タキ

動悸が止まない……体も震えてる。

タキ

私がただの記録媒体なら、こんなに人間に近い構造にしたのはどうしてなんだろう。

タキ

マナは……割と笑顔でいるし他愛ない話もするけど、積極的に私達と交流を持つような人じゃないことはすぐわかった。
様々な質問を投げられるのを避けているのかと思ってたけど、私達に興味がないようにも見える。

タキ

「独立歩行・思考型有人格記録媒体。要するに人工知能」……だと、初めて会った時マナは言ってた。
有機生命体とは言わなかった。
私達が機械なら食事や排泄、運動は必要ないし、逆に生きているのなら、病気や怪我についての説明がないのは変だ。

タキ

「お前たちは死なない。記憶も自由に出し入れ出来る。時間はほぼ無限」とも。
ほぼ、ってどういうことだ?
その後何か続けようとしたのは……?

タキ

……そうだ、心臓の音がする。

タキ

……

タキ

体内から機械的な駆動音の音はしない。
首元と手首で脈拍が測れる。
やっぱり生命体……に近い構造なんだ。

タキ

おかしいことばっかりだ。
ここが世界ごと『学校』と同じ歪なプログラム、あるいは未来とかでないと説明がつかない。

タキ

……未来。

タキ

……庭の掃き掃除、当番だし……やりながら考えよう。

タキ

本当に広いな……ここは。
何を資金源にしているのか……

タキ

真っ当な考え方をすれば今日……〝一日目〟に出稼ぎをしてきている。
もしくは〝二日目〟から〝三日目〟……部屋に閉じこもってる間何らかの作業をして、今日納品しに出かけているとか。

タキ

やっぱりマナの部屋に入ってみないとわからないよな……

タキ

はあ……。課題がたくさんある。

タキ

……ここが本当に異世界や未来だという証拠はない。
でもそれは『学校』の時も同じだった。不可解な謎だけ散りばめられて、外へのヒントは何一つなかった。

タキ

逆に言うと、物事に違和感がある分この世界が不確定だ、という説にもなり得る。
誰かが残したヒントか、隠しきれなかった嘘なのかはわからないけど。

タキ

……

タキ

ミヤちゃんならどう考えるだろ。

タキ

……って、ミヤちゃんは考えるの放棄したんだった。
単独行動なんだよね、ここからは……

タキ

……『学校』以前はずっと独りだったのにな。
ここ三年一緒にいたから、ミヤちゃんの声を聞くの板についちゃってるんだ。

ミヤ

自分だけで何でも解決出来ると思ってる。

ミヤ

やっぱり私には考えさせてくれないじゃない。
相談も、連絡もなし、あるのは報告ばかり。

タキ

そう……だったっけ。
結構頼ってるつもりだったんだけどな。

タキ

……

タキ

私も、変なの……。

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