ルーシー

ルーシー

ルーシー

あら? どうしたの

あっちにお花畑あるの

一緒に花冠作ろう

ルーシー

どうしたの?

困ってしまった。

実は花冠を上手に作れなかったのだ。

私よりエルヴィンの方が上手で女の子としてとても悔しかった気がする。

ルーシー

あ、何でもないよ

花冠なら、ボクが教えようか?

ルーシー

え? あなたは作れるの?


 帽子の男の子の人形が大きく頷く。

わーい、教えて

ルーシーも一緒に教わろうよ

ルーシー

うん

ルーシー

って、私だって花冠ぐらい作れるわ


 思わず口を尖らせてフンっと男の子を睨みつける
 人形相手に何やっているのだろうか。
 男の子はそんな私にニコッと笑った。

じゃあ、どっちが綺麗に出来るか勝負する?

ルーシー

う、受けて立つわ

なになに、勝負?

楽しそう、混ぜて、混ぜて

じゃ、花畑に移動だ

私たちの周りに人形たちが集まっている。




見覚えのある人形たちがいた。
見たことのない人形たちもいた。






その中央には敗北を確信して項垂れる私と、勝利を確信し笑みを浮かべる男の子がいる。

綺麗な花冠

これくらい、簡単だよ

ポンタ

ルーシーのは、少し歪だね

ルーシー

たまたまよ

もう少し丁寧に、やると良いよ。こんな風に

ルーシー

こう?

うんうん

それを繰り返して

ルーシー

………わ、綺麗に出来た

やれば出来るじゃん

ルーシー

ありがと

ルーシー

あなたの名前、思い出したわ

え?

ルーシー

アールグレイね

アールグレイ

うん

アールグレイは少し悲しそうに頷いた。
彼との思い出は少し寂しい。




彼が壊れたことがきっかけで、私の人形たちは火葬されたようなもの。



壊れた彼は、ママの手では修繕出来なかったのだ。




私は泣き喚いた。
暴れまくった。

だけど、これは
どうしようもできないこと。



私が納得できなくても、彼は火葬場送りになる。




その時に、一緒に他の子たちも火葬されたのだ。

その時の状況はあまり覚えていない。

私が泣き止まないから、
ママが家中の人形たちを……

ルーシー

私たちは貴方を連れ歩いていた。その時に馬車に轢かれたのよね

アールグレイ

ああ

ルーシー

………痛かった?

アールグレイ

やめよう、この話は悲しいから

ルーシー

悲しい思い出だけじゃないわ

アールグレイ

え?

ルーシー

エルヴィンと三人でお散歩にも行ったよね。お花畑で花冠を作って。男の子だって分かっているのに、私はあなたに花冠を頭に、花輪を首にかけたのよね

アールグレイ

男のくせに花冠なんて恥ずかしよな

ルーシー

可愛かったわ

アールグレイ

………

あー、ルーシーばかりズルイ

ボクたちにも教えて

アールグレイ

はいはい。ルーシーも教えてあげて。今のやり方で出来るから

ルーシー

わかったわ

ルーシー、楽しい?

ルーシー

うん

しあわせ?

幸せ?

ルーシー

幸せだよ

幸せなんだね

じゃあ

じゃあ

このまま、ここにいようよ

その声は誰の声なのだろう。

気が付くと、私を囲む人形たちには目も鼻も口もなかった。



だから、誰が喋っているのか分からない。

ここで、ずっと

一緒に

ここにいれば何も

怖くないから

ルーシー

え……

 私は後ずさっていた。
 でも、それは無駄な行為だった。

 振り返れば、同じように顔のない人形たちがいる。
 少しずつ、少しずつ近づいてきた。

ルーシー

待って……

ルーシー

私はここにはいられないの

どうして?

ルーシー

待ってくれている人がいるから

ここにいる友達のことはどうでもいいの?

ルーシー

どうでも良くなんかないよ。みんな、大切だよ

じゃあ

じゃあ

ルーシー

覚えているよ、私の友達

………

ルーシー

みんな、燃えて灰になったけど。私は大人になってしまったけど、心の中にあなたたちとの思い出はあるの

うそつき

大人になると子供の頃の思い出なんて忘れてしまうじゃないか

ルーシー

忘れるわけじゃないの。心の中の宝箱に閉まっておくだけ

………

ルーシー

皆の顔を良く見せて

ルーシー

ルーシー、ごめんね

ルーシー

気にしないで

ルーシー

あなたの事も覚えているわ。チップよね

うん、うれ……

何が起こったのか理解できなかった。
チップのお腹から何かが突き出した。

うごぇ


 チップの口から白い綿が吐き出される。

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