季節は春・真っ盛り!!

卒業や新入学 ―― 新たなる門出の時。

気象庁の週間予報では今週中にも桜は一番の
見頃を迎えると言っていた。
そして、桜の芳香に惑わされた花見客もちらほら
出始めている今日この頃 ……

美人(?)三姉妹 + おまけ1名は、
今日も引っ越し先の物件を探す為、
住宅情報誌に首っ引きだ。

沙奈

あ、ねぇ、コレなんかどーお? JR代々木駅から徒歩10分・築5年・3DK・10階建ての2階部分・日当たり良好 ――

拓実

駅から歩いて10分、実は20分ってねぇ

沙奈

なによぉー。ホントに書いてあるんだからぁー

麻子

ソレ、ほぼ間違いなく事故物件だよ。都心の一等地から徒歩10分圏内にそんな好物件あるワケないじゃん

沙奈

ウ~ン…………

麻子

あ、咲姉じゃあコレなんかどうかな ―― って、
アカン。すぐ隣が墓地だわ……

―― こんな具合に、
引越し先探しは超難航しています。

沙奈

うわぁぁぁっ! 激ヤバっ。このままじゃ、大学始まってもしばらくは横須賀から通う事になりそうやん……そんなん嫌やわ

咲耶

まぁ、そうなったらなったで、ちょいの間ならここから通うって手もあるし

沙奈

えぇ~~っ! 私そんなん絶対ヤダっ。こーんな何考えてるかよう分からん無愛想な中坊と狭い部屋で年中一緒なんて!

拓実

オレの方こそ願い下げだ。年中ヒステリーでキィキィ喚いてる小母さんと一緒なんて

沙奈

何ですって?!

拓実

何だよ~

ま、仲がいいほど喧嘩する、とは言うけど。
沙奈と拓実は例えるなら ”水と油”
反発し合って・事あるごとに口喧嘩。

初めのうちは麻子か私が仲裁に入っていたが、
それも最近はアホらしくなって止めた。

『ちわ~~っ! 沙奈と拓実は元気でいいな』

と、入ってきたのは結城。

沙奈

あ~、伸吾せんせー。いらっしゃい。暑かったでしょ。今、冷たいお茶淹れるね

そそくさとキッチンへ向かう沙奈。
結城にほのかな恋心を抱いている。

結城 伸吾

で ―― 物件探しは順調か?

咲耶

これが、順調のように見えます?

結城 伸吾

んんにゃ

沙奈が結城の為に冷たいお茶を淹れ戻ってきた。
冷え冷えのおしぼり付きだ。

沙奈

ハイ、伸吾せんせ、どーぞ

結城 伸吾

おぉ、ありがとな

外でトクさんが拓実を呼ぶ。
『拓ちゃーん、悪いけど店番頼めるかーい?』
トクさんは向かいでタバコ屋を営んでいる。
拓実は『ハーイ、今いくよ~』と返事しながら立ち上がり、私達へは『ちょっと、行ってくるね』と、断って
出ていった。

すると、今度は沙奈が『あっ!いっけね』と立ち上がり、あたふた出かける用意をしながら、

沙奈

今日のバイト4時入りだったのすっかり忘れてた。じゃ、いってきま~す

転がった方が早そうな感じで慌てて出て行った。

煩い末っ子もいなくなったので、
私はずっと気になっていた事を結城にぶつけた。

咲耶

拓実の捜査は何か進展あったの?

コトが ”児童虐待” に関する事なので。
流石の私もまだ物の考え方の幼い沙奈や
当事者・拓実がいる所では話が切り出し難かった。

結城 伸吾

んー……はっきり言ってめぼしい進展はないみたいだ。だいたいアメリカって国自体が州を問わず、幼児・児童虐待とかDV(ドメスティックバイオレンス)の類が
多すぎるんだ

麻子

つまり ―― 拓実みたいなケースはそう珍しくない、って事?

と、麻子。

結城 伸吾

そうなるな。ま、ワイキキ及びハワイ島に限って見れば拓実のようにかなり手酷い暴行を受けたケースは稀だったようで、あちらさんもハワイ全土の司法勢力を結集する意気込みで捜査続行中らしい

これから依頼人との打ち合わせがあるという結城は
その依頼人の会社へ行き。
”私もキリがいいから帰るね” という麻子と一緒に
外へ出た。

春・3月中頃のおはなし

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