きーちゃんに押し倒されて視界が転がった。ふんわりとした土の匂いに包まれて興奮した心が次第に落ち着いていく。

ご、ごめんなさい。じゅんちゃん

 きーちゃんが起こそうとしたけれど私はそれを止めた。そのままでいいと彼女に微笑んだ。

すごく驚いた。きーちゃんが私を嫌いになるじゃないかって怖かったけど

嫌いにならないよ。すごく好き、大好き

 きーちゃんがよこに並んで一緒に寝た。鳥の声と風の音が心地よい。今日はこのままずっとここで過ごせたらいいなあと思うがそれは無理な話。今日は大切な婚約の儀がある。

じゅんちゃん……じゃなかった。潤先輩って呼んだ方がいいですよね

いいよ。どっちでも好きな方で

……じゅんちゃん

 きーちゃんが私の胸に顔をうずめる。ふんわりとした彼女を優しく、私は抱きしめた。

 それからは私がどうしていたかを話した。小学生の途中までは日本にいて、父親についていって海外に出ていた。そして高校の理事長で桐子と詩音の親代わりをしている彼がいところであることを話した。

え、じゅんちゃんと理事長がいとこで、同じマンションに住んでるのは

そう、一人暮らしがしたいからそこにしたんだ。知り合いがいるところなら安心できるし、学校に近いからね

けっこうつながりがあったのですね。じゅんちゃんとのつながりが

 そのほかにも自分の今までの経験、人をあまり信用できなかった話をした。日本にいたころ、親の関係で仲良くしたりしなかったり、周りに振り回されたことが多くて本当に信頼できる人がいなかったという。海外という広い世界に出て、様々な人に出会ってから自分の考えが変わったという体験を話した。

きーちゃんを救いたいんだ。何があってもきーちゃんを大切にしたい。私をきれいと言ってくれた大切な人だから

じゅんちゃんは……こんな私でもいいの?

きーちゃんは、こんな私でも好きになってくれるかい?

 質問を質問で返してみた。答えは決まっている。言葉がいらないくらい、自分の心は決まっていた。

 しばらく黙って互いを見つめていたが、きーちゃんが噴出して笑い始めた。

あはは、なんでだろう。笑っちゃうなんて

なんかにらめっこをしているみたいになっちゃったね

なんか不安がなくなってきた。じゅんちゃんに会えたら怖いことがなくなったみたい

わたしもだよ。きーちゃんと一緒なら怖いことないよ。この休みが終わったら

 この休みが終わったら待っているのは現実。やらなければならないことがある。

じゅんちゃんに言わなければならないことがあったんだ

 続いていた連続殺人事件の犯人の情報をつかんだという。

儀式が終わったら話をしましょう。救いたい人がいるの

わかった。話を聞くよ

 そして準備をするために森の外に出ると待ち構えていた人がいた。

待ってたわ

野川 詩音

おかえりなさい、桐子

 その後二人に土がついて汚れていると叱られて桐子と潤はそれぞれの別荘に戻ってシャワーを浴び、婚約の儀式に挑んだのであった。

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