入学式も終えて数日が経ち、少しずつだがクラスの形が出来上がっていた。最初の頃の恥ずかしさが無くなって打ち解けていた。

 引っ越して友達がいなかった私にも和気あいあいと語れる友達が出来た。

 中学の頃に仲が良かった友達に申し訳ないと感じている。けれど、連絡はいくら離れていても出来るから問題はなかった。

 違う土地、違う高校でも友達は友達であると私が保証しよう。

九十九 小春

ういーす。矢吹、なにしてんの?

矢吹 紬

あ、小春(ウララ)ちゃん、うんうん、何もしてないよ

 気軽に話しかけた九十九 小春(ツクモ ウララ)に矢吹は手を降った。小春は高校生になって友達の一人だ。

 小春はにんまりと笑い話し続けた。

九十九 小春

なんだよ、ボーとして、まぁ春だからな、眠くはなるけどよ。隙きだらけだぜ


 小春は矢吹の頭をクシャクシャにする。

矢吹 紬

もう、小春ちゃん

優木 キリン

それぐらいにしなさい! 矢吹ちゃん嫌がってるでしょう

 髪に触れる小春の手を握った。握ったのは優木 キリン(ユウキ キリン)だった。キリンは、ほっぺたをリスのように膨らませて怒っていた。

 キリンも高校生になってから出来た友達である。

 小春とキリンは小学生から一緒にいたらしく、中がとても良かった。その仲の良さが羨ましいと思うぐらいだ。

九十九 小春

ごめんってキリン、ほら、このとおり

優木 キリン

まあ、いいけど

 腕を組んで、そっぽを向いたキリンに手を合わせて謝った。

 自然と仲直りしている二人を見ていると羨ましいと思うのは、まだ二人と仲良くなって日が浅いからだろう。

 もう少し二人の会話に関わりたかった。そんな思いが、何処かで引っかかっている。

優木 キリン

あ、そうそう。矢吹ちゃんは部活決めた? 私は決まりそうなんだけど、どう?

矢吹 紬

部活、そうだな。まだわからないや

 私達が通う白石坂(シライシザカ)学園高等学校は何かしらの部活動または委員会に入らないといけない校則がある。

 同好会に入るのも手だが、どうも癖の強いものが多く入る気が起きなかった。

九十九 小春

私はバスケ部に入ったぜ、どうだ矢吹もバスケやらないか?

矢吹 紬

私は……ちょと、キリンちゃんは決まりそうって?

優木 キリン

多分、手芸部かな。羊毛フェルトを作っていて、それが可愛いの。今日もう一度行ってみようと思っているけど矢吹ちゃんも一緒に来る?

矢吹 紬

うん、一緒に行く


 ちょうどいい機会だ。この際に部活を決めておこう。そろそろ決めておかないと、後々面倒臭そうだ。

九十九 小春

もし、入る部が見つからなかったらバスケ部に来いよ。運動が苦手でも、為せば成る

優木 キリン

もう、矢吹ちゃんはバスケはやりません。ね、矢吹ちゃん

矢吹 紬

アハハ、別に運動が苦手でバスケ部に入りたくはないんだよ

優木 キリン

へぇ、そうなの

矢吹 紬

まあ、ちょとね

 運動は苦手ではない。むしろ体育会系の部活動も興味はある。しかし、気がかりがあるとすれば時間だろうか。

 体育会系の部活は終わる時間が遅いイメージがあって帰りが遅くなりそうだった。

 別に門限があるわけではないが、喫茶店に行く時間が減ってしまいそうで嫌だった。それと汗をかいた後に水野さんに会いたくないと思っているからだ。

 どうして水野さんに会いたいのかわからないが、どうしてもその事が頭に浮かんで長くなりそうな部活を選べないでいる。

 やりたことがあっても、まず時間が気になっているのだ。

九十九 小春

ちぇ、失敗したな

優木 キリン

失敗って、あっ、勧誘してたの下手くそすぎない

九十九 小春

下手くそって、そんなに下手くそに見えたか?

矢吹 紬

うん、勧誘だとは思はなかった

九十九 小春

なんだよ

 小春は頭をかいて悔しがった。その姿を見て私は思わず笑ってしまう。つられてキリンも笑いだした。

 つまらない事で笑える関係が好き。この関係がずっと続けばいいな。

 放課後になって紬とキリンは手芸部を見に行った。手芸部は羊毛フェルトを作っていた。確かに面白そうだったが他の部活が気になって紬はキリンと別れて他の部活を回ることにした。

 学校中の歩き回り部活を見ていたが、入りたい部活が見つからなかった。

 むしろ、やりたい事が増えて部活が決められないでいた。

矢吹 紬

どれも面白そうなんだけどな

 どんなに考えても決め手が見つからず時間が経った。結局、入りたい部活が見つからないまま時間が過ぎしまう。

 このまま学校にいても仕方ないので紬は喫茶店に向かっていた。

水野 エリナ

いらっしゃいませ

矢吹 紬

こんにちは

 喫茶店の扉を開けると水野さんが笑顔で出迎えてくれた。


 私はカウンター席に座ってコーヒーを注文した。

始めは一杯のコーヒーを(3)

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