襖の隙間から曙色の光が入り込んでいる。笑い声が部屋を支配していた。物音が立たない中で協力者は美野に話しかける。
襖の隙間から曙色の光が入り込んでいる。笑い声が部屋を支配していた。物音が立たない中で協力者は美野に話しかける。
異能力を使ったのか
はい、使いましたけど
そうか
美野の答えを聞いた協力者は一瞬、蒼衣の方を向いた。
私の異能力を証明する為に異能力を使い過去に戻った。そして蒼衣さんから受け取った箱の中身を当てる事によって証明したのだ。
笑い終えた蒼衣は箱の蓋を取り煎餅を取り出した。
これは認めるしかないね。彼女の能力は過去に戻るだね
タイムマシンとは違って美野さんの記憶または意識を過去に送っているのかな
一つ質問していいかな
はい
蒼衣の言葉に気が付いた伊月は美野を強く見つめる。その様子を確認した蒼衣は質問を始めた。
君が体験したという三週間は本当に起こった事なんだね?
はい。間違いありません
そうか、ありがとう
軽く頭を下げる。蒼衣は並べてあった座布団に座るとみんなに座るように言った。全員が座り込むのを待って蒼衣は話す。
色々試す用で悪かったね美野さん
実は箱の中身を知らなかったのは美野さんだけなんだ
一人一人に顔を合わせる。協力者は口元がニヤリとしていた。五十嵐は両手を顔の前に出して誤っていた。太誠は「すまん」と言った。伊月は目を合わせると恥ずかしがって目をそらした。
私以外が箱の中身を知っていたらしい、何だか気が抜けてしまう。
ごめんなさい。美野さん
いえ、いいんです
別に良かった。自分の異能力を理解してもらったからだ。
あの、蒼衣さん。そろそろいいっすか
伊月が手を挙げてた。それに蒼衣は反応する。会議をしている時の似た空気を感じる。伊月も少しばかり緊張をしているようだ。
そうだ、どうだったかい。美野さんは嘘をついていなかったかい
……ついてなかったです
なるほど、わかった
嘘、私が嘘をついていない事がわかったのだろう? もし、私が嘘をついていたらどんな反応をしたんだろうか。
何か納得をした蒼衣は部屋に居る全員にわかるように語りかける。初めに美野が境界の管理人になった事を軽く祝い、改めて自己紹介をした。
自己紹介をしてわかったのがここに居る六人が異能力を使える事だった。
それともう一つ、Another(アナザー)という異能力を集めた異能力部隊に美野が入る事になった。
蒼衣を中心とするAnotherは境界の管理人の中でも特殊らしく新しく加わった美野を入れて七名しかいない。
まず、境界の管理人の役目が異ノ者が住まう場所の監視、管理だ。異ノ者とは分かりやすく言えば妖怪、幽霊、怪異と言ったこの世のものではない者を異ノ者と呼んでいる。
そしてAnotherの役目は異ノ者が住まう場所から離れた時、元に居た場所に戻す事が主の仕事で、もう一つは異ノ者が人間の害になった時だ。その場合、害になった異ノ者を退治しないといけない。
これが一番厄介だと蒼衣は言う。
ある程度話しは協力者から聞いていたが改めて聞くと私の日常は変わっていた事を気付かされた。
協会の管理人の役目はわかったかな
はい
うん、そして私が伊月さんに嘘をついたかを聞いたのは伊月さんが心を読める異能力を使えるからだ
そして伊月さんは私の質問に本当と答えた
思い詰めた様子を見せる。周りにいる協力者達もだった。
つまり美野さんが言った事は本当に起きた事になる
伊月は心を読める異能力を使って美野が嘘をついていない事を証明した。それは美野が体験した三週間の出来事は本当の事になるのであった。
それが境界の管理人にとって重大な事になるとは思いも知らずに。