公開実験がなかなか始まらないので、お客さんの中には家への帰途につく者が相次いだ。

そんな中、ボクはなんとか実験を中止させるため、不夜城助教授を説得する。

フヤジョウ助教授

ふむ……。君のいうことはもっともだがそれでも僕はこの実験を止めるわけにはいかないんだ。

ゆーま

え、どうしてですか?

フヤジョウ助教授

それは、この実験自体が僕の夢だからだ成功しても、失敗したとしても、そこから学ぶことは多いから。次のステップに進むために、避けられない試練なんだ。

ゆーま

そうですか……。

斎藤蓮

ゆーま……はなぜ不夜城さんの
実験が失敗すると思ったんだ?

ゆーま

えっと、それは……。

レンセンパイに言われ、ボクは言葉に詰まる。

物質転移装置について、十分な知識があるわけではない。むしろこちらは勉強し始めたばかりで、不夜城助教授の方が知識も経験もはるかに上だろう。

だが、なぜかわかるのだ。自分の手や足で歩いたり、口やのどを使って無意識に言葉を紡ぐのと一緒で、転移についてはやり方は詳しく説明はできないのだが感覚で分かる。

もし目の前で転びそうな人がいたら、黙って見ているよりはボクは転ばないように手を出したり、つまずきそうになる石について注意してあげるのが当たり前だと思っている。

それは、いけないことなのだろうか。

ゴリアテ

その子のいうことは、
おそらく本当ですわ。

斎藤蓮

真白……と、うわっどうした最強院!?

最強院えるふ

えぐえぐ……ナバちゃんがぁ、ゆーちゃんにぃ……蓮さんとぉ……ぐずぐず。

フヤジョウ助教授

これはこれは、真白様。わざわざ御足労頂いていたとは。光栄に存じます。

ゴリアテ

……先生、ここではわたくしは一学生に過ぎません。敬語など無用に願います。

フヤジョウ助教授

はっ、しかし……。

ゴリアテ

それより、わたくし先ほどとんでもないものを見てしまいましたの。個人のプライバシーもありますので説明できかねますが、実験が失敗するに十分な証拠足り得ると、わたくし確信いたしましたわ。

ゆーま

ゴリさん、それって……。

ゴリアテ

ゆーま、いえイナハ。あとでたっぷり お話聞かせていただきますわよ!?
おーっほほほ……。

フヤジョウ助教授

それは……いかに真白様であろうとも、聞き捨てならない発言ですな。

ゴリアテ

あら、わたくしの言葉をお疑いに?

フヤジョウ助教授

いえ、滅相もない。しかし……。

オオスギ教授

損得よりも、個人の尊厳の方を大事にしたい。不夜城さんはそうおっしゃりたいのでしょう、真白さん。ですよね助教授?

ゴリアテ

あなたは……。

フヤジョウ助教授

くっ、貴様は……!!

オオスギ教授

こんばんは、みなさん。なにやら
楽しそうだったので、アタシもつい
この実験を覗いてしまいまして。

ゆーま

あっ、センセイ。

オオスギ教授

……はて、可愛らしいお嬢さん。アタシにはあなたのような弟子に見覚えはないのですが……。しかしセンセイと言う 人物となると……ふむ。これは興味深い

ゆーま

あっ……。

ゴリアテ

!!

フヤジョウ助教授

やはり貴様の差し金だったか。しかも、こんな弟子持ちやがって……こんな……可愛いなチクショウ! うらやましいぜ!!

フヤジョウ助教授

ま、多椙君のいうことも一理ありますね僕は学長に許可を取りこの実験に臨んでいます。どうか続きをさせて頂きたい。

ゴリアテ

……実験のためなら命をもかける。
それが殿方の矜持というわけですか?
この大学内をあなたの血に染めても?

フヤジョウ助教授

左様です。(キリッ

ゴリアテ

……わかりました。ならばわたくしは 女の寛容でそれに応えましょう。

ゴリアテ

では多椙センセイ、
あとお願いしますわね♪

オオスギ教授

お任せを、稲葉君のお友達のお嬢さん。

オオスギ教授

では不夜城さん。あなたと真白お嬢様の顔を立てるために、ひとつアタシと簡単な勝負をしませんか? アタシとあなた、お互いのプライドをかけて。

フヤジョウ助教授

なに、勝負だと!?

オオスギ教授

ええ。もっとも、あなたが亡くなっては勝負にならないので、実験体を無作為に選んだ生物とします。……そうですね、
あの黒猫などいかがでしょうか?

四天王

……えっ!?

斎藤蓮

おや、チビクロじゃないか。
こっちに来てたのか。

ゆーま

センパイ、あの子知ってるんですか?

斎藤蓮

ああ。今日から見かけた野良なんだが、他のボス猫が怖がって近づかないんだ。人をよけて通るし、なかなかのイケメン猫だな。雌猫にも大人気だぞ。

ゆーま

へえ、てっきり怖い猫かと思いました。よいしょっと。あ、男の子なんですね。

四天王

いやん、はずかしい。

フヤジョウ助教授

斎藤氏のお墨付きか。どうやら
八百長じゃなさそうだな。

フヤジョウ助教授

で、どうしたら勝ちに
なるんだ? ああん?

オオスギ教授

簡単です。この黒猫を転移できたら
あなたの勝ちです。勝てばアタシは
あなたのいうこと何でも聞きましょう アタシが勝ったら……、

オオスギ教授

……そうですね、この黒猫の死体を頂き
ましょうか。貴重なデータの塊としてね

ゆーま

えっ、それは可哀そう……。

四天王

多椙教授。自分の情報量は人間とは比較になりませんよ。八百長じゃないですか?

オオスギ教授

いいんですよ、これで。目的はあくまで彼の命を救うことですし。それにこれは真剣勝負なんですから。あなたを転移できたら、彼の装置はアタシ以上だと証明できます。……シャドウ君。あなたのバックアップは取ってありますよね?

四天王

まあ、一応。オートセーブですからね。あと自分は今任務中なんですが……。

オオスギ教授

パープル君にはアタシから報告しておきます。どうぞ安心して逝ってください。

フヤジョウ助教授

いいだろう、その勝負受けて立つ。
――もし俺が勝ったら、貴様に
俺様のケツの穴を、たっぷりと
舐め取って貰うぜえぇ!?

オオスギ教授

いいでしょう。では始めてください

フヤジョウ助教授

チクショー!!

ゆーま

ああ……チビクロ。可哀そうに……

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