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面白い提案こそが我々の道標に成り得る事も有るものなのだ!

 鈴翔(りんしょう)学園生徒会室で今日も自作の名言が響き渡る。
高等部生徒会長、椎根木実(しいねこのみ)会長が何時も通りの男口調で叫んでいるのだ。

 そんな姿を見ると阿呆にも思えてしまうが、木実会長の成績は三年学年トップである。

 この鈴翔学園生徒会の生徒会長は三年に上がる前の二年学年末試験で一位を取った生徒が男女問わずなり、副会長、書記、会計、庶務は人気投票で決められる。
 ただ語り部である俺、最原鏡助(さいはらきょうすけ)はその内のどの役職にも該当しない。
 一年の学年末試験で一位を取った者がなる、生徒会補佐……それが俺の役職だ。

因みにこの決め方は中等部も高等部も共通である。

 自分達の投票で決められた役員が生徒会として上に立つと大抵の生徒が従う様になるからこそ、このシステムを採用しているのだと思われる。
 しかし人気投票のみだと生徒会役員の能力に広がりが出る事になる為、生徒会長が二年の学年末試験でのトップ、生徒会補佐が一年の学年末試験のトップとなっているのだろう。

 俺的にもかなり良く出来た進学校ならではのシステムだと思うのだけど役員達の性格までは考慮して出来ない所は玉に瑕(きず)だと思える。
 そのせいで高等部の生徒会長は傍若無人な人となってしまった。
 俺は嫌な予感を覚えながら、恐る恐る尋ねる。

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

あの、木実会長……

椎根木実(しいねこのみ)

どうした最原会計

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

その……まさか自分の思い付きで重要な議題とか決めてしまおうとか思ってないですよね?

椎根木実(しいねこのみ)

む?おい最原会計

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

は、はい?

椎根木実(しいねこのみ)

御前、前世は狐の血を受け継いだ狸爺か何かなのでは無いだろうな?

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

何ですかその、少年○陽師ネタ……

椎根木実(しいねこのみ)

だってだな……御前、完璧に予想が的中するなどそうそう有るまい

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

は……?

椎根木実(しいねこのみ)

見事正解だ。オレは御前が言った通りの事をしようとしている

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

な、何ですってえええええぇぇぇぇぇ――――――――――!?

椎根木実(しいねこのみ)

ふふ、御前の反応は面白いな

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

そんな事言っている場合ですかぁ――――――――――!
駄目でしょう!普通に考えて駄目でしょう!

椎根木実(しいねこのみ)

む?最原会計……

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

何ですか!

椎根木実(しいねこのみ)

オレの考えが受け入れられないと御前は言うか?

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

そうですよ!俺の考えは普通だと思います!

椎根木実(しいねこのみ)

何故だ?オレの思い付きは叫ぶ程受け入れてはならない事だと言うか?

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

当たり前でしょう!木実会長の思い付きで進め、今まで良い結果を招いた事が有ったとでも?

椎根木実(しいねこのみ)

な……!た、確かにそうかも知れないが……今度こそ、そう、オレはリベンジするのだ!今度こそは良い結果を招いて見せよう


 俺の台詞に決意を込めた?表情で返した木実会長にその妹の椎根木葉(このは)中等部生徒会長さんが窘めようとしたのか追い討ちを掛けた。
 何故中等部生徒会の彼女がこの場に居るのかというと……この学園では中等部も高等部も合同で生徒会室に集まり会議をするからである。

椎根木葉(しいねこのは)

お姉さん、先を読みましょう。そうして今までの自分の行為を省みましょうね?

椎根木実(しいねこのみ)

な、何だとー!妹、御前も最原会計に味方するか!

椎根木葉(しいねこのは)

味方も敵もへったくれも有りませんよ、お姉さん。それにわたし、何度お姉さんのその言葉を聞いたか解りません。
玉には……反省しなさい!

静かに怒る妹を見て、天下無敵の木実会長も静かになる。
木実会長は妹の木葉会長さんに“さん”を付けて呼ぶのなら自分に付けて呼ばないのは変だと言うが、それは明らかに木葉会長さんが姉の木実会長に絶対勝利を収める姉妹関係だからだ。
それでもこうして一番上に木実会長が立って学園が統治されているのは木実会長さんが窘めたり怒ったりしながらも最終的には姉に従う様にしてくれているからだが。

椎根木実(しいねこのみ)

う……その、申し訳無い

 当然それを十分理解している木実会長はすぐに謝る。
 ……こういう素直な所は木実会長の尊敬出来る良い所だと思うんだけどな。
 本気で姉が謝る気が伝わって来たのか木葉会長さんも許す気に成ったみたいだ。

椎根木葉(しいねこのは)

まあ良いでしょう。でも暫くは無言で反省しているべきです。
わたしが良いと言うまでは

椎根木実(しいねこのみ)

……はい、解りました

 木実会長はそれにそう返事をした。

 木実会長が木葉会長さんの指示通り黙った生徒会室では――

椎根木葉(しいねこのは)

さて、という訳でお姉さんが黙ったので仕切り直して下さい。鏡助会計さん


 突然話を振られた俺は面食らった。

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

は?何故に俺!?

 思わず情けない声を上げてしまう。
 しかし木葉会長さんは尤もな事を言う。

椎根木葉(しいねこのは)

だって鏡助さん、解るでしょう?今現在の生徒会内で一番年上なのはお姉さんで、その次は貴方ですから


 考えてみればそうだ。今現在の生徒会内に揃っているのは木実会長と木葉会長さん、後は中等部三年で副会長の八重河咲名(やえかわさくな)さん、中等部二年で生徒会書記の野中舞羽(のなかまいは)ちゃん、中等部二年の生徒会会計、松下浅果(まつしたあさか)、中等部一年の生徒会庶務、永上(ながかみ)ルチアちゃん、中等部二年の補佐で俺の他には一人しか居ない男子峯野哉樹(みねのかなき)君と……そして俺しか居ない。木実会長が仕切れなくなれば仕切るのは当然俺の役割になるべきだ。

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

えっと……


 何かを言わなければと口を開いたものの、どうしろと言うんだ!?俺はこういう仕切る役が得意ではなく、どちらかと言うとかなり苦手な方なのだ。
 結論を言おう。俺が仕切るのは――無理だ。ああ無理だとも。嫌々情けなくない。情けないなんて事は決して無いのだ。別に逃げ様としている訳じゃあ無い。そんな気は欠片すらも……無いぞ。
 嫌々無いんだ。本当なんだ。そう、あれだ。俺が仕切ると訳が解らなくなっちまう。そうなれば皆がパニックだ。だからこそ引き下がるのだ。

八重河咲名(やえかわさくな)

鏡助さん……こんな事前にもあった気がするのですけれど……


 口調は丁寧だが、咲名さんの目が怖い。だから彼女は年下でも、“ちゃん”付けや呼び捨てが憚られるのである。

野中舞羽(のなかまいは)

……応援してるから


 静かに言ってくれたのは舞羽ちゃん。無口で言葉少なな彼女だが、だからこそ言葉に威圧感がある。

松下浅果(まつしたあさか)

先輩じゃなければあたしが変わったんすけど……


 困ったように笑いながら浅果が言ってくれる。

永上(ながかみ)ルチア

キョースケさん、仕切るなんて簡単よ。ささってやってパパって終わるよ


 ルチアちゃんは励ますつもりなのだろうか……さっぱりわからない。

峯野哉樹(みねのかなき)

先輩……この程度さっさとやって下さいよ


 敬語なのに敬ってくれている気がしないのは哉樹君だ。

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

うっ……


 ……皆の視線が非常に痛い。

最原鏡助(さいはらきょうすけ)

はぁ……誰かが来ないかな


 遂に人任せになってしまう。嫌、良いんだ。別に情けなくない。全然全く情けなくなんて無い。
 人任せ……それは仕方の無い話だ。その方が皆の為になるのだ。
 そう俺が自分に言い聞かせていた時、二人分の声が聞こえた。

to be continued

PROLOGUE1 会長の提案

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