もうお昼かぁ…結局あれから、
一度も部屋の外に出してくれないなぁ…

……みんな あの後どうなったんだろ?
医療魔法使い(ケガを治してくれる人)達がいるから大丈夫…だよね?

そういえばあの人 結局何がしたかったんだろ?
ボクを「連れて行く!」って言ってたけど、どこに連れて行く気だったんだろ?
消霧に覆われているから ほとんどどこにも行けないと思うけどなぁ?

それにしても いつまでボクは部屋にいなきゃいけないんだろ?
もう あの怖い(?)人はいなく
なったから、出てもいいと思うんだけどなぁ…

んっ?誰?

アリエル、僕だよ

その声…クリスなの?

ちょっと入るよ

ワァー!やっぱりクリスだ!
それに フラムにネルも!

おはよー アリエルー。
…あっ、今は「こんにちは」かな?

そんなのどっちでもイイでしょ

えー?あいさつは大事だと思うけどなー?

相手が「あいさつだ」って分かれば 別になんでもイイじゃない。
てか 今そんな事言ってる場合
じゃないわよ

エッ?何かあったの?

僕達 エトワール様に「アリエルを連れてきてほしい」って言われてね

ママが?

君の事 すごく心配していたよ。
君の顔を見て 安心したいんだろうからね。
すぐに行けるかい?

ウンッ!
ボクも今 誰かに会いたいって
思っていたところだったんだ!
行こう!

それにしてもさ みんな元気で
よかった

んっ?

ケガが1つも見当たらないし、
きっと 治せるほどの軽いやつ
だったんだね!

……

んなワケないでしょ。この平和ボ―――

フラム

……分かってるわよ

エトワール様、アリエル様を
お連れしました

ママ!

アリエル…!

ワワッ!ママ…!

あぁ アリエル…愛しい我が子よ…

アハハッ!
ママ くすぐったいよー!

……部屋に閉じ込めてしまって
ごめんなさい。
でも、安全を考えての事だった
から 仕方なかったのよ

ウンッ 知ってるよ。
ママがイジワルで ボクを閉じ
込めるような性格じゃない事ぐらい

……あのね ママ。
昨日ボクの事を連れて行こうとした人の事 教えてほしいんだ。
クリスが「闇の目の魔法使い」
って言ってたし、フラムもネルも知ってるみたいだったしさ

…その事で、さっきクリスタル達に あなたの事を連れてこさせたのよ。

よく聞きなさい アリエル。
これからこの国の未来を託すあなたの為に、あの魔法使いの存在について どうしても知っておかなければいけないの

あなたを拐かそうとした あの魔法使いのは
『ダルク=アリッサ』。
私達が持つ「星ノ目」と相反する目、「闇ノ目」を
持つ者。

ありとあらゆる魔力を無効化する闇を操るの。
…もちろん、星ノ目の魔力も例外ではないわ。

エッ!?星ノ目も!?

星ノ目を「希望」と言うのなら 闇ノ目は「絶望」。
全ての希望を奪い 絶望の闇に変えてしまう。
その忌々しさと恐れの意味を込めて私達は あの存在をこう呼んでいるの。

「闇の目の魔法使い」と……。

そのアリッサを「最高断罪魔法使い」として 今まで行方を追っていたのよ。
その本人が まさかこの大切な時期に、向こうから現れるなんて
思っていなかった。
だから 助けに行くのが遅れてしまったわ

※「断罪魔法使い」は現実世界で言う「犯罪者」の事。
アリッサの場合は「死刑囚」に相当する。

あの人 そんなに怖い人だったんだ。
でも全然 そんな感じしなかったんだけどなぁ?

無理もないわ。アリッサの事を知る機会が無かったのだから。
…と言うより、あなたに今の今まで教えていなかったもの。
不安を与えたくなかったのよ

…でも、こんな事になるのなら
早めに伝えておくべきだったわ。
本当に ごめんなさい

ママ そんなに謝らないで。
全部ボクの為に思ってやった事でしょ?
だから ママは悪くないよ

…アリエル、あなたは本当に
優しい子ね。
そうね。悪いのは あの闇の目の魔法使いなんだから

…そういえば ずっと気になっていたんだけどさ、何でアリッサはボクの事 連れて行こうとしたの?
ママ 何か知ってる?

そうね…アリッサがあなたを連れて行こうとした目的、きっとそれは―――

「星護りの儀式の阻止」

星護りの儀式の…阻止?

このタイミングであなたを狙うとしたら 理由はそれしか無いわ

ハーイ! しつもーん!

…何かしら? フランジール

儀式ってさ、10年に1度 結界を張り替えるやつなんですよね?
もし仮に儀式を止めちゃったらさ、新しい結界が作れなくて無くなっちゃうじゃないですか。
そうなったら消霧がドバー!って一気に国に流れ込んで みんな死んじゃういますよ。
アイツがやろうとしている事、
自殺行為以外の何ものでもないんですけど?

アッ!
そういえばそうだね

だから恐ろしいのよ。
もし アリエルがアリッサの手に落ちてしまったのなら…その時こそマギルーワの…いえ、マギガルド(この世界)の本当の破滅よ

なーに?アイツって自殺志願者なわけ?
だったら1人で 勝手に死ねって話よね!

…とにかく、今は何としてでも
儀式を無事に終わらせる事に集中しなくては。
だからアリエル、あなたには今から儀式が終わるまでの間 城の外に出る事を禁止させるわ。

エッ!?今から!?

そうよ。
全ては 儀式を無事に終わらせる為。
それに アリッサのあの様子
じゃ、またあなたを狙って襲ってくるのは明白よ。

本当に 今からなの…?

城の中なら自由にしていいわ。
…お願い アリエル。分かって

……ウン、分かったよ ママ…

さぁ、戻ろうか アリエル

ウン……

…オイ、さっきのフランジール 見たか?

あぁ。
なんて奴なんだ。自分の立場を全然わきまえてない

一体何様のつもりなんだよ あいつ

アリエル様にもきつい態度で接しているし、無礼にもほどがある

本当にそれ!
あんな奴と幼なじみなんて クリスタル様とネル様がかわいそう。
というか 視界に映るだけでイライラする!

早く消霧に呑まれて 消えてくれないかしら

……

フラム。言わせておけ

……チッ!

儀式が終わるまで 外に出ちゃ
ダメ…かぁ…。
ハァ…

どうしたの?
アリエル 何か困ってるの?

ウン、実はさ この本なんだけどさ…

わー!
「星座王国」シリーズだぁー!
しかも「カニール王子の大冒険編第8巻」!最新作だー!

アンタ こんな子供っぽいやつ読んでんの?

エー?全然面白いよ?
フラムは本 読まないの?

アタシは本なんかより 外で体動かして魔法撃ってる方が楽しいの

それともなぁに?
アタシが「本も読めないバカなヤツ」って言いたいワケ?

別にそこまで言ってないよ…

でもさ その本が一体どうしたの?

この間 王城魔法使いの人達と
一緒に買いに行ってきたんだけど、欲しかったこの本だけが売り切れてて困ってたんだよね。
そしたら―――

もしよろしければ、この本 貸してあげますよ!

エッ!?いいの!?

はい!
僕が買ってきた本なので 全然問題はありません。
それに、アリエル様にもっと 本を好きになってもらいたんです。

ワァー!ありがとう!

それにしても…嬉しいなぁ!

エッ?

僕 ずーーーっと!アリエル様と仲良くなりたいって思っていたんです!
そんなあなた様がこのシリーズが大好きで、それがキッカケにお近づきできたんです!
僕 すっごく嬉しくて…!

ボクもだよ!
フラム達がいるんだけど この本を読んでいるのがネルだけだったからさ。この本の事を話せる友達が増えて嬉しいなぁ!
本当 このシリーズ面白いよね!

はいっ!
魔人カサノールを倒す為に 王子と今まで一緒に旅をしていた幼なじみのパールが実は…あっ!
だめだめっ!これ以上喋ったら
8巻のネタがバレちゃう!

アハハッ!帰ったらさっそく読んでみるよ!
読み終えたら絶対に返しに行くからね!
本当にありがとうっ!

はいっ!
アリエル様のご感想 ぜひお聞かせください!

ウンッ!

…っていう訳なんだ

ふーん そういう事があったんだぁー

でもだめだ アリエル。
エトワール様の言いつけを忘れたのかい?
「儀式が無事に終わるまで 城の外への外出は禁止」だって

で…でも、約束しちゃったんだもん。
僕の感想もすっごく楽しみにしてるって…

今がどれだけ大事な時か 君だって分かっているだろ!?
もし今外に出たら またアリッサに襲われるかもしれない。
昨日は城の中だったから エトワール様達が助けてくださったけど、今度は本当に連れて行かれるかもしれないんだよ!

ウッ……

本は後で 僕達が返しに行くから。
君は城から出ちゃだめだ。
いいね?

ウ…ウン……

ハーン…なーるほど、そういう事ね

アリエル!
このアタシにまっかせなさい!

エッ?

フラム!?何 言い出すんだ!?

イイからイイから!
みんな!アタシについて来て!

待てフラム!どこに行く気だ!?

わー!待ってよー!

みんなこっちよ!

「こっち」って…城の裏庭じゃないか

…アレッ?
これって…植木鉢?

わー!大きいー!

ハーイッ!ちゅうもーく!
まずはこのでっかい植木鉢を 魔法でどかしまーす!

…待って フラム。
その大きな土壁は何だ?

次に、このデコボコしている土の壁を 取り除きまーす!

僕の質問に答えろっ!フラム!

ハーイッ!
あーっという間に アタシ特製の隠し通路の出来上がりー!

わぁー!通路だー!

すごいよフラム!
一体いつ作ったの?

だいぶ前かなー?
ここで魔法の練習してたら キレイにブッ壊しちゃったのよ。
元に直すのはムリだったから、アタシの魔法と そこにあった使われていない植木鉢で隠してたワケ!

まっ、そのおかげでアリエルを城の外に出してやれるから
結果オーライよ♪

すごーいっ!さすがフラムだね!

フラムさっすがー!

そーでしょ?
アタシの魔法 超役に立つんだから!

…フラム、ちょっと来て

なーに?クリス?
何か言いたそうな顔ね?

あのさ あの壁―――

アー、言っとくけど 文句とお説教は受け付けないわよ?
もう壊しちゃったもんは仕方ないんだから

そうじゃない。
何でここで 魔法の練習なんかしたんだ?
今 城のみんなは、ただでさえ敏感なんだ。これが知られたら お叱りの言葉だけじゃ済まされない。
三大魔法使いとしての支援が打ち切り。下手すれば 家は取り潰されて、君は「建造物破壊罪」で牢屋行きだぞ!

…いくらアタシでも そのぐらい分かってるわよ

じゃぁ何で―――

クリスだって分かってるでしょ?
周りのヤツ等がアタシの事 どう思っているのか。
こんなアタシの為に 魔法を練習する場所を貸してくれるワケ無いでしょ

…だとしてもだ、もっと場所を考えろ。
ここは―――

もー!文句と説教は無しって言ったでしょ!
いつもここって誰も通らないし
気にしていないから別にイイじゃない!

良い訳が無い!
さっき見張りを強化するって話が出たから、いずれここにも 王城魔法使い達がやって来るぞ!

今さらグダグダ言わないでよ。
それに今は アリエルの本を返しに行くのが先っ!
街中を通れば アリッサのヤツも下手に手出しできないわ!

2人共まだー?

ホラッ!アリエルが呼んでるわ!
行くわよっ!

…はぁー……

今日も商店街は 人がいっぱいいるね。
…アレッ?なんだか見慣れない店もあるよ?

「出店」ね。
星護りの儀式が近いから、それに合わせて店を出して 儲けようとしてるのね

ねぇ、その本を貸してくれた子がいる本屋って どこら辺にあるの?

えーっと確か…この大通りを進んで、あの本屋の角の道を曲がって少し進んだら―――

オイッ!
それをこっちに寄こしやがれっ!

…ネェ、あの本屋の前 何か騒がしくない?

アレッ?本当だ

今は無駄な接触を避けるべきだ。
他の道を回ろう

でもボク その子の本屋に
続く道、あの道以外知らないよ

…本当に 他の道は知らないのかい?

ウン。本当に知らない

弱ったな…あの騒ぎ、通ろうとしている道を完全に塞いでいる。
…仕方ない。騒ぎが収まるまで
待とう

エー?
それってすっごくヒマじゃない?

だめだぞ フラム。
僕達は 暇を潰しに来ているんじゃないんだよ

だーいじょうぶだってー!
バレないように ちょーーーっと覗いてくるだけだから!

気になるじゃなーい!何で騒いでるのか!
じゃぁ 行ってくるねー!

待ってフラムー!
ネルも見てみたーい!

アッ!
待ってよ2人共ー!

…あーもう!
何でみんな 僕の言う事を聞いてくれないんだよ…はぁ……

こんのクソ女(あま)ぁ!
ブッ飛ばされてーのかっ!?
アァッ!?

そーだ!そーだ!
それは兄貴が買おうとしていた本だぞ!
返せよっ!

はっはっはっ。儂はおせっかい者でのー。
魔力が多いのを良い事に、自分より下である者(そこの少年)が買おうとしていたこの本を"無理矢理横取りしようとした"お前さん達の事を、見過ごせなくてのぉ

横取りだとぉ!?
変な言いがかり付けやがって!

おやっ?
儂は本当の事を言ったまでじゃが
なぁ?

ちょっとコレって…ケンカ?

喧嘩やだぁ…こわーい…

っ!?
あの魔法使い…まさか!

ついでに1つ アドバイスしておこうか。
お主 見たところ口も頭も悪そうだから、たとえこの魔術書の中を読んだとしても 理解できないと思うぞ

良かったのう。
儂のおかげで 懐のお金を無駄にせずに済んで♪

ンだとぉ!この女ぁっ!

言わせておけばっ!

グッフゥ!

あがっ!

2人相手に一方的に
勝っちゃった…すごい!

やれやれ 情けない奴等じゃ
のぅ…。
そんな単純な魔法しか扱えぬのに
よく儂に向かって「ブッ飛ばす!」などと言えたものだ

いででで…ちきしょう…!

…少年 立てるか?

あっ…はい、大丈夫です

ほらっ、お前さんが欲しがっていた魔術書だ。
大事にするんだぞ

すみません、ありがとうござ―――

っ?

私の店の本に触らないでっ!

えっ?あのっ…

君 早くお家に帰って。
お金は明日でいいから

えぇ?で、でも…

君は あの魔法使いの事を知らないのね?
詳しい事はお金を払いに来てくれた時に言うけど、あいつはとんでもない奴なのよ。
あいつに 私の店の本を触られたくないの!

えぇ?
そんな人には…見えないんですけど?

いいから君は その本を持ってお家に帰って!
分かった?

あぁ…はい……

ねぇ あの女の人って確か…

あぁ、間違いない あいつだ。
何でこんな所にいるんだ?

今さら良い人振って 何なのよ

森にずっと引きこもっていればいいものを…

ムリムリ。
その内 生活に必要な者が無くなるでしょ。
おおかた 足りなくなった物を買いに来たついでって感じなんでしょうね

どっちにしろ 早く森に帰ってもらいたいもんだ

テメェの…ゲッホ…テメェの事は知ってるぜ。
エトワール様によって国から追い出された バカな魔法使いがいるって。
それ…テメェの事なんだろ?

……

ここにいちゃいけねぇ存在。
誰が好きで テメェの助けなんか借りるかよ

よかったなぁ オイ。
テメェのおせっかいがムダになってよぉ!

やれやれ…儂もとことん 嫌われたものだな

…!

あっ!
あの人 ボクの方を見た!

アリエル、早く!

アッ!ウン…

なるほど。
あの子が例の……

ハイッ!
これ 本当におもしろかったよ!

ありがとうございます。
で、具体的に どの場面が面白かったですか?

もちろん パールの正体が明かされたところだよっ!
まさかパールが 女神パルアンナ・ワイティだったなんて!
ずっとカニール王子のことを
見守っていたんだね!

うんうんっ!
彼女のおかげで カニール王子はずっと旅を続ける事ができたんです!
それも 深海族と明海族、対立する2つの種族の事情関係無く
彼女の自分の意志でやってきたのですからね!

ボク パールが好きになっちゃったなぁ!
それとね、カニール王子がパールを助けようとして 海魔獣アナゴンに立ち向かうところもかっこいいよね!

はいっ!そうですよね!

う~~~……

…アレッ?
ネル どうしたの?
耳なんか塞いじゃって?

…はっ!
もしかしてネル様 第8巻をお持ちではなかったのですか?

うん…ネルね 休みの間にその本を探してるんだけど、どこも売り切れで手に入らなくて…。
だから聞こえないように お耳を塞いでするの…

あぁぁ…そうだったのですか、これは失礼しました!
でしたらネル様にもこの本 貸してあげますよっ!

えっ?いいの!?

はいっ!
僕はもう何度も読んでいるので、中身の方は全部覚えていますから
全然大丈夫です

わぁー!ありがとー!

なんか…メチャクチャ盛り上がってるって感じね

そうだね

何だっけ?
今のアタシ達って…ホラ…何とかの外って―――

「蚊帳の外」

そうそうっ!それそれ!

…アリエル もうそろそろ戻らないと

ハッ!
そうだね。すぐ行くよ

本当にありがとう。
儀式が終わったら またここに来るからね!

はいっ!
僕 楽しみにして―――

アリエル…様?

…エッ!?

っ!?

ちょっ…!
王城魔法使いが何でここに!?

まずいっ!
アリエルを連れ出した事が ばれるわけにはいかないのに・・・!

父さん!?何でここに!?
「儀式が終わるまで帰って来れない」って…

あぁ 確かにそう言ったさ。
だが、急にいくつかの魔術書が必要になって 取りに戻ってきたんだ。
しかし…戻ってきて正解だったな

ど…どうしよう…このままじゃ、ママに抜け出してきた事が
バレちゃう…!

…まっ、待って!父さん!
何も言わないでっ!

…っ!

…一体どういう事だ?

僕が悪いんだっ!
この間アリエル様に 僕の本を貸したんだ。そして、僕の本を返しに ここに来てくれたんだよ。
アリエル様達がここにいるのは、全部 僕のせいなんだ!

今が大変な時だって分かってる。
…でもっ!読みたい本が無くて困っていたアリエル様を 助けたかったんだ!
それに、アリエル様にもっと 本を好きになってもらいたくて…

だからお願いっ!
この事 誰にも言わないで…!

……

…昨日の一件の事もある。
あまり事を大きく騒がせたくない

大目に見るのは 今回だけだからな?

…!
ありがとうっ!父さん!

なんとか ママにバレずに済むね!

本当だよー。
あの王城魔法使いさんが 優しい人でよかったー

ハー 一時はどうなるかと思っちゃたわ

安心するのはまだ早いよ。
けっこう時間を取ってしまったからね、急いで城に戻らないと。
後 壁もまた塞がないとね

ゲェー…壁の事 すっかり忘れてた…

そうだね。
早く行こう みんな!

おやっ?そうかい?
まだ時間があるから ゆっくりしてもいいんじゃがのぉ…

…エッ!?

ちょっと…一体誰の声よっ!?

…っ!?
人が止まってる!?

エェッ!?

本当だ…みんな動いてない!

何よコレッ!?
一体どうなってんのよっ!?

それはのぅ 儂がちぃーっとばかし、お前さん達以外の時を止めたからだ

…っ!
あなたは―――

アーーー!?
アンタ あの本屋の前でドンパチしてたヤツじゃない!

ドンパチだなんて物騒な…儂はただ、魔力片手に横暴な振る舞いをする馬鹿な奴等に かるーくお灸を据えたまでよ

どうでもイイわよそんなのっ!
一体 何が目的なワケ!?
…まさかっ!アイツと同じ アリエルが狙いね!?

これこれっ。感情任せの決めつけは良くないぞ。
『フレイル=フランジール』

ッ!?
何でアタシの名前 知ってんのよ!?

そりゃぁ こんな閉ざされた世界だし、お前さん達の話は ちょくちょくここに来る儂の耳にも、嫌ってほど入ってくるぞ

いつもはちゃめちゃに暴走する『フレイル=フランジール』。
のほほんとしているムードメーカー『ウィンディーノ=トルネルノ』。
そんな2人の幼なじみかつ苦労人の『アクイス=クリスタル』。
…という感じかの?

わー!すごーい!
全部当たってるー!

ムキィー!言わせておけばっ!
目的は一体 何なのよっ!?

少しばかり あいさつしに来たんじゃよ。
…特に そこにいる『ステラ=アリエル』にな

エッ?ボクに?

ホーラッ!
やっぱり アリエル狙いじゃない!

「感情任せの決めつけは良くない」と言ったじゃろう?
儂はあの闇の目の魔法使いのような 悪い事は企んでおらんよ

ウソよっ!信じられないわ!

やれやれ…こうなったら、話の
分かる子に代わってもらうしかないのぉ

「話の分かる子」?

…フラム。
君は一旦 下がってて

ッ!?
でも 本当にアイツが…

大丈夫。
彼女は本当に 何も企んでいないよ

……もー!分かったわよっ!

…あなたはもしかして、「予言の目の魔法使い」ではありませんか?

うんむ。
いかにも、儂が予言の目の魔法使い『ノエル=ノワール』だ。
やれやれ、これでやーっと 安心して話せるわい

…それにしても、その歳で儂の事を知っているなんて 少し嬉しいぞ

昔 父からあなたの事を聞かされました。
エトワール様の「親友」であられたと

エッ!?
お姉さん ママとお友達なの?

へぇー お友達なんだー!

はっはっ。それももう 遠い昔の事だ。
どうだ?あやつはまだ 相変わらずの"石頭"かの?

「友達」ねぇ…果たしてホントかしら?
いまいち信用できないわ

それに「遠い昔」って 一体いつの事なのかしら?
アタシが生まれた時には もうエトワールが女王をしていたから、少なくとも20年以上はしてるって事よね?

…アレッ?
確か結界を張ったのも エトワールだったわよね?
消霧が発生したのはえーっと…70年以上前だっけ?

…エッ!?ちょっと待って!
もし仮にエトワールと友達だったとしたら、この女 一体なんさ―――

フランジール。
何か儂に 気になるような事があるようだな?

ッ!

いいぞー?何でも聞いて。
ただし!先に言っておくが、儂は若さたぁーっぷりの「28歳」だからな?
これだけはきちんと 覚えておくんだぞ?

エェ…

さぁ 何が気になるか言ってごらん?

…別に 何でも無いわよ……

おやっ?そうかのぉ?

アッ!
じゃぁ ボクが聞いていかな?

おー いいぞ?

お姉さんと言い争っていた男の人が言ってた「国から追い出された」って話、本当なの?

あぁ 本当の事だぞ

エェ…何でなの?

まぁ…あれだな。
儂は昔 お前さんの母親、エトワールの元で「未来を予知してそれを伝える」っていう事をしていたんだな。
んでだ ある日、とーーーっても悪い未来…つまり、「消霧に覆われて やがて国が滅ぶ」ってのを予知してのぉ。それを包み隠さず伝えたら
あやつの機嫌をすこぶる損ねてしまってね、あっという間に国から追い出されてしまったって感じだ

国が滅ぶ…?

えぇ…ここ無くなっちゃうの?

アンタねぇ!そんなコワイ事
言わないでよっ!
しかもソレ あくまで「未来」の話なんでしょ!?
滅ぶだなんて決まったワケじゃないし!
勝手に決めつけないでちょうだい!

あぁ そうだ。あくまで「未来」の話だ。
だがの 儂の未来予知は99.99%当たる。ほぼ的中だ。
事実、この魔法を買われて エトワール(あやつ)のお抱え魔法使いとして働いていたのが何よりの証拠だ

そんなぁ…やだよぉ…死にたくないよぉ…

「消霧によって国が滅ぶ」…それってつまり、みんな死んじゃうって事…だよね?

ウーン…何でだろ?
怖い事だって分かってるんだけど
なんか実感が感じられないなぁ…

……アリエル

っ?

フェッ!?

そう暗い顔するんじゃない。
せっかくのかわいい顔が台無しだぞ

ひょっとこえ ひゃべりふらい…(ちょっとこれ 喋りづらい…)

はっはっはっ。
まぁ 残りの0.01%の可能性も無きに非ずだしな。
もしかしたら 回避できるかもしれないぞー?

それに、だ。
ここから追い出されたのは 儂の自業自得だ。
だから エトワールの事は責めるでないぞ?

ふ、ふん…わかっりゃ…(ウ、ウン…分かった…)

よしよし 分かればよろしい

さーってと。
魔法も切れる頃だし そろそろお暇(いとま)させてもらうとするかのぉ。
それに、もしかしたらまた お主達と会うかもしれんしな。
じゃぁの

…アレッ?
あの人が消えちゃった!?

あっ!
みんなが動いてる!

魔法が切れたんだよ。
驚く事じゃないさ

…あの人が言った通り、みんな
本当に死んじゃうのかなぁ?
嫌だなぁ…

んなワケないでしょ!
アイツの予知通りだなんて
まっぴらゴメンだわっ!
てか「また会えるかも」って何よ!
あんな胡散臭いヤツ 二度と会いたくないわっ!

そうかなぁ?
ボクはあの人 悪い人だなんて思えないなぁ?
また会いたいし

んもー!アリエルまでー!

さぁ 話し込んでる場合じゃないよ。
急いでアリエルを 城に帰さないと

そ、そうだった!
急がなきゃ!

今日は本当に 楽しかったなぁ。
あの子と星座王国についてたくさん話せて。
それに 何とかママにバレずに済んでよかった

…それにしても、あの女の人 何だか不思議な感じがしたなぁ。
全てを見通す様な目で見てきたし…アッ!そういやあの人 未来が視えるんだっけ?
未来が視えるって なんかすごいなぁ…

そう言えば「また会える」って言ったっけ?
フラムはあの人の事 すごく嫌ってたけど、ボクはまた会いたい
なぁ。

……アレッ?
ポケットの中に 何か入ってる?

ウワァ…何だろこの石?
すっごく綺麗…!

でも おかしいな?
何でボクの服のポケットに この石が入ってたんだろ?
今日は何も拾ってないんだけどなぁ?
それに この石から、あのお姉さんと同じ不思議な感じがする…

…そうだっ!
明日 クリスにこの石の事を聞いてみよう!
クリスは物知りだから この石にの事、何か知ってるかも!

よーしっ!
そうと決めたら 明日に備えてもう寝ようっと!
おやすみー!

二ツ目「嫌われ者の魔法使い」
END

二ツ目 嫌われ者の魔法使い

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