煌炎様・・・何だか動きが・・・。

花蓮

生まれたての小鹿みたい!!
というかどういう状況!!??

ちらっと、傷だらけで横たわる男性を目にした花蓮はふと一つの結論に思い当たる。

花蓮

まさか煌炎さん一般の方に暴力をふるうほどお腹がすいて・・・。

煌炎

ちげーよ、バカ。

ふらつく足で何とか酒呑童子の猛攻を躱しながら煌炎は否定する。

煌炎

くそ、馬鹿力すぎんだろ。

酒呑童子

ちょろちょろと避けるな・・・!
往生際が悪い、一思いに死ね!!

煌炎

無茶言うなっての。

茨城童子

あ・・・兄者。

煌炎

杯交わし合った仲じゃねェか。
ちょいと話合わねぇかい??

茨城童子

そ、そうなのか、兄者。

酒呑童子

ふん、あれは無効だ。

煌炎

おいおい。
これ以上暴れたら店が完全に壊れちまうぜ?

茨城童子

ちょ・・・兄者。

酒呑童子

構わん・・!!
壊したくないならお主がさっさと拳に当たれ!!

煌炎

おわっ・・・。

飛びのいて着地をするつもりがバランスがなかなか取れず、煌炎は後ろに尻もちをつきそうになった。

その隙を酒呑童子は見逃さない。

酒呑童子

去ね。

煌炎

くそっ・・・!!

煌炎様っ!!!!!

賽は煌炎を助けに行こうと全速力で走ったが、間に合わない。

酒呑童子の拳が煌炎の面に直行するかと思われた、が。

思わぬ壁が、酒呑童子の拳と煌炎の間に割り込んだ。

酒呑童子

な・・・・。

木材を粉砕し、大きな穴を開けるほどの酒呑童子の拳。

それをもろに食らったモノは拳型に陥没し、何かがはじけ飛ぶ。

煌炎

・・・あんた。

茨城童子

ぐ・・・・ならぬ。

酒呑童子

な!!??
弟よ・・・何故。

酒呑童子の拳は茨木童子の腹にズボリと埋まっている。

酒呑童子は状況がうまく理解できなかった。

それもそのはず、その拳を引き抜けば弟の大量出血は免れない。


つまり、自身が弟を死の谷間へ突き落そうとしているというその状況が理解できず脳が拒否しているのである。

茨城童子

ならん兄者。
この者は杯を交わした仲なのであろう!
ならば、我が民だ!!
民を救うために行動した我らの行動を無にしてはならん!!

死の瀬戸際に追い詰められている者とは思えないほど、茨木童子は凛と響く声で兄へ言い放った。

酒呑童子

わ、わかったからもう口を開くでない。
血が・・・!!

そのひと声を放った茨木童子の口からは、話す役目が終わったと言わんばかりに血があふれ出る。

茨城童子

ご・・ごぼっ。

酒呑童子

ぐっ・・・。

弟に少しでも痛みを与えないようにと動くまいとする意志に反して、彼の拳は小刻みに震えた。

煌炎

手を抜け酒呑童子。

酒呑童子

は?
何を申す!!
そのようなことをすれば弟が・・・。

煌炎

いいから抜け!!
愚図愚図してっとあんたの弟の命が危ねェ!
俺を庇って死なせるとか、そんな真似させるかよ!

弟を殺してしまうかもしれないという恐怖に思考が真っ白になっていた酒呑童子であったが、煌炎の真剣な声色にはっとする。

酒呑童子

っ・・・信じるぞ、狐王皇家の末弟。

一瞬躊躇しかけた酒呑童子であったが、眉間にしわを寄せながら一気に引き抜く。

酒呑童子

七雄酒呑童子・茨木童子の章【転】

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