どれだけそうしていただろう。
 遂に崩れ落ちそうになって力強い腕に支えられた。

……すー……はー……


 どうにか息を整えようと深呼吸する。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

ごめん、やり過ぎたかな


 そう言う彼に首を振った。

……て

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

え……

もっとして

 まだぼんやりとして、酔ったような気持ちのままそんな言葉が出た。
 彼と暫く逢えなくなる……その寂しさがそう言わせた。

 再び引き寄せられ口付けられる。
 気付けば同じように口付けを返していた。

 一層強く抱き寄せられ、再び彼の舌が入り込んでくる。
 強くしがみ付きながらどうにかそれに応えた。

このままずっとこうしていたい……


 そんな事を思いながらもふらついてきて再び力強い腕に支えられた。

すー……はー……


 息を整えようとすれば強く抱き寄せられた。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……貴女は本当に私を困らせる


 彼の声が切なく響いた。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

私を試しているのかと思うよ……


 息を整えながらの私は何も返せない。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……大事にしたいんだよ、貴女の事。
だから気をつけているのに……欲しくなってしまう


 愛しそうにでも切なそうに響く声が更に動悸を激しくさせた。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

私は完璧なのに、貴女の事となると余裕なんて無くなってしまう。
……どうしてくれるんだい、姫。こんなに私に愛させて

…………


 私は何も返せないまま彼を抱き締め返した。
 上気した頬が熱い。高鳴る鼓動も全然治まってくれそうにない。

 だけどこの瞬間が幸せで、彼が愛しくて仕方無い。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……暫く貴女の顔を見ないようにしないと、可笑しくなりそうだ


 彼は呟くように言って更に強く抱き締めてくる。

 互いの表情は見えないけれど確かに愛情は感じられた。
 夜の暗さでイルミネーションは眩しく輝いている。
 でも彼の事で一杯の私はそれさえも視界に入らなかった。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

愛してるよ、姫

うん私も……愛してる


 そうして再び重なった唇は中々離れなかった。
 長いキスが……これが最後だと告げているようだった。

 どれだけそうしていたのか……彼が身体を離して告げた。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

……帰ろう

……うん

 寂しい気持ちは無くならないけれど、流石にこれ以上遅くなる訳にもいかない。
 彼の手に指を絡ませれば大事そうに握られて、歩き出した。

 愛始駅から二駅乗れば私の家はすぐだ。
 浅葱は反対方向の電車だけど夜遅いからと送ってくれた。

今日はありがとう、浅葱

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

こちらこそ。突然の誘いに乗ってくれて嬉しかったよ

それじゃあ……


 別れの言葉を言おうとすれば抱き寄せられ、軽く頬にキスされる。
 一瞬の出来事に呆然とする私に彼は微笑んで言った。

天領浅葱(てんりょうあさぎ)

おやすみ、姫


 そうして離れて行く後姿を追い駆けたい気持ちを堪える。
 暫く逢えなくなる彼が寂しくならないように……敢えて頬に口付けたのだとわかったから。

おやすみ、浅葱


 見送りながら言う私に彼は進行方向を変えないまま、手だけを振った。
 その後姿が見えなくなるまで見守ってから私は家に入る。

ただいま


 そうして誰も居ない家の中に声を掛けながら入り……

……良しっ


 朝とは違う意味で気合を入れ直した。

手袋とマフラー、絶対間に合わせる!

『Fratello』【クリスマス・天領浅葱誕生日番外編7/15】パートナーとして7

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