僕が彼女……神母坂 黎佳(いげさか れいか)に誘われ、
猫に〝正式加入〟してからもう半年は経つ。
おや、浮かない顔だ。せっかくのイケメンが台無しだぞ?
…………僕はこれが普通なんですけど。
あら、それは悪かったね!
しばらく一緒にいるのに君はよくわからないねえ。
僕が彼女……神母坂 黎佳(いげさか れいか)に誘われ、
猫に〝正式加入〟してからもう半年は経つ。
彼女はことあるごとに僕の事を〝よく分からない〟と形容するが、僕には〝何が分からないのかが分からない〟。
僕はとても簡単な人間だと思うんですが……?
んー、臆病ってことについてはたしかに君の言う通り『簡単』なのかもね。
でも輪君は簡単なことが複雑になっている気がするなあー……端的に言えば変わり者。
なんてね。
彼女はそう言う。
それでも僕にはそれがどういう事だかさっぱり分からなくて、虚空に大きな疑問符が浮かぶ。
たしかに。
狗になんの恨みもないやつをそばに置くなんて、最初はお嬢がおかしくなったのかと思ったよ。
割って会話に入ってきたのは、ベテランボディーガード、もしくはベテランのヤクザのような風貌の大柄の男。
浅黒い肌に、黒いスーツ。
そしてたまに真っ黒のサングラスを掛けた時の彼は、豪快な口調と強面も相まって、
完全に危ない人間に思われがちだが、
田地 葵(たち あおい)という名の立派な猫の構成員のうちの一人だ。
そして意外な事に豪胆な性格の裏には繊細な一面もあり、自然とムードメーカーのような役割を担っている
たしかに狗に恨みはないですけど……でも、それでも猫に入ってからは嫌というくらい分かりましたよ。
お国の立派な仕事をしていても、
高尚な聖職者でも、
どれだけ善人に見える人間だろうと、
悪い人というのは、常に仮面を被り続けているだけで実はどこにでもいるんですよね……。
それになによりあなた達を敵に回す方がよほど恐ろしいですから。
そう言った僕に「そうだろう」とケタケタと声をあげて笑った七人は全員能力犯罪組織〝猫〟の構成員だ。
一般常識では猫は、
「法外な値段で罪のない人間の殺しを請け負う、能力を使った殺し屋」
とされている。
が、僕自身この組織に入ってみて分かったが猫は警察や政治家、あらゆる隠蔽された悪を……法で裁き切れなかった犯罪者達を捕まえているという事実だ。
それになにより僕がここに居続ける理由は――
彼らが好きだということ、それこそがきっと一番の理由だ。