 そんな事はわかってる。

 ただ時間の概念で量れるものじゃないだろ。

星塚セキ

時間の問題じゃない

 ダイチの手に力が入った。セキの言葉が詰まる。

 よくよくダイチの顔色を疑うと何処か顔が怖い、怒っているように見えた。

古賀ダイチ

愛って言いたいのかバカか

 俺は耳を疑った。

 まさか友人から愛を否定されるなんて、俺は唐突すぎて息をするのも忘れそうだ。

始まりは別れ(3)

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