明日から通う学校を校門越しに眺める。山の上にある誰もいない教室が静けさを物語っている。なぜなら休みだから誰もいないのは当たり前だった。

 校門越しに眺める無人の校舎は物音一つ立てず物寂しさを感じさせた。やはり、このような場所は人がいないと寂しいものだ。

 けれど、校舎を眺めている本人は寂しいさなど無く、むしろ胸のときめきは高ぶり楽しみが膨らんでいた。

矢吹 紬

何か胸がドキドキして来た

 矢吹紬(ヤブキツムギ)は自分の胸の鼓動が速くなっているのを感じる。楽しくて胸が踊りだしそうだった。新しく通うことになった校舎を見て早く学校に行きたくなった。

 早く明日にならないか、友達が出来るかとか期待が溢れ出てくる。

 校舎を一通り見回した紬は通う予定の白石坂(シライシザカ)学園高等学校から自宅の道順を覚え家に帰ることにした。

 駆け足で丘を降りる。坂を下るたび白石坂学園の上から見えた小さな街が気になって、このまま帰るのはもったいないと思ったら私は街を探検を始めていた。

矢吹 紬

おお!

 引っ越しをしてから手伝いが忙しくてあまり外に出てなかったことと近所ぐらいしか土地勘がない紬にとって、目に入る物が全て新しく見えた。

 直ぐ側のバス停に行けばいつでも家に帰れるとこを確認して、目に入った商店街に入っていく。

 商店街は意外と人が多かった。前に住んでいた町にはあまり活気がなく閉じている店が多かった。それと比べて賑わっている商店街は珍しく思えた。

矢吹 紬

すごい、人が沢山いる

――やっぱり都会は違うな。

 キョロキョロと周りを見渡しながら商店街を歩いていた。人の多さに驚きながらも人と人の間をくぐり抜け、目で商店街を楽しんでいた。

 フラフラと歩いていると十字路の右上にある喫茶店が目に入った。その喫茶店は古くからある事が周りの建物からわかった。

 落ち着いた外見と懐かしさに自然と足を踏み入れていた。

 外見と同じで古くどこか懐かしさを感じる内見だった。店に入るとまずコーヒーの奥深い匂いがする。コーヒーの味はイマイチわからないが、いい匂いなのは私でもわかった。

 テーブル席に座っている四、五人の客はそれそれがこの落ち着きがある空間を楽しんでいるようにも観えた。

水野 エリナ

いらっしゃいませ、好きな席にどうぞ

矢吹 紬

…………

 声をかけられた。それは自分より歳が上と思える茶髪ロングの女性店員だった。

――綺麗な人だな。

 綺麗な女性店員に見惚れてしまった。紬はしばし女性店員の顔を見つめてしまっていた。

矢吹 紬

……

水野 エリナ

……?

水野 エリナ

あの、何か?

矢吹 紬

あっ、ごめんなさい。あの、綺麗だったもんで……あー髪が、どんな手入れをしているんですか


 ふと、我に戻り慌てて近くにあったカウンターの席に座った。

水野 エリナ

まあ、普通にしているだけです


 彼女は素っ気なく答えた。

矢吹 紬

そうなんだ、えーとコーヒーを一つ下さい

水野 エリナ

……はい。かしこまりました

 注文を確認してカウンターの向こうにあるキッチンに向かった。キッチンに向かい馴れた手付きで銀製のカップにコーヒーの豆を入れてハンドルを回しだした。

 回りだすとガリガリゴリゴリと音を立て始まる。銀製のカップの下は木製の箱があった。

 その見慣れない器具の正体が気になって質問をした。

矢吹 紬

それはなんですか?

水野 エリナ

これ?

矢吹 紬

はい。ガリガリしているのです


 ハンドルを回す手の動きを真似をしてみせた。すると女性店員はクスッと笑い説明をしてくれた。

水野 エリナ

コーヒーミルよ。こうやって手で回して豆を潰しているの

水野 エリナ

手間と少し時間はかかるけど美味しいコーヒーが入れられるの

水野 エリナ

この店が出来てから使っているから、今更自動の物に変えられないっておじいちゃんが言っていたわ

 そうこう言っている内に大きなフラスコにお湯を入れ挽きたてのコーヒー豆を取り出してビーカーみたいな物に入れた。

 下にあるバーナーに火を付けフラスコを温めだした。そのフラスコにビーカーみたいな物を斜めに指した。

 すべての工程は慣れがあった。長い間ここで働いているのだろう。

矢吹 紬

これは見たことがある。えーと、コーヒーメーカーですよね

水野 エリナ

違うわ。これはコーヒーサイフォンて言うの、これも店と同じ頃にあった物

水野 エリナ

古いけど良いでしょう

矢吹 紬

はい

 私は街の探検のことなんて忘れコーヒーが出来るのを待っていた。

 徐々に出来ていくコーヒーの匂いと音であまりコーヒーを飲まない私でも待つのが楽しみになっていた。

始めは一杯のコーヒーを(1)

facebook twitter
pagetop