天領蘇芳(てんりょうすおう)

うん、わかった


 緊張が彼の声から伝わって来て余計に恥ずかしくなってしまう。

……後ろ向いてて良かった


 密かにそんな事を思っていると冷たい金属の感触がする。

……っ


 思わず声を上げそうになってそれをどうにか堪えた。

駄目だ……すっごいドキドキする


 早くして欲しいような気もするけれど、このままずっとこうしていたいような気持ちもあって……。

 たった数分の出来事の筈なのに長いような短いような……不思議な感じがした。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

着けたよ

あ、うん。有難う


 やがて聞こえた彼の声に思わず焦ってしまった。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……何か考えてた?


 からかうような声に恥ずかしくなる。

な、何でもないよっ


 恥ずかしくて振り返れないまま、思わず叫ぶように答えると……。

 突然後ろから抱き締められて一気に心臓の鼓動が高鳴った。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……何でも無いような台詞じゃないけど?


 耳元で囁かれるように言われ、更に頬が熱くなる。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

ねぇ……教えて?


 続けてそんなように言われたから余計に恥ずかしい。

な、何も考えてない!唯その……ドキドキするなって思ってただけで……!


 勢いで言ってしまえば更に頬が熱を持ったのがわかった。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

ふーん?後ろから迫られて興奮してたんだ

そっそんなんじゃないよ!!

 からかわれているのはわかっているのにどうしても反応してしまえば……首筋に口付けられたのがわかった。

 心臓の鼓動が激しくなり、伝わっているのでは無いかと思う程だった。
 続いて少しだけずらされた上着の隙間から覗く背中にもキスされて更にドキドキしてしまう。

ちょ、そんなとこっ


 思わず声を上げれば相変わらずからかうような、楽しげな声が返って来る。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……ならどこなら良いの?教えてよ

…………


 そう言われれば真っ赤になったまま言葉が出て来ない。

そ、そんなの恥ずかしくて言える訳……っ!

天領蘇芳(てんりょうすおう)

早くしないともう一回背中にしちゃうよ?


 楽しそうな声で彼はそんな風に急かす。
 それに私は真っ赤になったまま、どうにか言葉を搾り出す。

……る

天領蘇芳(てんりょうすおう)

聞こえないな、もう一回。何が欲しい?


 その言葉に私は真っ赤なまま振り返ってもう一度言う。

唇にキスして……って言ったのっ


 余りの恥ずかしさに早口で告げればそのまま引き寄せられて唇が重なった。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……やっとこっち見た


 静かに呟かれた言葉にドキッとする。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

何時までもこっち見ないし、俺だって寂しくなるんだよ?

……ご、ごめん

確かに恥ずかしかったとはいえ、何時までも背を向けられてたら余り良い気持ちじゃないよね……


 流石に私もその言葉には反省する。
 しかし続いた彼の言葉にそれ所ではなくなってしまった。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

謝る位なら……そっちからキスしてよ

ええ!?


 驚いて声を上げるが冗談のようには到底思えない。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

何時も俺からばっかりだし……練習だと思って

そ、そんな事言ったって……っ


 恥ずかしいという言葉は声に出せない。

でも考えてみれば確かに私からってのは全然無いかも…………


 意を決して彼と向き合う。

 そうして彼に抱き着くとどうにかその頬にキスをした。

うう……恥ずかしい


 離れた後も心臓の鼓動が煩く響く。

 何も言えないでいると

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……そこじゃなくてこっち


 そんな声と共に引き寄せられ吸い付くように口付けられる。
 頬が熱くなるのを感じればもう一度唇が重なる。

 思わずしがみ付けば強く抱き締められた。

『Fratello』【クリスマス・天領蘇芳誕生日番外編17/21】譲れないもの17

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