8月も中旬になった頃。
仕事終わり。夕飯の買い出しに『スーパー・リーベ』にやって来ていた私は店頭に並ぶ商品を見ながらふと考えていた。

銀河の誕生日まで後2週間なんだよね・・・誕生日のメニュー、どんなのが良いかな

 8月28日は恋人の銀河の誕生日。当日彼の為に料理を振る舞うという約束をしたのは8月上旬の事だった。
 それからずっとスーパーに来る度に同じ事を考えながら歩いていたのだ。

銀河はすっぱい物が好きだからイタリアンとかも良いけど・・・折角の誕生日だから違った系統の物で考えるのも良いよね

 考えるだけでも楽しくなって、思わず鼻歌が出そうになりながらスーパー内を歩く。
 マナーモードにしたプライベート用のスマホのブザー音が鳴り、着信の通知ランプが点いたのはその時だった。

誰だろう?

 思ったよりも響くブザー音に驚いて周囲を確認するが、丁度人気の無い場所だ。
 他のお客さんの迷惑にならなかった事にホッとしながらスマホの画面を確認する。

え、銀河!?し、仕事終わったばっかだよね!?


 思わずドギマギしてしまいながらスマホを耳に当てる

も、もしもし?

 動揺したまま応じるが、それ以上に動揺しているような返事が返って来る。

大神銀河(おおかみぎんが)

プロデューサーだな!?すまない!

え・・・・・・!?

 突然の謝罪に困惑する。

ちょっと待って銀河。
突然謝られても何だかわからないよ?

 出来る限り冷静な声で返した事で私の戸惑いは銀河にも伝わったらしい。

大神銀河(おおかみぎんが)

ああ・・・そうだな。すまぬ。ちょっと待ってくれ

何時も難しい言葉で話してるのに今日はそうでもないな・・・本当に焦っているみたい

 彼の言葉遣いにそう感じた私は静かに次の言葉を待つ事にする。

 数秒後、呼吸を整えて落ち着いた様子の銀河が漸く口を開いた。

大神銀河(おおかみぎんが)

突然電話してすまなかったな・・・今時間は大丈夫だったか?

うん、買い物来てただけだから・・・私は大丈夫だけど

大神銀河(おおかみぎんが)

それは何よりだ。少し話したい事があってな・・・ラインよりも電話の方が話し易い気がして連絡をしたのだ

そうだったんだ

 返しながら思う。

ラインよりも電話が良いって事は・・・重要な話なんだよね?特に謝ってたし・・・・・・。早急に対応して欲しい事とかそういうのかも・・・・・・

 そう考えればすぐに返した方が良い事かも知れない。

話って何?

 尋ねれば銀河は歯切れの悪い口調で答える。

大神銀河(おおかみぎんが)

ああ、8月28日の約束の事なのだが・・・・・・

 素直な彼が言い淀む事は珍しい。私は静かに続きを待つ事にした。
 銀河は数秒迷っているような様子だったけれど、やがて口を開く。

大神銀河(おおかみぎんが)

急な任務が入って、約束が叶えられなくなったのだ・・・今月に入ってから計画も立てて貰っていたのに・・・すまない

 その声は本当に申し訳無さそうで、だからラインでは無く電話をして来たのだとわかった。

そっか・・・・・・

 思わず呟いてしまえば・・・銀河は更に申し訳無さそうに謝る。

大神銀河(おおかみぎんが)

本当にすまない。この埋め合わせは確実にする

とても残念だけど・・・お仕事ならしょうがないよね。
私がここで落ち込んじゃったら銀河は私以上に気にしちゃうだろうから・・・平気なふりをしないと

 銀河の言葉に内心で自分に言い聞かせ、それから返す。

ううん、大丈夫だよ。お仕事ならしょうがないもんね・・・・・・。
折角の夏休みの予定が急な仕事なんて・・・銀河こそ災難だね

 出来る限り明るい口調で返せば銀河は少しホッとしたようで、返してくれる。

大神銀河(おおかみぎんが)

うむ。非公式とはいえ結構重要な任務で・・・断れなかった。
我にとっては救世主との時間の方がよっぽど大事だというのにな・・・・・・

 素直な言葉に思わず頬が熱くなってしまう。

ふふ・・・その言葉だけで十分だよ。大変だと思うけど・・・お仕事、頑張ってね

大神銀河(おおかみぎんが)

うむ、勿論だ。きっと今回の任務も重要な経験となるからな

うん、そうだね

 言いながら笑みが零れる。

本当に銀河は・・・真面目なんだよね。そういう所、やっぱり好きだなぁ

 思わず笑顔になれば名残惜しそうな銀河の言葉が聞こえた。

大神銀河(おおかみぎんが)

このままずっと話していたいが・・・貴様は今買い物中だったな。声を聞いているとつい救世主の予定など気にせず逢いたくなってしまうから・・・ここで話は終わりにしようと思う

 それにどうしても寂しくなるけれど・・・私は頷く事にした。

うん・・・又次のお仕事で会おうね

大神銀河(おおかみぎんが)

うむ、そうだな。プロデューサー・・・・・・

ん?

 名前を呼ばれて応じれば・・・少しだけ時間を置いて銀河は言った。

大神銀河(おおかみぎんが)

・・・救世主こそが我が運命の姫君。愛してるぞ

・・・・・・っ!

 不意打ちの言葉に頬が熱くなる。
 心臓の鼓動が激しくなり、身体中が熱くなった気がした。

大神銀河(おおかみぎんが)

・・・それでは輪廻から無事帰還せよ。闇夜に囚われぬようにな
【訳:お疲れ様。気をつけて】

うん・・・またね

 ドキドキしてしまいながらも嬉しくて、笑顔で応じる。
 それと同時に電話は切れた。

もう銀河ってば・・・私の方まで逢いたくなっちゃうよ・・・・・・!

 思わず一人で赤面しながらも買い物に戻る。

(でも誕生日・・・一緒にいられないんだな)

 仕事なら仕方無い。そう思ってもやっぱり寂しかった。

『Fratello』【大神銀河誕生日番外編1/6】花火大会の誓い1

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