昼間は仕事、夜に編み物をしていると十二月二十四日まではあっという間だった。
 浅葱の誕生日パーティーを行うホテルへ入り、教えられた控室用の部屋の鍵を借りる。

 私に与えられた部屋は二階の会場に程近い部屋だった。
 パーティー開始後に会場入りする浅葱がその前に迎えに来る手筈になっていた。

 荷物を備え付けの金庫にしまい、着替えを済ませる。
 しっかりしたパーティーとの事で、正装で参加する事が条件だった。
 鏡を見ながらメイクも済ませれば後は迎えを待つだけだ。

 彼とのデートで貰ったペアリングが左手の薬指で輝いていて、それが密かに嬉しい。

緊張するけど……楽しみだな


 思わず笑みを零した頃、戸を叩く音がする。

はい


 返事をすればタキシードに身を包んだ浅葱が入って来た。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

姫、来てくれてありがとう


 言いながら微笑する彼に微笑で応える。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……とても綺麗だ


 近くに来た彼がそうして褒めてくれるのは少し気恥ずかしいけれど、嬉しい。

浅葱も凄く格好良いよ


 そう返せば少し照れ臭そうに彼は笑って言う。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

姫、少し後ろに回っても良い?

え?


 どうしたのだろうと不思議に思って問い掛けようとするけれど、それより前に後ろに回った彼の手が首筋に触れてドキドキしてしまう。

 緊張から大人しくなってしまうと今度は冷たい感触がして……びくりと震えてしまう。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……うん、似合ってる


 愛しそうに呟く彼の声にドキドキしながらもふと鏡を見れば何も身に着けていなかった首元にネックレスが掛けられていた。

これ……!


 驚いて鏡を何度も見直す。
 それはこの前のデートの時、迷っている間に売れてしまった筈のネックレスだった。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

貴女へのクリスマスプレゼントだよ。
この間気になっていたようだったから……店に頼んで取り寄せて貰ったんだ


 その言葉にこの間のデートの時、彼が一度離れて店員と何事かを話していた事を思い出した。

あの時頼んでくれたのかな……欲しがってたのわかってくれてたんだ……!

 そう思うと嬉しく……彼が愛しくて仕方が無かった。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

行こう、姫

 言いながら前に回った彼が手を差し出す。その手にペアリングが着いているのが見えて嬉しくなった。
 手を重ねれば立たせてくれ、ゆっくりしたペースで歩き出す。

やっぱ慣れてて凄いな……

 感心してしまいながら身を任せ、会場に向かう。

 近付くにつれて会場の賑わいが伝わって来た。
 思わず顔が強張る私に足を止めた浅葱が心配そうに言った。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

大丈夫かい、姫?

う、うん……ちょ、ちょっと緊張しちゃって

この先は浅葱のパートナーとして行くんだよね


 そう思えば緊張しない訳が無かった。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

大丈夫だよ、姫。
何があっても私がしっかり貴女を守るから


 真剣なその声が私に安心感を与えてくれる。

うん……


 私が頷くのを確認した彼は再びゆっくりと歩き出した。

『Fratello』【クリスマス・天領浅葱誕生日番外編8/15】パートナーとして8

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