協力者

やあやあ、始めましての人は始めまして私は協力者と言います。今日は私の100個ある武勇伝を聞きに来てくれてありがとう

協力者

えっ、協力者って、どんな人ですかって?

協力者

知らないよという人はストリエで偽りの街を読んでね!

協力者

ちなみに私を知っている人はどれ位いるかな?

協力者

うんうん、えっ! 良く知らない、そもそも協力者って何者? だって

協力者

おいおい偽りの街を見てくれた諸君なら私の存在は知っているはずだろ?

協力者

なに、そもそも協力者って偽名だろ。謎が多すぎてわからない……

協力者

…………

協力者

……そうだな

協力者

よし、いい機会だ。私の事を良く知ってもらおう。自分語りは嫌いだが100個ある武勇伝を語る前の下準備になる

協力者

さて、これは私が私になる前の昔話を……

 忘れることの無い日がある。光の柱が天に向かって一直線に伸びているのを見ていた。その光は数分の間、天に向かって輝き、人々の注目を集めた。

 そして、その光が薄れて途絶える。途絶えると同時に晴天だった空がほんの一瞬の内に暗くなった。皆既月食と違って時間を掛けて暗くならず。ほんの一瞬で暗くなった。

 例えるなら水滴が水に落ち波紋が広がるように。
その光景が何の事かわからない人で沢山だった。

 この光景を沢山の人が見た。

 混乱している人

 呆然している人

 騒いでいる人

 いろんな人がいた。見たことのない物にパニックになっていたことを良く覚えている。

 しかし、何度か同じ光景を思い浮かべると恐怖は無くなっていた。慣れてしまったのだろう。日が浅い頃は思い出すのも嫌になっていたはずなのに。

 私は、あの光景を列車が揺れる騒がしい中で見ていた。

――そして、延々に忘れないだろう。

 荒廃した街みたいだ。しかし街としては機能している。無関心な人々が暮らす街は空だ。

 ここに住んでいる人は夢を抱いているのだろうか?
あったはずだ。彼らにも夢を持ち目的を持って生きていたはずだ。

 私もあった。夢を追い求めここに上京したはずだった。この場所は三年前にあんな事が起きなければ……今頃。

もっと自由だったのかな

 私は何のために生きているんだろう。自由の無い世界でただいきているだけ。将来の夢すら捨てらされた。

 夢はもう叶わない。新監視社会の中で自由は無い。三年の間でその事が嫌となるほど理解された。この時代に本当の自由は無い。

美野 一四日

……アレは?

 決められた仕事を終えて自宅に帰る途中だった。路上の隅に白いトラックが止めてあるのが目に入った。

 違法駐車? こんなところに止めたらすぐに警察が来るはずなのに、まだ来ていないだけなのかな?

 一度、滅びかけた日本を発ち直した際に出来た新監視社会によって、ちょっとした駐車違反でも体罰が下されるようになった。

 通行人も不振と見詰めながら通り過ぎようとしている。

――その時だった。

 何かが爆発した音が聞こえた。その音の正体が白いトラックなのはすぐにわかった。

 目の前で爆発した熱と共にトラックの破片が迫ってくる。

美野 一四日

……っ!?

 スローモーションに見える。ゆっくりとトラックの破片が近づく。

 そうか、私はここで死ぬんだ。

 そう思うと、こんな世界でも生きたいと思っている。

協力者

クソ

美野 一四日

――えっ

 何が起こったのだろう。私は誰かに太ももと背中を抱えられ、いつの間にか爆発した白いトラックから遠のいていた。顔を見上げると抱きかかえている人の顔が見えた。

 その男性は悔しがっているのが表情を通して伝わってきた。

美野 一四日

あ、あの……

協力者

どうした?

美野 一四日

あ、あの、その

 私は混乱していた。頭の中でゴチャゴチャしていて上手く言葉が出せないでいる。一つわかっている事は生きている事だった。

 私と歳が同じくらいの男性は優しく私を降ろした。

美野 一四日

あの、あなたの名前は

協力者

俺の名前を聞いてどうする?

美野 一四日

えっ、その、お礼を

協力者

お礼? バカか

美野 一四日

……?

協力者

俺はあんたしか助けられなかった。感謝される訳にいかないだろ

美野 一四日

――!

 そうか、私は運が良かったのか。

 白いトラックがあった方を向けば地面に横たわる人が数人、倒れている。中には怪我をした人も居る。

 それに……死んだ人も。

 途端に吐き気が込み上げてきた。私は必死に吐き気を抑える。

協力者

わかったなら、俺のことは忘れろ


 そう言うと彼は立ち去ろうとした。

美野 一四日

……あ、あの

 聞く耳を持たず。彼は何処かへ消えていった。

 私は何も出来ず。この場所に立っていることしか出来なかった。

メビウス・ザ・ループ(1)

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