天領蘇芳(てんりょうすおう)

君は俺を見ているようで……何にも見えていない…………。もっと俺を見てよプロデューサー。俺の事を考えてよ。他の事なんて他の奴なんて……見ないでよ!


 その言葉は悲痛な叫びに聞こえた。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……不安になるんだ、君は何も言ってくれないから。
本当は皆と同じで……不器用な俺なんかより兄さんみたいに完璧で……どんな重圧にも期待にも応えられるような人と居た方が楽しいんじゃないかって。俺ばっかりが好きなんじゃないかって

そんな事考えていたなんて……思っても見なかった


 ふと昼間の浅葱との会話を思い出す。

認められたい気持ちが大きい……か


 確かにそうなのかも知れない。
 そしてそれが出来る物、蘇芳が大好きな物……その答えは……。

……馬鹿だね蘇芳。蘇芳こそ何もわかってないよ?


 長い間を空けて私は呟く。

私の方こそ蘇芳の事しか考えてないんだから

天領蘇芳(てんりょうすおう)

え…………


 驚いたように声を漏らす彼が愛しい。

今日もずっと考えてた。
今何思ってるのかな、何で怒ってるのかな、様子が変だけど大丈夫なのかな、このまま仕事で大変な想いをしないかな……って。ね?笑っちゃう位蘇芳の事ばかりでしょ?

天領蘇芳(てんりょうすおう)

でも兄さんと歩いてたりとか……

浅葱との話題も蘇芳の事ばっかりだったけど?

天領蘇芳(てんりょうすおう)

兄さんの言葉に赤面したのは……?

それは彼氏持ちって単語に蘇芳を思い出したから……だけど


 少し照れてしまいながらも返せば彼は気が抜けたように座り直し、項垂れた。
 ついでに開放され、私も体勢を整える。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

って事は俺……勘違いで嫉妬しただけじゃん……。
格好悪い…………


 呟きながら彼は赤面している。

え、嫉妬してくれたの?


 気の抜けた言葉を返せば彼は恥ずかしそうに言った。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……そりゃ君が他の男と……特に兄さんと居たら気になるに決まってる。
……譲りたくないから……


 それにつられて私まで真っ赤になってしまった。
 同時に浅葱のヒントの意味と私の考えた答えは正解なんだという事も理解する。

自惚れなんかじゃないよね。蘇芳の大好きな物、それはきっと――


 それがわかればクリスマスであり彼の誕生日に何を送るべきなのか……答えはすぐに見付かった。

……楽しみにしてて、蘇芳。絶対に喜んで貰うから


 思わず笑みを零したその時……

はい?


 ノックの音に応えれば居心地悪そうな表情のウェイターが入って来た。
 名札にはオーナーの文字が入っている。

 思わず背筋を伸ばせば彼は言い難そうにしながら口を開いた。

オーナー

申し訳ありません、お客様方。
他のお客様から苦情が入っておりまして……仲睦まじいのは結構な事ではありますが、幾ら個室とはいえ公共の場ですので節度を守って頂ければと思います


 その言葉に私は一連の行動を思い出し、羞恥で真っ赤になった。

すすすすみません。す、すぐに出て行きますから!!

 勢い良く謝ってしまいながら慌てて荷物を整理し、蘇芳を促す。

蘇芳、外出よう

天領蘇芳(てんりょうすおう)

う、うん……わかった


 蘇芳も同じように自分の行動を省みたのか真っ赤になりながら荷物の整理を始める。
 そして私達はすれ違う店の人皆に謝罪しながらカフェを後にしたのだった。

『Fratello』【クリスマス・天領蘇芳誕生日番外編10/21】譲れないもの10

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