潤に連れられた先は昔よく遊んだ森だった。それは桐子ともう一人、大切な友達しかしらない秘密の場所だった。

ここって私とあの子しか知らない場所のはず……あそこの切り株に並んで座ったり、近くの小川で遊んだりしたところ

 その場所をなぜ潤が知っているのだろうかと桐子の脳は疑問でいっぱいだった。一方の潤はこれから言うことにドキドキしていた。

きーちゃんと口をきけなくなるのかもしれない。それは嫌だ。

 潤は嫌われたくない気持ちと真実を話さなきゃならないという気持ちに揺れていた。目的の場所について深呼吸する。

 一呼吸おいて潤が桐子に振り向く。

きーちゃん、君はここを覚えているかい?

え……まあ、はい

 桐子は潤に詰められて少しドキドキした。自分の過去に踏み込められた緊張はあったし、見合い相手がひそかに気になっていた潤が目の前にいるドキドキもあった。

 潤は桐子を逃がさないと肩をつかむ。

昔、君と遊んでいた少女がいただろう?

はい、大切な森の友達です

その友達が私なんだ

 桐子は意味が分からずに茫然とした。言葉が出なくて金魚のように口をパクパクした。潤が言ったことを反芻してみる。

え、森の友達が潤先輩って……あの……

詳しいことは明日の朝、ここで話すよ。あの時の森の友達になって

あ、はい。

 桐子はうなずく。潤の言うとおり、いったん頭の中の整理をしたらいいだろう。桐子は潤に送られて別荘に帰った。

 別荘に帰った桐子は上の空で過ごした。潤先輩と森の友達がどうも重ならないのだ。時が経てば昔の面影なんてなくなるだろうと思ったのだが頭がついていかない。

 その夜、桐子は久しぶりに夢を見た。森の友達と初めてあったときの夢だ。

 まだ、自分が傷ついてなかった頃だった

pagetop