暖房の効いていた室内からすると外の風は冷たかったが、それが今は心地良かった。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

退屈だったし、疲れただろう?


 優しく問い掛けられて驚いてしまう。

……気付いてたの?


 殆ど間も無いまま彼の許には人が訪れていた。だからまさか私の様子を見ているとは思っていなかった。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

貴女の事は何時でも見ている。
その位わかるよ


 優しい声で紡がれる言葉にドキドキしてしまうけれど、嬉しかった。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

中々連れ出してあげられなくて、すまなかったね

ううん……浅葱の方が大変だっただろうし、気付いてくれてただけで嬉しいよ。
……こうして連れ出してもくれたし


 首を振る私に彼は苦笑交じりの笑みを浮かべた。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

まぁ貴女をこうして連れ出せたのは確実に父の計らいだったから……少し複雑だけどね

え、そうなの…………?


 驚いて聞き返せば彼は苦笑で頷く。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

あのタイミングで父が貴女に話し掛けたせいで私の許へ来ていた人の波が途絶えたんだよ。
あれでも財閥代表だからあの人の邪魔には絶対にならないよう皆が配慮する。それを理解しての行動だとすぐにわかった

……そうだったんだ

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……あの人には本当に敵わないと改めて痛感したね


 浅葱は苦笑しながらもどこか嬉しそうだ。

浅葱はお父さんの事、大好きなんだね


 思ったまま返せば彼は苦笑のまま言った。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……まぁね。あの人には色々と感謝もしてるし

……それが聞けて少し安心した

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

安心?


 不思議そうに返してくる彼に頷く。

浅葱は家の事を話したがらないし……余り好きじゃないのかなって思ってたから


 そう言えば浅葱は少し切なそうに笑った。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

確かに余り私は家の環境が好きじゃない。……それでも私の生まれ育った場所だからね……中々嫌いにもなれないんだ。
逃げられる訳でも無いしね

そっか……


 その気持ちが変われば良いとは思うけれど、すぐには難しいだろう事もわかるから返せたのはそれだけだった。
 そんな私に彼はやっぱり切なそうに笑って

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……それが時々嫌になると、貴女に逢いたくなる


 呟くようにそう言った。
 同時にその腕が伸びてきて抱き寄せられる。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

貴女に触れていると……とても幸せな気持ちになって、安心出来るから。
だからこうして甘えたくなるんだ


 そう言う彼を抱き締め返した。

……良いよ、甘えて。浅葱が幸せなら私だって幸せだから


 呟くように返せば一層強く抱き寄せられた。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……困ったな


 笑み交じりに彼は呟く。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……大事な会の最中なのに、貴女が愛しくて溜まらない。
このまま一緒に逃げてしまいたいよ


 その言葉に鼓動が高まる。
 頷きそうになるのをどうにか堪え、私は首を振った。

……まだ、駄目だよ。やらなきゃいけない事があるでしょう?
それが終わったら……幾らでも甘やかしてあげるから


 そう言って名残惜しく思いながらも密着した身体を離せば彼は苦笑しながら頷いた。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

そうだな……戻ろうか……

……うん


 そうして差し出された手に指を絡ませ、私達は会場へと戻る。
 その後は二人の時間は無く、様々な人に挨拶をしたりディナーを楽しみながら終わりまで過ごした。

『Fratello』【クリスマス・天領浅葱誕生日番外編11/15】パートナーとして11

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