これは、ずっと前の話。
僕が、彼に会う前だし、
湯田くん達が世界を壊しかける前のこと

もっと言うなら
――僕が、城壁となった話だ

珠樹

今日のデートは、
弟くんには内緒です

シスコンも、度が過ぎてるよね…

珠樹

本当にごめんなさいね?

珠樹

弟くんのせいで
好きな人と何処かいけないのは
わたしは嫌です

珠樹さんには悪いのですが、
僕は、皐太も好きだから
仲良くするよ?

珠樹

まあ、「弟君の友達」から始まった
恋ですし

珠樹

弟君に、聖くんを
取られない様に
頑張らないといけないですね!

珠樹

わっ、

僕も、尽力しないとですね

絶対、デートだろ!

えー、いいじゃねぇか

これぞ、
せいっしゅんって感じ?

聖と愛しの姉さんとの
ラブシーンとか見たくねぇんだけど

目ェ、塞いどけば?

オレは見るけど♪

瞳を閉じて、

君を、描くよ…

あ、だめだこりゃ

こんなところ、初めて来たよ

珠樹

今回は、
秘密のデートなので♪

そっか。
珠樹さんは空間把握の能力でしたね

珠樹

うん。
でも、空から眺められる――ぐらい

そんな大それたものではないです

珠樹

他国の秘密基地や、地下通路まで
見抜けるとか言ったら、
コンプレックス感じちゃうと思いますし

珠樹

よく弟君が迷子になるから
そんな能力が付いたんだと思います

あー、分かります
なんかお茶目ですからね、皐太

珠樹

そうでしょう?

珠樹

――話題、変えましょうか

お構いなく

僕は能力が無くても、
ちゃんと守れますから

珠樹

……そう?

大丈夫ですよ
負けてらんないですから

珠樹

馬鹿、気負い過ぎは
よくないですよ?

そうですけどね、

能力は
「人の為を思うことで発現する」と
言われてますし

珠樹

気負わないで下さい!

珠樹

私が選んだ素敵な人です!

きっと、もうすぐ凄い能力とかで
ばーってしちゃいますよ!

ばーって…。

でも、本当に珠樹さんは素敵な人だ

珠樹

そういうのは
今、言わなくていいです!

……顔色、悪くないですか?

珠樹

大丈夫ですよー?

珠樹

弟君を撒くために能力使い過ぎたから、
ちょっと逆探知されるかも

無理しないで下さ――

……?

避けて!

・・・・・・・ッ!

珠樹

……!?

大丈夫!?
怪我はない!?

珠樹

なんで自分の心配を
しないのですか!?

怪我がないなら逃げて!

珠樹

違います!
私が巻き込んだのです!

珠樹

無駄に能力使って、
秘密のデートしちゃったので

珠樹

面倒なのに追われてるのに
秘密にしてて、巻き込んだのです

いやだな、それぐらい
皐太から聞いてましたよ

聖くんは逃げてください

出来ない

でも、

分かってるけど、
守りたいんだよ…!

視界が……

遠のいていく

珠樹

わたし、もういいのです
いっぱい逃げすぎて、貴方を巻き込んだ

逃げて

珠樹

聞き分けが悪い子ですね、
聖くん

逃げろ

珠樹

逃げても追いつかれて
死んじゃうぐらいなら、

珠樹

秘密のデートを、
ずっと続けていたいのです

嫌だ…!逃げろ!
逃げてよ!生きて!

珠樹

困りましたね、嫌です

どうして、僕は

珠樹さんを、
こんなにも守りたいのに…

何も、出来ない…

珠樹

そんなことないですよ

珠樹

貴方の手は、温かい手です。
熱いぐらいに温かくて

珠樹

離れたくない、優しい手でした

もう喋らないで

珠樹

遺言の一つや二つ、
残させてくれてもいいじゃないですか

珠樹

貴方はね、
私が選んだ凄い優しい人です

多くの人を、貴方は守る
――貴方はそういう人です

あれ、此処って三人ぐらいで
つるんでなかったっけ?

まー。

二人が酷く
心に傷を負っちゃってなー?

……そう、なんだ

オレだけは、
知らねえ顔して笑ってねえと
死んだ人も浮かばれねーかなーってさ!

……
聞いちゃってよかった話?

お前は良い奴だろうから、
おっけー

マイスウィート!
ほら、あの謎の結界なんだろうね?

あ、わ、ねえ、空気読んで!?

あはははは、
空気が美味しいね!

読んで!?吸わないで!?

いやー、
青春っていいですなー

……結界?

この世界を覆う
謎のバリアが出現したんだよ

薄い膜が貼ってあって、
強い魔除けがされているんだって!

あ!初めましてー!

初めましてー

なぁ、人が死んでも
能力だけが発動する事例ってある?

人が死んだ時点で、
能力はなくなるはず…かな?

あのシスコンは、
他干渉系だから違うとして、

そうなると、
聖がやらかしたかー

でも、人の仕業にしては
規模が大きすぎると思うよ

んじゃ、
大きいスケールを見せよう!

え!?!?

これで10分の1

自分がこんなんなせいで
人の仕業だと考えてんだよなー?

――今は、出る気分なんてない

――皆守 聖さんの
お宅ですよね?

僕ですが、何か

貴方が張った
防壁を見て、
我が国の城壁にと

――お迎えに
上がりました

良く分からないですけど、
そんな気分ではないので
お引き取り願います。

なら、
連れて行くまでだ

ちょっ、ドアを
壊さないでくれますか?

ああ、失礼

それで、城壁とか壁とか何ですか
僕は何もしてない

何も……出来なかった
…一般人……なのに…

そうかい

君、ここ最近で
誰かを守れなかったことは?

・・・・・・

決まりだ

いや、だから何なんですか…!?

今は話すだけ酷な話だろう

守りたいという意思が、
「物理的に」大きく作用して

国を覆う程の防御壁を生んだ
――だなんて

……連れていけ

……待って、
まだ会わないといけない人が…!

お前は、多くの人を守る者だ

――!?

珠樹

珠樹さんも、
僕をそう言っていた…

そうか、皮肉だな…

皮肉でも、何でもいい

それが、もし、
彼女が言った言葉を、実現出来るのなら

僕は
――彼女以外の多くを守るしかない

――その意思が大きすぎたのが理由で、
守れなかっただなんて言える訳がない

何も出来ないけど、
やれることなら、使って下さい

裏切りの青い学生達②

お気に入り(18)
facebook twitter
pagetop