久しぶりに他人に抱きしめられて、思いっきり泣いた夜から目が覚める。
 目の前に木原先輩が寝ていて驚いた私はすぐにその場から離れて廊下に出た。 

 昨日の夜に連絡もせずに無断で外泊したため、恐る恐るスマホのロックを外す。
 着信とメールが入っていたが、ぴたっと収まっていた。

 最後のメッセージは木原先輩から連絡受けたとのことで安心して連絡をやめたのだろう。私は迷惑をかけたと家に連絡する。

足立 環奈

ああ、うん。ごめんなさい……帰るから安心して

 とても口うるさい仲間に電話した。心配したのよとマシンガントークが続く。この口うるさい仲間は先輩からの連絡を真っ先に受けて、木原さんっていい人ねと気に入っていた。

足立 環奈

うん……良い人だよ

 電話を切って戻ろうと振り返ったらすぐ真後ろに木原先輩が立っていた。

足立 環奈

いたのですか

木原 悠月

うん、朝ごはん食べる?

足立 環奈

食べたいですが家に帰って、学校の準備を

木原 悠月

あー、今日からGWだよ。思い出したかい?

足立 環奈

ああ、そういえばその時期でしたね

 GW、ちょっとした連休の初日。
 私は木原先輩と一緒に朝食をとった。
 食堂から二つのプレートを持ってきた木原先輩を迎えて、高校の周辺に起きている出来事について話し合った。

足立 環奈

とりあえず、私は残りのチームを壊滅しつつ、ちーちゃんの監視をします

木原 悠月

ああ、よろしく。こっちも襲撃に気をつけるようメールするよ。潤は別荘に行くから大丈夫だけど、後のみんなは心配だな

 ノートパソコンを開いて地元の掲示板を覗く。
 高校生版のページをクリックすると、私たちが通う高校や、そのほかの高校のことについて書かれている。
 小牧千夏のことや薄墨潤について、あとは殺人鬼を探す小邑桐子と野川詩音のことも書かれている。

木原 悠月

まあ、今のところは特になにもないか

足立 環奈

そうですね。GWで休みたいということなのでしょうね

 木原先輩はメールでメンバーや幹部に掲示板のことと、近いうちに襲撃があることを簡単に伝えた。
 私は今までのデータを先輩に渡す。

足立 環奈

あとは、お願いします。そろそろ父のところに行かないとならないので

木原 悠月

あ、そういや入院中だっけ

足立 環奈

ええ、先が長くないからと……?

 環奈は自分の携帯電話が震えたことに気づいて、通話ボタンを押す。足立家の仕事仲間からだった。

足立 環奈

すみません、もう帰ります。危篤になったって

 と立ち上がって、足の小指をテーブルの支柱にぶつけた。冷静ではない私を一人にするのは危ないと思ったのか、先輩が一緒に行くと言ってくれた。

木原 悠月

病院は、どこ?

足立 環奈

国立病院です。迎えにここにきてくれるって

 廊下に出て、玄関へと急いで降りるとちょうど車が着いた。
 運転席にいた仲間がドアのロックを解除して乗るようにと促す。

 病院についてから数時間後、父は旅立った。
 末期の癌を患い、いつかはそうなるだろうなと思っていた。

 殺人鬼の逮捕を知ることもなく、その使命を果たせずに、父は亡くなった。
 医者の言葉や長く続く臨終を知らせる電子音が遠く聞こえる。

 あとは休みなさいと仲間に言われて先輩と共に病院の中庭にいた。

足立 環奈

……

 先輩に礼を言う。もし、一人だったら悲しみのあまりおかしくなっていたと思う。

木原 悠月

また、何かあったら連絡をよろしく

 先輩を見送って私は頭を下げた。

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