十二月も中旬になり、気温も下がった頃。
 何時ものように仕事を終えた私は帰り支度をして『fratelloプロダクション』の入っているビルの出入り口へと急ぐ。
 本来なら帰宅だけで急ぐ必要は無いけど、彼氏に会いたい一心で自然と急ぎ足になっていた。

 彼氏の蘇芳は私が仕事を終えるのを毎回待っていてくれて、家まで送ってくれるのだ。
 プチデートのようなそれが楽しみだからエレベーターも使わず階段で急ぐ。

蘇芳!


 一階まで階段を下っていけば入り口近くで彼は待っている。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

プロデューサー、お疲れ様


 彼は私に気付くと単語帳を片付けて応じた。

蘇芳もお疲れ様。待った?


 問い掛ければ彼は首を振る。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

時間的に言えば待ってるとは思うけど、君の事を考えていると時間が過ぎるのは早いから何も問題無いかな、なんて


 照れ笑いを浮かべながら言う彼につられて思わず頬が熱くなる。
 照れてしまったのを隠すように私は彼に尋ねた。

有難う……今日は勉強して待ってたの?

天領蘇芳(てんりょうすおう)

うん、まぁ……そんな所かな。もうすぐ期末テストだからさ

もうそんな時期なんだ。懐かしいなぁ


 普段はアイドルをやっている彼も高校二年生。確かにそんな時期だと考える。

でも私を待ってると勉強時間減らない?大丈夫?


 少し心配になって尋ねるが、彼は首を振る。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

だから今もこうして勉強してたし大丈夫だよ

でも蘇芳って少し勉強しただけで身に付くタイプじゃないよね……


 それでも私の心配は無くならない。
 そう尋ねれば彼は複雑そうな表情をした。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

君は俺の事本当に良くわかってるよね……

……って事はやっぱり?

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……プロデューサーの言う通りだよ。毎年赤点ギリギリだし……格好悪いからこうして今年はちゃんと勉強してみたりしてんだけど……

ってことは……普段は勉強してないんだね?

天領蘇芳(てんりょうすおう)

うっ……


 私の追及に彼は詰まる。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……やる時間が無いと言うか……

その理由は?


 テストが赤点ギリギリと聞いては彼のプロデューサーとしても黙っている訳にはいかない。
 追求すれば彼は気まずそうに視線を逸らした。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……そりゃ仕事があるし

他の子は仕事があっても赤点は取らないしギリギリにもならないけど?
元々能力が高い子はまだしも銀河や蓮といった勉強が苦手な二人でさえ平均程度は取ってるよ?

天領蘇芳(てんりょうすおう)

うっ

……蘇芳本当の理由は?


 更に追求すれば小さく言った。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……趣味とか、です

やっぱり……

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……呆れた?


 少し不安そうに問い掛けてくる彼に首を振る。

ううん、何となくわかってたから……仕方無いなぁって思った

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……まぁ君の事だしそうか


 蘇芳は少し複雑そうで、だけどどこか嬉しそうに言う。

ねぇ蘇芳、この後時間ある?


 そんな彼に返せば

天領蘇芳(てんりょうすおう)

何プロデューサーちゃん、やっぱり俺との時間がもっと欲しい、とか?


 からかうような口調だが今回ばかりは流されない。

うん、まぁね

天領蘇芳(てんりょうすおう)


 私の返しに彼は一瞬驚いたようにすると無言で視線を逸らした。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

…………


 その頬が赤くなっている。

蘇芳って意外に純粋な所があるよね……


 そんな事を思いながら私は続けた。

勉強教えてあげようかと思って

天領蘇芳(てんりょうすおう)

え!?
……何だそう言う事かぁ


 蘇芳は一瞬驚き、気が抜けたように言った。
 その姿に悪戯心を刺激され、言ってみる。

何か期待してたの?


 すると蘇芳は……

天領蘇芳(てんりょうすおう)

そりゃ俺だって男だし?考えるに決まってる


 思ったより真摯な響きの声がして思わずドキッとする。

か、考えるって……何を……っ


 思わず返してしまえば突然抱き寄せられ、盗むように口付けられた。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……こういう事


 言いながら彼は艶っぽく笑って……

天領蘇芳(てんりょうすおう)

それとも君はもっと先を考えてたかな?


 そんな事を言った。
 思わず頬が熱くなり

そ、そんな事っ……!

天領蘇芳(てんりょうすおう)

……無かった?


 反論すれば切なそうな表情で言われ何も返せなくなってしまった。
 すると彼は笑った。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

ふっ……冗談だよ。
君は相変わらず面白い

か、からかったの!?


 恥ずかしさで真っ赤になる私に彼は悪戯っぽく笑った。

天領蘇芳(てんりょうすおう)

先に俺をからかおうとしたのはプロデューサーでしょ?
だからお返し

うっ……!

バレてた!


 その台詞に余計に恥ずかしくなってしまった。

『Fratello』【クリスマス・天領蘇芳誕生日番外編年1/21】譲れないもの1

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