さて、後輩と別れて退場したところだったが、後輩の仕事仲間につかまった。

突然でごめんなさい。環奈の先輩、いや、彼氏さんと言ってもいいかしら?

木原 悠月

どっちでもいいですが、彼氏だと嫌がりませんか、彼女が

うーん、いいじゃないかしらね。あの子にはそれぐらいの冗談が必要だから

 後輩の仕事仲間である小雪さんとベンチに座り、話をした。環奈の今後についてである。

環奈を今のようにしたのは私たちの責任なんだ。私たちもいろいろと複雑な事情を持っていてね、泣きながら帰った環奈が私たちの小さいころと重なったんだ

木原 悠月

そうだったのですね。だから彼女、弱みを見せないようと必死だったのか

うん。強くなってほしいと仕返し方法を教えて、うまくいったのだけれどそれで味をしめちゃったの。
それからは陰でいろいろと言えないことをしたわ。私たちと一緒にね

 世界を暴き、欺き、時には暴力を行使して言葉では通じない会話をする。それが環奈の今まで生きていた世界だ。

環奈にはこの世界から引退させる。お父さんの仕事が終わったら

木原 悠月

俺も、みんなも歓迎ですよ。みんなフレンドリーですから、安心してください

 美しくない世界、現実を見て夢を見るのを忘れる。いつからか世界を呪うように生きるようになった。その姿を見た環奈の仕事仲間は耐えられなくなった。

環奈には幸せになってほしい。私は私で折り合いをつけられるけれどね、あの子はそうできない。やはり、お父さんの血を受け継いでいるのよね

木原 悠月

正義感が強すぎるですか?

そうね。環奈もお父さんも似ているわ。誰かのために自分の身を削っているの。思いの感受性が強いのね。だから私たちよりも許せないという思いが強いし、守りたいという思いも強い

 環奈は自分が死んでもかまわないそうだ。自分の手が汚れてもかまわない。誰かを助けるためならば。

街の殺人鬼のめぼしはついているのね。あとは外堀を埋めるだけか

木原 悠月

はい。どうやって真相を開かそうかということなんですよね

難しい問題ね。犯人の子供と同級生で、逮捕されたらいろいろと責められるでしょうね

 世界は優しくない。関係者として四方八方から攻められる。どうして、止められなかったのか。生きていて恥ずかしくないのかと。

足立 環奈

千夏は私が守る

 後ろから声をかけられる。振り返ると環奈が静かに立っていた。

環奈、もう手続き終えたの?

足立 環奈

ええ、あとは父さんとの別れをじっくりとするだけ

わかった。家に帰りましょう

 と環奈の仕事仲間が促す。環奈は一歩進んで止まり、振り返る。

足立 環奈

先輩、ありがとうございました。落ち着いたら、千夏を助ける作戦を話し合いましょう

 環奈はそう言って去っていった。

木原 悠月

さて、動かないといけないね

 俺も病院を後にする。世界を変えるための準備をするためだ。その日から、俺たちは最高の結末のために動き始めた。

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