一学期初めての中間テストが近づいていた。一部の生徒は内心ソワソワとしていて、どこか落ち着かない生徒もいる中、授業もテストに出るところを重点的に教えている。別に良い点数を取る必要は無い私は平均点以上は取れればいいとノートに授業の内容を写していた。

 昼休みに入り、いつも通りに昼ご飯を友だちと食べていると小春が話を振る。

九十九 小春

あのさー私思ったんだけどさ、テスト勉強しないか?

優木 キリン

……へぇ珍しい。ウララが勉強なんて


 昔から小春と付き合いがあるキリンは勉強より運動が好きな小春が勉強をしたいなんて聞いてあ然とした。そんな様子が気に入らなかったのか小春は気分を悪くした。

九十九 小春

なんだよ。人がせっかくやる気を出しているのに酷いと思わないか? つーむーぎー


 紬に助けを求め顔を近づけた。紬は口に入っていたご飯を飲み込んで答えた。

矢吹 紬

うーん、テスト勉強ねぇ。いいじゃない別に悪い事じゃないし

九十九 小春

ありがとう紬、愛してる


 勢い良く紬に横から抱き着く、紬は勢いに押され小春に好きなようにされる。抱きつかれて弁当が食べにくかった。

矢吹 紬

もう、苦しいよ小春ちゃん、食べられないよ

優木 キリン

そうよ、伊吹ちゃん嫌がってるでしょ止めなさい


 小春は紬の後ろに回り抱きついて紬の肩に顔を埋めて話す。

九十九 小春

ヤダね。キリンがテスト勉強手伝ってくれるって言うまで止めないもん

優木 キリン

はいはい、わかりました。手伝うから離れなさい

 キリンはちょと不機嫌気味に頬を膨らませ怒っているようだった。そのまま小春から目をそらす。

 キリンがどのような行為で腹に触ったのか小春には知る由もない。隠している内に秘めた思いのせいで怒っているからだ。

九十九 小春

おいおい、どうして怒ってるんだ?

優木 キリン

ハァ、なんでもない。それでどこでするの? ここ?


 素に戻ったキリンの態度を見て小春は紬から離れて様子を疑う。キリンに近づいて顔を近づける。キリンを覗く小春の瞳に自分が映っていた。

九十九 小春

どうしたの? キリン?

優木 キリン

それは私のセリフだよ。近い離れて

九十九 小春

ああ、悪い。でも、急に態度が変わったからどこか具合が悪いんじゃないかなと

 近づいた小春を押しのけようと力いっぱい押したがキリンの腕では小春はびくともしない。微動だにしない小春はおぼろげとしていた。

 小春は昔からスキンシップが激しいと言われていた。それは小春の長所であり短所でもあった。高校生になってもそれは変わらないようで良く男子に誤解されやすい。キリンは小春らの近すぎるスキンシップを抑えて欲しいが本人に自覚が無いせいで悩んでいた。

優木 キリン

別にどこも悪くないから、ほら、どうするの?

九十九 小春

そっか、そうだな紬はどこかいい場所しってる?

 どこか安心した小春は椅子に座った。

 紬は食べ物を飲み込み話す。

矢吹 紬

そうだね……喫茶店はどうかな?

 思い浮かべた最初の場所が水野喫茶店だった。最近良く通っているせいか口に出ていた。他にも候補はあったはずだが思わず水野喫茶店が上がってしまった。

 私はそこまであの喫茶店に行きたいのかな?

九十九 小春

へぇ、喫茶店か悪くないな。面白そうだな

優木 キリン

あのね、遊びに行くんじゃないんでしょう

 手を叩いて面白がる小春を横目にキリンは呆れていた。

 切り替えてキリンは紬に喫茶店の場所を聞いた。紬は商店街にある水野喫茶店の場所を丁寧に教えた。

 キリンは少し考えて場所を思い出そうとしたが当てはまらなかったのかスキッリとしないようだ。

優木 キリン

うーん商店街に余り行かないからな。そこに喫茶店あるんだね

矢吹 紬

うん

 少し不思議だった。私より昔から住んでいるはずの二人は水野喫茶店のことを知らない。あんなに居心地がいい場所なのに知らない。そのことが引っかかる。

 けれど私の心の何処かに「そんなものか」と言う自分も居た。生まれた街に住んでいたって知らないことはある。実際、前に住んでいた街のことを全て知っているかと聞かれたら私はどう答えるだろうか。

 つまり、そういうことだった。

キスの味はコーヒーでした(1)

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