ここも異常無し…っと

ふぅ…魔電灯があるとはいえ、やっぱり全然暗いな。
真夜中とほぼ変わらねー

昔は「太陽」ってやつが世界を照らしていたって話だけど、俺が生まれた時にはすでに消霧一色だ。
エトワール様がお造りになられた結界のおかげとはいえ、こう閉じ込められっぱなしじゃ息苦しくて仕方ねーや

はーあー…奇跡とか起きてくんねーかなぁー。
死ぬ前に1度だけでもいいから、太陽の光を拝んでみたいぜ…

……んっ?

何でこんな所に植木鉢が?
それにこの後ろ、何かおかしいぞ?

んんっ!?何だこりゃっ!?
何で城壁に穴が…一体誰がやったんだっ!?
しかもよりによって、こういう時に!

…えぇい、落ちつけ俺!
こういう時はまず、他の奴等にこの事を知らせないと…

いやー、朝早くから見回り、ご苦労さん♪

っ!?

お、お前は―――

悪いのー。
まだこの穴の事を知られたら困るんでね。ちょっと"見なかった事"にしてくれないかな?

な、何する気だっ!?やめ―――

……誰も、いないよね?

フードは被った…よしっ、行こう!

…そういえば、こうやって1人で外へ行くの初めてだな。
いつもはクリスたちや王城魔法使いの人達が、必ず一緒だったからなぁ…

えーっと、確かこっちだったけ?
あの穴、バレてないといいけど…

…アッ!?

……

あの穴、昨日フラムが塞いだハズなのに…それにあの人、穴の前でウロウロしてる。
もしかして…バレちゃう?

……よしっ。
ここも異常無し…っと

エッ?

朝、ここら辺を見に来たと思ってたけどなー…もうぼけちまったか?
おーやだやだ、俺まだ21だっての!

でも、これで安心した。
やっと心置きなく、仕事に集中できるぜ

……行っちゃった…

あの人、全然穴に気づいていなかった。
こんなにハッキリと開いているのに…

ハッ!?
もしかしてあの人、ネルと同じぐらい「うっかり屋さん」なのかも?
ネルってば、カチューシャを頭に着けているの忘れて捜し回ってた事があったくらいだしなぁ

…アッ!
そうだっ!早く行かないと!

ワァー!スゴーイ!
「三大魔法使いの屋敷はすごく大きい」って聞いてたけど、ボクが想像してたよりも大きいや!
それに、真ん中の大きな噴水からキレイな水が流れてる。…そういやボク達が使っている水って、クリスのお家で管理しているんだっけ?

それにしても、スゴイなぁー。
きっとフラムとネルのお家もスゴイだろうなぁー

……ンッ?

はぁー…クリス様……

あの子、クリスのお家を見てる…?

あなた様のお姿を見たくて、朝早く起きて待つ事2時間…。今日もお会いになる事はできないのかしら…

……

一目だけでもいい。氷の様にお美しく、純水の様に誠実な心をお持ちのあなた様のお姿を見なくては…私(わたくし)の1日が始まりませんわ…

……

…っ?
そこのあなた、何で私の事をジロジロと…気持ち悪い!

アッ…ゴメン。
キミ、さっきからクリスのお家をずっと見ていたからさ、気になっちゃって…

まぁやだっ!だったらなおさら見ないでくださいなっ!
私を見つめていいのは、クリス様だけよ!

…それよりもあなた、何をしにここへいらして?
もしかして、あなたもクリス様にお会いに?

ウンッ。
ちょっとクリスに聞きたい事があってさ

まぁ、そうでしたの。
でも残念ね。どうやら、クリス様はいらっしゃらないみたい

エッ!?そんなぁ…

せっかくお城から抜け出してきたのに…

今、何と仰って?

ッ!
ウウンッ、何でもないよ!

まぁ、クリス様は高貴なお方。
優秀な私のような者ならともかく、あなたのような平々凡々の一般魔法使いなど相手にしませんわ

エー…クリスは誰にでもきちんと話しかけるし、そうは思わないなぁ

…あなた、先ほどからクリス様の事を呼び捨てておいでですけど、一体何様のつもりですの?
妙に馴れ馴れしいし…

ギクッ!?

それに、フードなんか目深く被っているし…何だかとっても怪しいですわ

ちょっとまずいかも…どうしよう…

そのフードを引っぺ返して、あなたの正体を確認してやりますわ!

……と言いたいところだけど、あいにく私、これから用事が立て込んでおりますの。
だから今回に限り、見逃して差し上げますわ。ありがたく思いなさい

アレッ?もしかして助かる?

で・す・がっ!
もしクリス様に何かよからぬ事をしてみなさい。私の力で、あなたをこの国にいられないようにして差し上げますわ!それだけは肝に銘じておきなさいっ!
ふんっ!

行っちゃった…。
あの子、なんだかフラムみたいだったなぁ

それにしても困ったなぁ…クリス、ホントにいないのかな?
どうしよう……

……ンッ?

あの子、一体誰だろう?クリスのお家から出てきたっぽいけど…?
それにさっき、ちょっと髪が見えたけどクリスっぽかったような…?

でも、さっきの子が「クリスはいない」って言ってたし、見間違いかな?

……

…アッ!あの子が行っちゃう!

……

……

あの子、一体どこに行くんだろう?

……

アッ…待って!ゴメン!ちょっどいてっ!

……ここ、一体どこなんだろう?
全然来た事がない場所だ…

大広場や商店街と違って大きなお家ばっかりだし、ここの人達もみんなキレイな服を着てたなぁ

アッ!あのお家に入っていった!

ワァ、キレイなお花がたくさん!
このお家に住んでいる人、きっとお花が大好きなんだろうなぁ

…ハッ!
こんな事してる場合じゃなかった!どこかお家の中を見れるところ、無いかな?

…いたっ!あの子だ!

お婆様、お久しぶりです

まぁっ!こんな忙しい時にわざわざ…

ここ、あの子のおばあちゃんのお家だったんだ。
…何、話してるんだろう?

もう私は、老い先長くない。
こんな年老いていくばかりの老婆の事なんか、気に掛けなくてもいいのよ?

あなた様は私の大好きなだった人の、大切な人。
そのような事を仰らないでください

…そうね。
あなたはとっても優しい子。その優しさは、あの子譲りだものね

はい。それに……

このような時でもないと、"本当の私"じゃいられなから

…ッ!?クリス!?

何でクリスが…あの子がクリスで…エェッ!?何でっ!?

確かクリスって「男の子」のハズじゃ…でもあの服、女の子が着るドレスだよね?
一体どういう事なの?

……ところで、先ほどからこちらを覗き込んでいる子がいるけれど、あの子…クリスのお友達かしら?

えっ?あの子って―――

…っ!?アリエル!?

アッ…!

に、にげ…アッ!?

待って!アリアル!まっ…!

……っ。この服じゃ、いつもの様に動けない…

……何で…何でアリエルがここに…よりによって、彼女に知られてしまうなんて!

ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……

ハァ…ハァ…ウゥッ…イタタタ……

…アレッ?ここ…どこ…?

……大広場に戻る道…どっちだったっけ…?

そもそもボク、何でここに…そうだ!
クリスに石の事を聞こうと思って…

……アッ…ボク、何で逃げ出しちゃったんだろう?
怒られるのがイヤだったから…「見てはいけないものを見てしまった」から…?

…戻らなきゃ。クリスに会いに―――

ウワッ!

エッ!?エッ!?ここど―――

動くなっ!

ッ!?
ワプッ!

…ッ!?
目に何か流れて…冷たい…ドロドロしてる…何コレ…何かヤダ……

イイか、動くんじゃねーぞ

目の中が、おかしくなっていく…気持ち悪い…。
…それに、この声……

…ア、アリッサ…なの?

そうだ。
…オイッ、まだ動くんじゃねぇ!

何でアリッサがいるの?
ここは…どこなの?暗くて何も見えないよ…

ここは影の中だ。オレと、オレが認めたヤツだけが入れる場所…

この影の中で、オマエの事を見張ってたんだよ。
オマエが1人になるまで、ずっとな

…ボ…ボクに何したの…?

…オマエを連れて行くのに、邪魔になるモンを取っ払ったんだよ

「邪魔になるもの」?
それって…ウェッ…

言ったところで、オマエには理解できねぇヤツだ。
それに今、ソレについて話してるヒマなんかねーよ

さぁ行くぞ、アリエル。
こんな腐った場所から、とっととオサラバするぞ

腐った場所?この影の中の事?
アリッサが何を言っているのか…全然、分からない…

……クリス……

そうだ…クリスに会わなきゃ…。
今ここで、アリッサに連れて行かれたら…石の事…聞けなくなっちゃう…

でも、目が…気持ち、悪くて…動けない…

…誰か……

ママ……

なっ!?

ッ!?

……?戻って…これた…?

影の中から弾き出されただと!?何故っ!?

…そうか、あの女の守護魔法(小細工)か!
クソッ!

…行か、なきゃ……

オイッ、どこに行く?

ウワッ…!

あんな魔法で助かったと思ったら、大間違いだぜ。
この機会を逃すワケにはいかねぇからな!

ッ!?

ワップ…!

アリエル、大丈夫かいっ!?

…クリス…クリスだ…

君に掛けられていた守護魔法、それが発動した時に散った魔力を追ってきたんだ。
おかげで君を見つけられた

状況は最悪だけどね…

オマエ、あの時のガキか。わざわざ死にに飛び込んで―――

…きた……ッ?

…?

……?

……ハーンッ……

な…何だ!?その目を私に向けるなっ!

そうか、そうか…なーるどなぁー…

さっきから一体何なんだ!?
何で私の方ばかり―――

確か星の目の魔法使い(アリエル)の護衛は、三大魔法使いの子供がしているんだったな。
その内の1人、アクイス家の子供は「一人息子」だったハズ…

…っ!

オマエ、「女」だったとはな

…エッ?
クリスが…女…?

一瞬、女装しているのかと思っちまったぜ。クククッ…

…それが一体、何だって言うんだ?
お前には、関係の無い事だ!

それにしては、そのキレイなお顔が歪んでいるぜ?

……っ!

一体、どうなっているの?
…ウゥ…吐きそう…気持ち悪くて…何も、考えられない…

水と氷の魔法に長けたアクイス家は確か、「男家系」。
その一人息子のハズのオマエが、コソコソと裏で女物の服を着て、少女として振る舞っている…

なぁ、ホントはオマエ…男でいるのがイヤでイヤで仕方ねーんだろ?

…黙れ…

かわいそーになぁー!
男家系(アクイス家)に生まれたばっかりに、「男」として生き続けなけりゃいけねーもんなぁー!

うるさいっ!黙れっ!
お前なんかに、私にの何が分かる!

分かるも何も、今言った事はオマエの真実。オマエのホントの気持ちだ。
そうだろぉ?クリスタル"お坊ちゃま"♪

黙れぇっ!!

分かってたまるものか…私の気持ちなんか…!

泣きそうな顔、してる…クリス……

ヒドイ…や…アリッサ…。
止めなきゃ…ボクが…止め、なきゃ…!

オー、コワッ。
ホントの事を言ったまでなによー。そんなに怒る事ないのになぁ?

…ヒド…イよ…

アッ?

そんな事、言ったら…クリスだって、怒るよ…!
ママが言ってた…「他人の心を傷つけるような、ひどい事を言ってはいけません」って…。なん、で…そんな事…平気で言えるの…?

やめてよ…アリッサ、やめてよ…これい…ウェッ…これ以上……

クリスにヒドイ事、言わないで…!

…ッ!

っ!?

オイオイッ、アリエル。
オマエにとって、ソイツを庇う意味は全く無いんだぜ?

…エッ?

っ!駄目だ…

この世界は嘘っぱち、何もかも偽りだらけだ!
そこのお嬢様が周りのヤツ等に、自分の性を偽り続けているのと同じ様にな!

…偽り…だらけ?

アリエル、何も聞くなっ!
闇の目の魔法使いの言葉に、耳を貸しちゃ駄目だっ!

クックックッ…さーて、お喋りはここまでだ。
アクイス家のお嬢様よ。もう1度、取引といこうじゃねーか

もしこのままアリエルを引き渡してくれれば、この場は大人しく引き下がってやる。もちろん、オマエの秘密も黙ってやるよ。
逆に断れば…分かっているよなぁ?

……

…クリス……

…断る。
アリエルは絶対に、お前に渡さないっ!

ハンッ!そう言うと思ったぜ!

取引は不成立!
このままオマエをブッ殺して、アリエルを連れて行く!
ついでにズタズタにしたオマエの体を、大広場のド真ん中に放り込んでやるよっ!

クリスタル(オマエ)が女だとバレて、アクイス家はさぞかし楽しい事になるだろうなぁ!!

どうしよう…このままじゃ…

みんな…母さん…ごめん…私は……!

ウワッ!

…………?

…っ!?
アリッサが…いない!?一体どこに!?

消え…ちゃった…。何か、灰色の光に…呑み込まれて…

灰色の光?

ウ、ン…でも…ボクも何だか、分からなくて…

…気持ち、悪い…目が…グラグラ、する…きもち…わるい…よ……

…っ!?アリエル!アリエル!

アリエル…

アリエル

……?

どうしたの?アリエル、ボーっとしちゃって?

…エッ?

ホントに大丈夫?

アッ…えっと…

誰?この人達、全然知らない人だ…

コラコラッ、×××。アリエルが困っているぞ

アレッ?
この人、今何て言ったの?ノイズがヒドくて聞こえなかった…。
それに、顔もよく見えないや。白っぽいものが顔を隠してるし…

アラッ?ゴメンなさい。
さぁ、行きましょう。アリエル

…ウン……

…この人達、一体誰なんだろう?
顔が分からないし、聞いた事も無い声だし…

でも…とっても暖かい。ママみたいに優しくて、ホッとする…。
それに、なんだかとっても懐かしいような…

…それにしても、一体どこに行こうとしてるんだろう?

ねぇ、一体どこに行くの?

「どこに?」って・・・イヤだわアリエル。
ワタシ達の家に決まっているじゃない

お家…?

そうだぞ、アリエル。
久しぶりに家族3人で過ごせるんだ。嬉しいだろ?

「家族」?…エッ?この人達、ボクのママとパパなの?
……ウウン、違う。ボクのママとパパは―――

…アレッ?そもそもどうして、ボクはここにいるの?
確か、クリスと一緒にアリッサと会って…それから……

えっと…その後、どうなったっけ?
クリスはどこ?

アリエル…

…ママ?

ママッ!どこにいるの!?

私はここよ…。
アリエル…私達の希望の星…お願い、置いていかないで……

そこにいるの?ママッ!

お願い…アリエル…

アリエル

アリエル

おねがいアリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

アリエル

―――アッ

ワァッ!ウワッ!ウワァアァーーーーーーー!!!

っ!?アリエル!

ワァァァァーーー!ヤダァーーー!
来ないでぇーーー!!

アリエル!落ち着いてっ!
私だ!クリスだ!

ワァッ、フワッ…フゥ…フゥッ……

……クリ、ス……?

そうだよ、私だよ。
落ち着いて、深呼吸して

…………こ、ここは…?
ボク達、確か…アリッサに…

そうだよ、襲われた。そしてアリッサが消えたと思ったら、今度は君が倒れたんだ。
誰にも見つからずにお婆様の所まで運んでくるの、本当に大変だったよ

そうだったんだ…

…!
あぁ、よかった。気がつかれたのですね

アッ!えーっと、クリスの…

ストーン。『アクイス=ストーン』でございます。
クリスタルの祖母ですの。

つい先ほどは、大変でしたでしょう。
まさか身近で、あの闇の目の魔法使いが現れますとは…。
それに、クリスがあなた様を運び込んできた時は、とても驚きました。窓から覗き込む影が見えたのですが、まさかあなた様だとは思いも致しませんでした

ボクの方だってビックリだよ。
追いかけていた女の子が、まさかクリスだったなんて―――

……

……

……ねぇ、クリス。アリッサが言ってた事、ホントなの?
クリスが「女の子」だって

……

クリスタル、正直にお話ししたら?

っ!?
ですが…

こうなってしまっては、もう隠し通せないわ。
何もかも、正直に話すのよ

それにアリエル様は、あなたの秘密を探りに来たわけではないし、それを口軽く他人様に告げるお方ではないと思うの

……

…クリス?

…はぁ……

…絶対に、誰にも言わないって約束して

…ウン、分かったよ。約束する

アクイス家が「男家系」なのは、キミも知ってるよね?

ウン。「アクイス家は「男」しか、その後を継げない」って、ママから教えられた

そのアクイス家に、待望の子供が生まれた。
…そう、私の事だよ

母さんが必死の思いで授かった希望。
アクイス家の将来を担う存在だって、みんな喜んでいた

私が「女」だって分かるまではね

ねぇ、どうして「男」じゃないとダメなの?
クリスが跡を継ぐんだからさ、別に女の子でもイイんじゃないの?

それは…私も分からない。
ただ、父さんに1度だけ聞いたんだ。「初代当主はお決めになった事だ」ってね

母さんは元々、体が弱いお人だった。
私がまだ幼い時に漏れ出した消霧を吸い込んで…消えてしまった。私の目の前で……

エッ!?
クリスのママ、死んじゃったの…?

…だからもう、子供を作るのは無理。
でも、私は「女」。アクイス家の掟を無視する事はできない

その時の父さん、相当悩んでいたよ。
悩んで、悩んで、悩んで…悩み抜いた末、苦渋の決断を下した

アクイス=クリスタル(私)を「男」として、育てる事にしたんだ

女でありながら「男」として生きている。
皆が知っているのは、「男として振る舞っている私」。
そこに、私はいないのにね……

……

…悔しいけど、アリッサの言う通りだよ。
私だって、フラムのように女の子らしい服が着たい!
ネルのように、女の子らしく話してみたい!

女の子として、生きたいんだっ!!

クリス…

…アリエル、私は君が羨ましい。
好きな服が着れて、好きな様に振る舞える。それでいて、周りから咎められる事もない。
自由に、ありのままの自分でいられる

君は私の事を「賢くて頼りになれる奴」だって思っているだろう?
それは大きな間違い。私は最低だ。君の護衛で親友でありながら、キミにすごく嫉妬していた

私は…アクイス=クリスタルは、そういう奴なんだ

……

……

……そんな事、ないよ

…っ!?

そりゃ、キミが女の子だったのは少しビックリしたよ。
でもさ、それが何だっていうのさ

男の子のフリをしても、女の子の服を着ても、クリスはクリスだよ。
すっごく頭が良くて頼りになる"ボクの知っているクリス"に変わりないもん。
だからさ、そんなに自分の事…ヒドく言わないで

「男の子でいるクリス」も「女の子のクリス」も、ボクはどっちも大好きだよっ!

アリエル……

…ありがとう。
そうだったね。君はそういう子だったもんね

エヘヘッ…アッ!
そうだっ!すっかり忘れてた!

えーっと…フゥ、失くさなくてよかったぁ

ねぇ、クリス。この石なんだけど、何か分かる?
ボク、この石の事が知りたくてキミの事を捜していたんだ

ちょっといいかな?
……うーん……

…ごめん。私もこんな石、見た事無いな。
魔石の一種だと思うけど、今まで感じた事が無い魔力が宿っているから見当がつかない…

そっかぁ、クリスでも分からないかぁ…

ごめんね、君の力になれなくて…

ウウン、気にしないで。
この石、なんだか悪い物じゃない気がするんだ。それにとってもキレイだしね

アリエル様、どうかご無事で…

ウンッ!ありがとう、ストーンさん!

さぁ、城に急いで戻ろう

ウンッ!

なんだか今日1日、すっごく大変だったなぁ。
ホント、色々ありすぎて……

…そういえばボク、何であの時にアリッサに向かって叫んだんだろう?
アリッサがクリスに言った事、クリスをイジめているみたいで…苦しくて…それに耐えられなくて……

ウーン…よく分からないなぁ…

アリエルが怒った…苦し紛れだったけど、間違いない。
きっとアリッサに「魔法」を解かれたんだ。なんて事だ…あってはならない事なのに!

この事を報告する?
…いや、駄目だ。この事がきっかけで私の秘密がばれてしまったら…くそっ!

何してくれやがったんだ!
何でオレを呼び戻したっ!?

お前さんの目的は「アリエルを連れて行く」…そのはずだろう?

アァ、そうだ!
後もう少しだったってーのに!
テメェが邪魔しなければ―――

そして、クリスタルを殺そうとした。
それだけならまだしも、その亡骸を大広場に放り込もうとしたじゃないか

…殺すだけならとにかく、年端もいかぬ少女の裸体を公衆の場に晒すのはいただけないね

テメェまさか…それだけの理由で、オレを呼び戻したってーのかっ!?

"それだけの理由"?…はんっ!

グッ…!

口が過ぎるぞ、星崩れの少女(闇の目の魔法使い)。お前さんの、この世界の魔法使い達を恨む気持ちは痛いほど分かる

だがな、無意味な殺しは争いを大きくし、目的の達成を大きく遠ざける事になる

「目的と手段を履き違えるな」。
この事を肝に銘じておくんだな

チッ!…クソッ!

…すまない、アリッサ。
まだお前さんに、成されては困るんだよ

これは、儂等の問題。
お前さん"達"を巻き込んでしまった事への、罪滅ぼしをしなくてはいけないからね……

三ツ目「クリスの秘密」
END

三ツ目 クリスの秘密

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