亡き彼女の墓参りに出かけた。そして知り合いの男に会って色々と話をしたいところだったが、何ということだろうか。

よう、秀俊

 寺への道はこの道しかない。回り道がなくその道を進むしかなかった。知り合いの男で現在寺に住んでいる長根 陽弘(ながね ようこう)に気づかれてしまった。

ああ、おはよう

 俺はちらっと倒れている男たちをちらっと見る。状況を勝手に推測すると3人が倒したものなのだろうか。陽弘は不運な持ち主であり昔から様々な人に襲われている。その経緯で護身術を学ぶようになり、一人で数人を倒すことができる。

木原 悠月

ええ、秀俊? 本当に秀俊なの

ああ、そうだよ。いろいろあってイメチェンしたけど、何があったの?

 隣にいるさっきから静かに殺気立っている女の子は誰だと聞く。そして何があったのか説明を求めた。

足立 環奈

秀俊先輩もイメチェンですか。似合ってますよ

それはどーも。先輩ってことは同じ学校の後輩?

足立 環奈

……声でわかりませんか、さすがに

 声と言われてもと困ったが、その一言で同じ学校で会話を交わすことがある人物であるとわかった。

木原 悠月

足立さんだよ

……まじで?

木原 悠月

本当の本当、秀俊と同じようにいろいろな事情があってね

 俺たちの周りにはいろいろな事情がある。そのいろいろの内容がどんなものなのか。倒れて屍となった男たちを横目に俺は寺へと歩き出した。

足立 環奈

ええ、あとの処理はよろしくね

 足立さんの会話を深く気にしないことにした。あの屍となった男たちがちゃんと後始末されることに安堵しつつ、境内に入る。

 長根 陽弘という男がいる。彼は不運の持ち主である。生まれは日本であるが、ルーツをたどると日本人ではない。彼が日本人になったのは日本の国籍を取得したからである。日本人になったのが10年前だ。

 長根 陽弘のルーツは隣国、戦前戦後の混乱期に日本にやってきたのはいいが元々考え方が異なるため周辺住民との諍いが多かった。恐喝、脅迫、強盗、窃盗なんでもあり。警察に逮捕されても人権を強く主張してまた元通り。

 長根 陽弘は犯罪一家から生まれた奇跡の優秀者である。人格、性格に優れている。彼は育児放棄に遭い、その後は夜逃げされた家族に捨てられた。あまりにもかわいそうであり、近所の人たちに愛された彼は現在住んでいる寺に拾われて後に寺の跡取りになることになった。

陽弘さんおかえり……お客様?

ああ、ただいま。お茶を頼む

ちょうど和菓子があるからそれもつけるね

 寺の娘である長根 瑠璃が顔を出し、陽弘と会話を交わす。彼女は手際よく茶と和菓子をすぐに用意した。

またいつもの不運作動しちゃったのか?

ああ、厄介なことにな

足立 環奈

だから私たちのセキュリティサービスを受けるべきですよ。長根様

 長根の不運は生まれによる。日本人になっても差別が残っており、一生受けるものだと彼は達観している。その態度が気に食わないと先ほどのように襲撃者が多いという。

足立 環奈

あなたはよく無事でしたね。この殺人鬼騒動の中で

は、殺人鬼?

木原 悠月

それについては俺が話す。潤にもみんなにもまだ話してないことなんだ

 どうやら俺はとんでもない場面に出くわしたようだ。悠月が話しだすのを俺は待った。

 話の内容は町で今まで起きた殺人事件に近い人がいて、その人が小牧千夏、ちーちゃんであること。犯人が小牧千夏の母親であるかもしれないことだった。

足立 環奈

それと町であった落書きについて調べたら監視カメラに映っていたの。ちーちゃんと……

 環奈がカバンからファイルを取り出す。そのファイルには画像がある。監視カメラの画像だ。そこにあったのは……。

足立 環奈

要注意人物のあなたがあったわ。長根 陽弘さん

 長根 陽弘は環奈が出した画像を見る。数分してからうなずいた。

ああ、確かに俺だ

 まっすぐな目をして陽弘は言う。

俺たちが落書きした

 こうして協力者がわかった。

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