ルーシー

え………

痛い、痛い、痛い

エルヴィン

………

そこに立っていたのはエルヴィンだった。


彼は剣でチップの身体を

エルヴィン

切り刻んでやる

ルーシー

や、やめてぇぇ

ギャァァァァ

彼は私の言葉なんて聞いていなかった。

ネズミのぬいぐるみを何度も何度も刺していた。

ルーシー

エルヴィン?

ルーシー

何てことをするの?

エルヴィン

ルーシー、こんなところにいたんだね

エルヴィン

迎えに来たよ

ルーシー

………

エルヴィン

ここは危険な場所だ、早く元の場所に

エルヴィンが手を差し出す。
その手を私は見つめていた。

エルヴィン

人形たちは君に嘘をついている。彼らは君をこの世界に縛り付けて、痛めつける

ルーシー

………

エルヴィン

火葬された恨みを果たす為に

エルヴィン

目を覚ますんだ。惑わされたらダメだ

エルヴィンが言っていることは、わかる。

ここの人形たちが私を騙している可能性は否定できない。

今後も、さっきみたいに襲ってくるかもしれない。

ルーシー

……

エルヴィン

ルーシー!

エルヴィンが強引に腕を掴もうとすると、別の手がそれを阻む。

むうー

むきー

ウサギとクマのぬいぐるみは威嚇するようにエルヴィンを睨んでいる。

エルヴィン

何だ、こいつらは

こいつ

この男

エルヴィン

………

ボクたちを火葬した

綺麗なまま炎に投げ入れた

エルヴィン

黙れよ、ガラクタ

キャー

ギャー

エルヴィンは足で二体を蹴り飛ばした。

ルーシー

エルヴィン!!

エルヴィン

火葬してやったんだ。感謝しろよ

ルーシー

どういうことなの?

 

ボクたちは……孤児院の子供たちが買った人形

ルーシーに贈られるはずだった、人形

エルヴィン

大人のルーシーには必要ないだろ。ルーシーには俺がいればいい

ルーシー

エルヴィン?

ルーシー

子供たちが私にぬいぐるみを贈る理由はわかっているの?

エルヴィン

理由なんて、あれだろ。日頃世話になっているとか、だろ?

エルヴィンがおかしい。
だから、私は彼との距離を保たせたままその眼を睨みつけた。

エルヴィン

何で、離れるんだよ。ルーシー

ルーシー

エルヴィン、どうしてネズミのぬいぐるみを傷つけたの?

エルヴィン

あいつはルーシーを惑わせるからだろ

ルーシー

あの子のこと、分からなかったのね

エルヴィン

はぁ?

ルーシー

あなたの人形でもあったのに

エルヴィン

………っ

エルヴィン

ああ、そうだったな。それでもルーシーを傷つけるものは許さない

ルーシー

この子たちは私を傷つけていないわ

ウサギとクマを指さす。

エルヴィン

大人になるための障害だ。それだけで罪

ルーシー

だから燃やしたの?

エルヴィン

ああ、とてもよく燃えたよ

ルーシー

何てことを……子供たちの思いまで燃やすなんて

エルヴィン

………思い? ガキの気持ちなんてお前には必要ないだろ

ルーシー

あなた

ルーシー

………エルヴィンじゃないわね

エルヴィン

は? よく見て見ろよ。どこからどう見てもエルヴィンだろ? 大事な幼馴染の

ルーシー

今日が何の日かわかっているの?

エルヴィン

俺の誕生日だろ? だからプレゼントをくれたんだろ

ルーシー

………

ルーシー

やっぱり、違うわ

今日は、私とエルヴィンにとっての大事な日。

だから、私は彼にプレゼントを用意した。

子供たちは二体のぬいぐるみを用意した。

彼だって私に何かを用意していたはず。

毎年そうだったのだ。私とエルヴィンは互いにプレゼントを贈り、子供たちは私たち二人にプレゼントを贈った。












それなのに

エルヴィンは私に、何もくれなかった。

エルヴィン

ルーシー、君は人形たちに毒されたようだ

ルーシー

………

エルヴィン

帰るよ

ルーシー

嫌よ

エルヴィンが腕を掴む。



 痛い。





エルヴィンだったら、こんな掴み方をしない。
彼の爪が皮膚に食い込んで、血がにじむ。

アールグレイ

その手を離すんだ!!

帽子の男の子がエルヴィンを突き飛ばす。

エルヴィン

うぅ

エルヴィン

おま・・・え

ポンタ

お前は包囲されているよ……

エマ

アールグレイ!!

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