店員の元気な挨拶を聞きながら近くのコンビニへと入る。
同時に明彦が籠を持ち、手が離れた。
目が合った店員にお辞儀をしながら弁当コーナーへと向かう。
付近には相談しながら昼食を選ぶカップルの姿があった。
いらっしゃいませー!
店員の元気な挨拶を聞きながら近くのコンビニへと入る。
同時に明彦が籠を持ち、手が離れた。
目が合った店員にお辞儀をしながら弁当コーナーへと向かう。
付近には相談しながら昼食を選ぶカップルの姿があった。
どうする?
そうだなぁ、御前は?
うーん……あたしはこれとこれが気になるかな
え、マジ?俺もそれ気になってた
え、本当?嬉しい
じゃあ両方買ってシェアするか
うん!
レジに視線を向けると清算しようとする夫婦の姿がある。
千三百八十八円です
千と……あ、八十五円しかないや。三円ある?
最初は女性が払おうとしていたが、途中で気付いたように男性に視線をやると、彼も財布を取り出す。
ちょっと待てよ……あ、あった
言いながら彼が三円レジに追加で出すと店員が数えながら受け取る。
千三百八十八円丁度頂戴致します。レシートはご利用ですか?
その声に男性が女性に視線を向けた。
良いよな?
うん、要らない
女性が応じながら身を翻せば、買った品を男性が受け取った。
はい、ありがとうございました
その後ろ姿に店員が挨拶を返す。
……ちょっと羨ましいかも
明彦と他の客を見比べながら密かに思う。
アキと買い物するのは小さい頃から良くあったし、いっつも兄妹だと思われている気がするんだよね……
彼もそれを理解しているからか、協力して買い物するという事が無い。
ユズ、どうする?これか
物思いに沈んでいると明彦が問い掛けて来る。
店内という状況の為、少し小さな声での問い掛けだ。
……他のカップルと全然違う。まぁアキが真面目だから……なんだろうけど
そんな姿に少し寂しくなりながら、彼の持っている物に目線をやると海老とチーズのグラタンで結月の好みにピッタリだった。
それを見ると嬉しくもなる。
まぁ良いか。これが……私達らしい、のかも
そんなように思えると、素直に頷けた。
うん
それなら一つは決まりだな
うん。アキは……
返しながらふと気付く。
そういえばわたし……アキの好みがわかんない
明彦は何時も当たり前のように結月の好みで気温や気持ちにも合うようなものを選ぶのだが、結月はそれが出来なかった。
ずっと一緒に居るのに……何でだろ
考えてみても良くわからなかった。
しかし結月のモヤモヤ等気付いていないように、明彦はすんなりと答えた。
俺はおにぎりとおでんにしようかと。量を摂りすぎると勉強中に眠くなるしな
あー成程。そうなんだ……
結月は返しながらも、モヤモヤ感が消えなかった。
それじゃあ結局わたし……アキの好みわからないじゃん
しかし直接訊くというのは彼の今までの行動を思えば……ズルをするようで出来なかった。
複雑な想いでレジに向かう。
ユズ、レジ前の者、何か頼むか?
尋ねつつも結月の答えはわかっている様子で、彼は一切レジ前の商品に視線を向けない。
結月の食事量を考えれば頼まないのだと知っているのだ。
ううん、要らない
結月が答えればわかりきった表情で頷く。
わかった。そういえば月子(つきこ)さんの分が欲しいよな。一応おにぎりは彼女の好みも考えて選んだが……確かいももちが好きとか言ってたか
月子というのは結月の母親だ。
明彦の呟きに結月は驚く。
お母さんの好みもわたしより知ってる……
そう考えると再び複雑な気持ちになった。
わたしアキの事もお母さんの事も全然知らないんだな……
それに締め切り明けなら眠気覚ましの珈琲も入れておこう
続いて明彦はレジ横のホットドリンクの中から有名ブランドの珈琲も籠に入れる。
こんなもんで良いか。どう思うユズ?
え!う、うん。
多分良いかな
考え事をしていた結月は曖昧に頷いた。
良いも何も……わたしの出番なんて無いよ
そんな結月の様子に明彦は心配そうな表情になるが、すぐに何か考えたらしく……もう一つ何かを籠に入れるとレジに向かった。
いらっしゃいませ
お願いします
はい。……千二百六十八円になります
じゃあ千三百三円で
はい、三十五円とレシートのお返しです
ありがとうございます。ユズ、行くぞ
結月がぼんやりしている間に清算を終わらせた明彦が呼び掛ける。
あ、うん
それにハッとして頷いた結月は慌てて彼に続いた。