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うん、今日も良い天気

 朝五時。静かなマンションの一室で、高校二年の目黒愛夢(めぐろあむ)は伸びをした。

目黒愛夢(めぐろあむ)

さて、支度しなくちゃ


 ベッドからいそいそと起き上がり、すぐに身支度を整える。
 朝に強い彼女だが、急ぐのは別に理由があった。

目黒愛夢(めぐろあむ)

恋次(れんじ)さん……生きてるかな

 心配な視線を向けたのは部屋の壁。その先には心配してもし足りない人物が居る。

 白目(はくもく)恋次、二十五歳。愛夢の高校の国語教師にして幼馴染兼許婚という奇妙な関係の人物である。
 その彼の様子を見に行く為、毎朝愛夢はこうして急ぐのであった。

 幼馴染とはいえ一応チャイムを鳴らし、玄関から声を掛ける。

目黒愛夢(めぐろあむ)

恋次さん……恋次さん?


 数回押しても応答が無く、嫌な予感がした。

目黒愛夢(めぐろあむ)

もしかして又無理して倒れているんじゃ……

 そう思ってしまうのも仕方の無い事で、恋次との最初の出会いが行き倒れている彼を助けた事だったのである。
 恋次は現在愛夢の高校教師だが、その前は大学で人の心理について研究していた。その中で書き出した物語が日の目を見て、作家もしている。
 そんな彼は研究や小説の創作作業に没頭し、倒れるまで飲まず食わずで集中してしまう事があるのだ。

 そう思うと愛夢は居ても立っても居られず、合鍵で玄関を開けた。

目黒愛夢(めぐろあむ)

恋次さん、失礼しますよ?


 一応もう一度声を掛けるが、応答は無い。

目黒愛夢(めぐろあむ)

大丈夫かなぁ……


 少し急ぎ足で寝室へ向かう。

 ドアを開けると目的の人物はやっと見つかった。

 恋次は寝室のパソコン机に突っ伏し、眠っていた。
 倒れていない事に一先ずホッとする。

 気持ち良さそうに寝て居る彼を起こすのは忍びなかったが、本日は平日。当然仕事がある彼を起こさない訳にもいかない。

目黒愛夢(めぐろあむ)

恋次さん、起きて下さい


 軽く揺するとすぐに彼は目を空けた。

白目恋次(はくもくれんじ)

ふわぁ……あれ、愛夢ちゃん?おはよう


 のんびりと応じる彼に、愛夢は思わず溜息を吐いた。

目黒愛夢(めぐろあむ)

のんびりおはよう、じゃ無いですよ。昨夜はちゃんとご飯食べましたか?お風呂は?

白目恋次(はくもくれんじ)

えーっと昨夜は確か帰ってから物語を書いて……。その後どうしたんだっけ?


 記憶が無い様子の恋次に愛夢は再び溜息を吐いた。

目黒愛夢(めぐろあむ)

もう……又無理しましたね?ほんっとうに恋次さんは……。
昨日はわたしが遅くなるしお邪魔出来ないからしっかりやってとあれ程……

白目恋次(はくもくれんじ)

ううごめんね……言われた時はちゃんとしようと思ったんだけど……。
やっぱり僕は愛夢ちゃんが居ないと駄目ですね……


 小言は溢れる程浮かぶが、そう言われてしまうと弱い。
 つくづく彼に甘いなと思いながら、愛夢は小言を引っ込める事にした。どの道時間も無い。

目黒愛夢(めぐろあむ)

もう仕方無いですね。
わたしは朝ご飯を用意しますから……その間に恋次さんはお風呂に入って着替えを済ませて下さい。良いですね?

白目恋次(はくもくれんじ)

はい……。
愛夢ちゃんごめんね。何時も有難う

目黒愛夢(めぐろあむ)

謝る位ならわたしが居なくてもちゃんと生活して下さい……


 そう返しながらもお礼を言われるのは悪い気がしない。

目黒愛夢(めぐろあむ)

これだからわたしは……この人を放っておけない


 そう思いながら愛夢は……本日も自分より大人である筈の恋次の世話を焼くのだった。

Episode0 恋次先生が心配です(修正済)

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