イ…イヤァーーー!

イヤッ…離してっ!離してぇっ!

お願いっ!
アタシを…殺さないで…!

アッ

アァアッ…ギャアァァァーーーーー!!!

ゥア…イタイ…イタイよぉ……

何で…アタシがこんな…お母様…何で…どうして…?

…ヤダ…死にたくない…死にたくない…!

死にたくないっ!!!

ウワァァァッ!?

ハァッ…ハァッ…ハァッ…さっきのは、夢…?

ハァー…よかったぁ……

…?
何で「よかった」んだろ?夢の中なのに…そもそも、あれって本当に夢?
夢だけど 夢じゃないような……

ウ~~~ン……

真っ暗な世界が広がってて、女の子が泣いていて…そして その子の目から血が…。
あの子 一体誰だったんだろう?今まで見た事が無い 変な夢…。

何か…まるで―――

なーに シケたツラしてんのよ?

ワァッ!
…なぁーんだ フラムかぁ。
アッ、クリスにネルも

やぁ アリエル

アリエルー おはよ~

なにが「フラムかぁ」よ!
湿った曇り空みたいな顔なんかしちゃって、アンタらしくないわよ

アッ…ウン、ちょっとね…

そうだよー。
フラムはいつも 火山のように爆発してるんだからさぁ。
だからアリエルも爆発して元気だしてよ?

…ちょっとそれ「アタシがいっつも怒ってる」って言いたいワケ?

こらっ、フラム ネルに突っかかるな。
…アリエル 何か悩んでいるのかい?
よかったら 僕達が聞いてあげるよ

エッ?イイの?

もちろんさ。
その為に 僕達がいるんだから

ありがとう クリス。
実はね……

それは…とても不吉な夢だったね

いつもの夢なら とっくに忘れているんだけど…その夢だけ、今もはっきり思い出せるんだ。
夢だけど 夢じゃない…何かまるで…えーっと…

“現実を見せつけられた”…って事かい?

ウーン…そんな感じかなぁ?
ホントによく分からない 不思議な夢なんだ

真っ暗な夢…やだ、怖い…

バッカみたい。
所詮 夢の中の話でしょ?
消霧に消される方が よっぽどコワイわよ

消霧かぁ…

ママが言ってた。
「マギガルドはかつて とても美しい世界でした」
って。

魔力と自然が溢れてて 綺麗な青空が広がってて、
世界中に今よりたくさん 魔法使いがいたんだって。
それで、みんな魔法を使って 平和に暮らしていたって。

でもボクは、そんなたくさんな魔力も自然も 綺麗な青空も見た事が無い

ボクが生まれた時には 世界はすでに「消霧」に覆われていたから。

ボクが生まれるずっと昔に、突然世界のあちこちで発生した 汚れた虹色の霧。
何で現れたのか分からないその霧は あっという間に世界を飲み込んでしまった。
吸い込んだら 体の中の魔力を壊されて消えてしまうらしい。
治し方も抑える方法も 今になっても分かってないんだって。

今は結界が マギルーワ(この国)とその周辺を覆って
ボク達を護ってくれている。
その結界を造れるのは ママと―――

まっ、あのコワーイ消霧も 結界がある限りヘーキなんだけどね。
…アンタが来週の「星護りの儀式」を無事に 終 わ ら せ れ た ら の話なんだけど!

そっか…いよいよ来週なんだ。
上手くできるかな?

「できるかな?」じゃなくて「できる!」よ!
しっかりしなさいよ?
アタシ達の命は アンタにかかってるんだからね!

儀式の時は ボク達も一緒に立ち会うつもりだ。
王城魔法使い達も今より一層護りを固める。
君は 儀式の成功に集中するんだ

2人の言う通りだよ。
アリエルはがんばり屋さんだからきっと上手くいけるよ。
だからがんばって。ネル達も応援してるから

…ウン、そうだよね。
ありがとう みんな!ボク がんばってみるよ!

エッ!?

わぁっ!真っ暗!

ちょっと…何よコレッ!?
何でいきなり暗くなってんのよ!?

わぁーーーっ!やだぁーーー!
暗いの嫌ぁーーー!

落ち付け、フラム ネル。
きっと 魔電灯に不具合が生じたんだ。
フラム 魔法で辺りを照らすんだ

ハァー!
もー やんなっちゃう!

ホラッ!
明るくしたんだから落ち着きなさい

でもっ、まだ暗いよぉ~…

ネル 大丈夫。
僕達がいるから安心して

…うん……

よしっ。
確認するけど、ネル 城内と城周辺の魔電灯の点検はしたかい?

うん…ネル ちゃんと見たよ。
でもおかしいなぁ…さっき見た時は、壊れてる感じはしてなかったよぉ?

「さっき」って…ホントにちゃんと見たワケ?
アンタって結構 気ぃ抜けてるんだから、全然信用できないんだけど!

そんな事ないよー!
魔電灯の点検だけは ちゃんとしてるよぉー!

「だけ」ってアンタねぇ…。
ア"ーもうっ! さっさと何とかしなさいよっ!
コレじゃぁ ほとんど何も見えないじゃない!

「オレにとっちゃ むしろ好都合なんだけどな」

っ!? 誰だっ!?

暗闇から人が…!

アンタねぇ!?
魔電灯の光を消して暗くしたの!

……

…あれっ? おかしいな?
すっごく怖そうな人なのに…あの人の事、全然怖くない。
…それに何だろう?この感じ…

…っ!?
その目は…まさかお前、「闇の目の魔法使い」か!?

ふえっ!?

エッ?闇の目?

ハァッ!?
「闇の目」ってあの…ウソでしょ!?

アァ そうだ。
オマエ等が、全ての魔法使い共が最も恐れている「闇の目の魔法使い」とはオレの事よ

エッ?エッ?
あの人 危ないの?

危ないも何も 超超超危険人物なのよっ!
…アンタ、まさかアイツの事 今まで知らなかったワケ!?

ウン

「ウン」…じゃないでしょー!
世間知らずにもほどがあるでしょーが!

…目的は何だ?

…単刀直入で言おう。
星の目の魔法使い(ステラ=アリエル)を寄こせ。

エッ?ボク?

やはり 狙いはアリエルか…

悪いが それはできない話だ。
僕達にとって 彼女は必要不可欠な存在。
お前のせいで 全てを滅ぼす訳にはいかない!

ホーウッ、さすがは星の目の魔法使いの護衛だな。
ガキのクセに 威勢だけはイイ。

でもよ その選択は間違いだぜ?
この闇の目の魔法使い(オレ)に
むざむざと命を差し出す事になるんだからなぁ!

ひっ…!

奴の言う通りだ。
僕達がどうこうできる相手じゃない…。
でも 今ここでアリエルを奪われる訳にはいかない!

フラム ネル。
僕が時間を稼ぐから アリエルを連れて―――

っ!?

ワァッ!? 真っ黒い壁だ!

おっとぉ。そうはさせねーぜ?
ここで王城魔法使い共(ヤツ等)を呼ばれたら面倒だからな

ど、ど…どうしよう…逃げられないよぉ…

……何よ。
何よっ!アンタなんか あんなヤツ等に頼らなくたって!

っ!? フラム!

っ!? よせっ! フラムッ!

キャァッ!

フラムッ!

うわぁっ!

…あっ あぁっ……

よーしっ、後はオマエだけだ

ひっ…!

きゃぁぁぁぁっ!

コレで全部片付いたか。
…しかし あの女もつくづくアホだよな。護衛を付けるなら王城魔法使いのヤツ等に…イヤ、それじゃぁ"都合"が悪いか

……みんな…?

…っ!
マジかよ。まさかこの状況で逃げもせず 助けも呼ばないとは

コレも あの女の仕業か…

っ?

まっ、今はむしろ その方がありがてぇけどな

さぁ、オレと一緒に来い アリエル!

あっ…

…やっぱり 間違いない。
ボクはこの人と どこかで会った事がある。
…でも どこで会ったっけ?
そもそもこの人 何でボクを連れて行こうとするんだろう?

…それに、この人といると 何か安心する。 何で…?
この人 一体―――

そこまでよっ!
闇の目の魔法使い!

ッ!?

アッ!? ママ!

チッ! もう来やがったか!

今すぐ アリエルを解放しなさい。
さもなくば…あなたはここで 塵一つ残す事なく消える事になるわよ?

……チィッ!

ワァッ!

…アレッ? あの人は?

…逃げられたようね。
あなた達 今すぐ3人の手当てを。
アリエルはすぐに 自分の部屋に戻りなさい。いいわね?

エッ? アッ…ウン…

あの人 結局なんだったんだろう?
…また会えるかな?

クソッ!あの女 予想以上に早く来やがった!
…イヤ、あの護衛のガキ共をさっさと始末していれば…

アァッ!クソッ!
オレは一体 何やってんだ!
もう時間がねーってのに…!

…オレはぜってぇ諦めねぇ!
アリエル!オマエを必ず 連れて行くからな!

一ツ目「夢見た闇」
END

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