――城主の間。

城主の間に辿り着いたレジーナ達。



城主は潜入者が居る事を知り、

僅かな近衛兵を残し

兵士を先ほどの戦いに

投入したようだった。



数的優位もあり

城主はすぐに捕縛された。



城内にはまだ敵兵が多く居たが

城主の捕縛を知り投降するに至った。





その現状をギュダが端的に報告する。

ギュダ

姫、城内を全て制圧しました。
元イシュトベルト兵の多くも
捕虜にされていたようで
ウルの首尾良く
解放されたとの事です。

ウルの首尾とは、

先に市民として潜入すること。

そしてレジーナが来ると流言を撒き、

市民を味方につけて情報収集。

元イシュトベルト兵の居場所を探り

解放を目指すというものだった。







結果はレジーナの制圧の方が早く、

ウルと市民達が牢番と戦う事態には

陥らなかった。

スダルギア

流通を今迄の
倍の速さで行え。
多少無理しても構わん。

ガンツ

動ける者は
怪我人を介抱するぞ。
軽傷の者も手伝ってくれ。

ギュダ

捕虜になった敵兵は
丁重に扱うのだ。
未来には姫の力に
成り得る者達だからな。

戦場となった城内は、

戦後処理で誰もが休む間がなかった。





流通経路の確保・他国との通信、

怪我人の治療と捕虜の扱い、

市民の掌握と軍の再編、

数え上げたらきりがない。

ウル

なんだこれ?

別行動を取っていたウルが

城主の間に入って来た。



お互いの無事を喜んでも良いシーンだが

ウルの顔色は麗しくなかった。

ウル

こんなに沢山戦死者が……

ウルの言葉に周囲の者が耳を傾けたが

すぐに作業を続ける。



その光景がウルには

どうも虚しく見えて仕方がなかった。



そしてその虚しさからくる憤りを

レジーナに向けた。

ウル

こんなにも戦死者が出ている!
オレの求めるものは
こんな風景じゃない!

レジーナ

戦に死はつきものだ。

ウル

オレに言った言葉は
嘘だったのか?

レジーナ

嘘ではない。
無論死なない方が良い。

ウル

もちろんオレの理想の為の
戦争ではないことは
理解しているつもりだ。
だが本当にこの方法で
いいのか?

レジーナ

兵も覚悟は出来ている。

ウル

そんな話をしてるんじゃない!
だいたいお前は――

ギュダ

そのくらいにしておけ。

話に割って入ったのは

いつも以上に冷静なギュダだった。



他人が感情的になっていればいるほど、

自身は冷静になっていく。

誰しもが知る感情の変化だ。



だがギュダの冷静さは、

そんな外的要因ではない

何かを感じさせた。

ウル

腰巾着は黙ってろよ。
オレは今、この姫様に
聞いてるんだ。

ギュダ

リドリー、
グラッド、
アルハザード、
ディアス、
ルーチェ、
シモンズ、
アッシュ、
ビアード、

ウル

うるさいぞ、
何を言ってるんだ。

ギュダ

今日戦死した者の名だ……。
姫は戦死者の名を、
報告では真っ先に求められる。

ウル

…………

ギュダ

そしてアイヅガルドを出て
初陣から全ての戦死者
48人の名を覚えておられる。

ガンツ

…………

ギュダ

それに加え、
戦死者の家族を三代に亘って
養うとまで宣言されているのだ。

スダルギア

その話は俺にもあった。
正気かと思ったが、
お嬢ちゃんは本気のようだぜ。

ウル

…………

ギュダ

我々の誰よりも
悲しんでいるのが
姫なのだ。

ギュダの思いにウルは言葉を失った。









そしてたまらず城主の間を

飛び出していく。



レジーナの心中を知り、

その上でも納得がいかない

心情を抑えられずにいたのだろう。















レジーナの口数は少なかった。







そして戦死者の残した剣を拾い上げ

ギュダにそっと手渡した。

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