千里は本気で念願のユートピアへ行こうとしている。いなくなると言われた時はびっくりしたが冷静になってハルの考えを聞くことにした。

 今は自分にとって大切な彼女の言葉を聞くことしかできなかった。

 セキはスマホの向こうに居る千里に質問をする。

星塚セキ

大事な場所なのか

千里ハル

うん

 千里は迷いなく答えた。声からも迷いのないことがわかった。

千里ハル

私にとってあの場所は二度と行けないと思っていたから

星塚セキ

あの場所?

 それが、念願のユートピアなのか? それは千里にとってそんなに大事な場所なのか。

星塚セキ

俺が連れていけない場所なのか

千里ハル

うん、セキくんじゃ無理、この列車に乗らないと行けないらしいから

 列車……? そうだ千里は列車に乗っている。千里は列車を使って念願のユートピアに行こうとしている。

 もし、念願のユートピアって言う場所があって、そこに向かっているだけ?

 疑問を抱きつつ、セキは質問を続けた。

星塚セキ

念願のユートピアって何処にあるんだ?

千里ハル

――無いよ

星塚セキ

――無い?

千里ハル

存在しないから念願のユートピアなんだって

 意味がわからなかった。セキはノートパソコンで念願のユートピアを検索をしたが地図上に念願のユートピアなんて場所は出てこなかった。

そう、念願のユートピアはんて場所は存在してなかった。

 ハルが何を言っているのかわからない。どうしてハルは存在しない場所に電車で向かっているんだ。

星塚セキ

お前は何を言っているんだ

 つい、本音を漏らしてしまった。

星塚セキ

つまり、何処か列車で行ってくるんだろう

星塚セキ

さては酔っているんだな。俺を驚かそうとしているんだろ。なあ……千里

 何でだろうな。とても嫌な予感がする。どうでもいい事を言わないと言葉にしたくない嫌な予感が本当に起きそうだ。

千里ハル

…………ごめんね。セキくん私はどうしてもあの場所に行きたいんだ

千里ハル

わがままだとわかっている

 ハルの寂しげな声に嫌な予感を感じた。

千里ハル

本当に……ごめんね

星塚セキ

おい、千里!!

 嫌な予感が当たりそうだ。不安が脳裏をよぎる。虫の知らせとは良く聞くがこれが違う事を願う。

千里ハル

そろそろ時間だから言わないと

星塚セキ

おい、それ以上言うな!!

 聞きたくない想いで必死に叫んだが、ハルは意思を決めているようで無駄のようだ。

千里ハル

さようなら……好きだよ。セキくん

星塚セキ

おい、ハル!!

 通話が切れた。スマホからは何も音はしなくなり静寂だけが残った。

星塚セキ

――――おい、ハル……ハル……嘘だろ

 その後も何度も連絡を取ろうとしても千里に連絡がつかなかった。

 ふと、時計を見ると日付が変わっていた。

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